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社労士とAIについて 5

~労働者からの相談業務はAIで可能か~

鹿児島で社労士をしています原田です。
年金相談についてはAIがある程度できると言う結論になりました。

労働者からの労働相談に対応できる人たち

 それではいよいよ労働相談をAIにやってもらいましょう。労働相談は、会社側からの相談と、労働者からの相談があります。
 労働者から相談を受ける組織として、
① 労働基準監督署
② 弁護士事務所
③ 労働組合
④ 社労士が行う相談員
があります。それぞれの立場で相談を考えます。

① 労働基準監督署
 労働関係法令の司法警察官として、逮捕権や捜査権を持つ公権力を持った組織です(安易に権利行使するようなことはありませんが)。大きな権力があるゆえに、事実の確認が重要で、事実確認のための企業に対する調査も行うことができますが、その際であっても相談者が特定されないような配慮をされています。

② 弁護士事務所
 あらゆる法的な問題について代理人として交渉や訴訟ができる唯一の国家資格者ですので、基本的には相談者の証言を元に、対応方法を検討されます。捜査権や調査権はありませんが、裁判所に証拠請求を行うことで、証拠を集めることが可能です。

③ 労働組合
 基本的には組合員に対しての相談対応ですが、それ以外からの相談を受け付ける組合もあります。労働法に詳しい方が在籍しており、トラブル事例の介入も行っていますし、組合として企業と交渉する権利があります。基本的には相談内容に沿って解決に動いてくれます。

④ 社労士が行う相談員
 基本的に代理人行為はできないので、相談を聞いた上で、純粋に法令や判例等に基づいて、違法か否かを判断して助言を行います。

 こうした状況から見た場合に、監督署・弁護士事務所・労働組合が受ける相談は、次の段階に進むかどうかの判断や、進んだ後の調査・交渉・訴訟も含まれるので、それらができないAIでは代替は不可能です。

 相談内容に基づいて助言するだけであればAIでも可能な感じがするので、社労士の相談員はAIで代替できるような気がしてきました。

社労士の労働相談では

 社労士にくる労働相談は、社労士会等から依頼されて相談員として活動するパターンが多く、無条件に労働相談を社労士事務所で受け付ける事務所はさほど多くありません。

 合法か違法かの判断だけでなく、それらを含めた助言をする場合が多くなります。例えば、賃金未払いの相談があった場合に、「違法ですね」で終わりであれば、相談者は「そんなのもちろん知ってる」になります。

 社労士の相談員にくる労働者の相談内容は、多岐に渡るのですが、代表的なものをざっくりと挙げてみます。
1.賃金不払い、残業代不払い、残業代計算のような賃金に関するもの
2.長時間労働・有給等の労働時間や休日に関するもの
3.パワハラ、セクハラ等ハラスメント関係
4.解雇、退職等の辞めることに対するもの
5.自分の意見が正しいことを専門家として保管して欲しいとき

 明らかな法違反であれば、返答はしやすいです。これは同時そうした相談ならAIでもできることになります。

上記5とかは、相談の趣旨が「社労士はダメって言った」を他の場所で言いたいだけなので、AIでは絶対無理ですが、個人的にそういう利用を目的にした相談をされたくありません。

相談内容で困ること

 実際の相談業務で、困るものがあります。

真実性が曖昧なもの
 「さすがにそれはありえない」と思う相談もあります。また、様子から見て、相談者に致命的な落ち度があるが、それを隠しているような気がする相談もあります。

相談している内容が、相談内容ではないもの
 事実と心情を羅列して、実際に何を聞きに来ているのか不明な場合があります。同情が欲しいとか、理解してもらいたいだけとかもありますし、話を引き出していくうちに、本当の相談が始まる場合もあります。

 AIは的確な質問に対して、回答することはできますが、これらのケースに非常に不得意です。逆にこういうケースに対応してしまうと、単純な質問に対して、面倒な逆質問をしなければ回答を出せないことになってしまいます。

ということで結論

 労働者からの労働相談について、単純に法違反かどうかを尋ねるだけならできるでしょう。現実的にChatGPTでも一定の回答は得られます。
 ただ相談員を代替できるかと言えば、できないことが多過ぎて、まず不可能とみるべきでしょう。

 人は時に正しい回答を求めているのではなく、プロの言葉が欲しいだけの場合もあるのです。

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