見出し画像

AIは裁判官になれるか? 社労士とAIについて 6

鹿児島で社労士をしています原田です。
AIについて色々考えを巡らしているところです。

 今回は番外編として、AIに裁判官をさせてみてはどうか?について考えてみます。

裁判所をやらせてみよう

 こんなことを言うと、あちこちから怒られそうなので、「空想の話ですよ」と断っておきましょう。

 地裁は裁判官も一人なので、なんとなくAIが単独で判断してもよかったりして、という前提で考えましょう。判例データと法令を全てラーニングしておけば、かなりの精度で容易に判決を出してくれそうな気がします。

 現実的に、既にAIに合法か違法かの問いかけをすれば、ある程度の回答を得られます。聞き方が詳細であるほどに細かい回答を得らます。犯罪行為が明らかで、本人もその罪状を認めている刑法犯であれば、一定のパターンで処理が可能かもしれません。

 但し日本の司法制度は判例法主義では無いので、本当に判例に基づく判決を決定していいかと言えば、問題はあります。

判例法主義とは、

判例を最も重要な法源とする考え方。不文法の要素であり、過去の同種の裁判の先例に拘束される。

Wikipedia 判例法主義より

 とあるように、過去の判例によって現在の裁判判決を判断する方法です。アメリカやイギリスは判例法主義を採用しています。

 日本では判例に基づく法的規範(この場合は、判例で作られたルールみたいなものだと思ってください)は、その後の判決に影響がありますが、必ずしもそれに従わなければならないわけではないので、ラーニングだけでは問題がある判決になる可能性はあります。

裁判官が使うツールには最適かも

 原告と被告の主張を全部入力すると、判例と法文の解釈例から判断して、判決例と判決文を書いてくれるAIなら作れそうです。
 裁判官が楽になるツールとして売れそうです。但し、使ってるのがバレると炎上するような気もします。AIが全部やるなら裁判官要らないとか言われるので。

 多数の裁判を抱えて多忙な裁判官には、これぐらいの楽ができても良いような気がします。判決もスピーディーになるので、みんないいことだらけにも見えます。

 少なくとも裁判記録を全部入力すれば、判決文例を出してくれるAIはできそうです。こんなの常時利用してたら、自分で判決文を書ける裁判官がいなくなるような怖さはありますが、「自分で書けないと最高裁判事になれないぞ」という良識的な言説が司法界にはびこってくれると信じましょう。

裁判でAIができない部分

 そもそも裁判所は、
①双方に意見が対立する場合にそれが法的にどうであるかを判断してくれる
②法律違反者への無罪有罪と有罪時の量刑を判断してくれる
という大きな役割があります。

 双方に意見が対立するということは、多くの場合は双方ともに「自分の主張が正しい」と思っているはずです。本当は思っていなくても、自分が正しいという立場で主張しているはずです。そうした場合に、裁判所がその裁判ににおいて、証拠や証言等の様々な状況から事実であろうと認定して、その事実の前提で判断することになります。

 事実認定では、双方の主張の仕方や、証拠や証言等の正確さをどう判断するかによります。誰が見ても明らかな証拠や証言等があればいいのでしょうが、判別がつきにくい場合であっても裁判所はどちらであるかを判断しなければなりません。

 様々な客観的な事象を元に、AIが判断してもいいのですが、証言のニュアンスは記録できないし、むしろ記録すると客観的な判断になりません。証言者の態度を記録したりすれば、AI用の記録官の心情で事実認定を恣意的に導くことも可能になってしまいます。

 知識と経験を重ねた裁判官でさえ、地裁で1人で判断し、不服なら高裁で3人で判断し、それでも不服なら最高裁で5人で判断するほどに多数の知見を重ねて決定しているのです。それでも異議申し立てが稀にあるぐらいに、完全な正解を導き出すのが難しい世界です。

 完全な正解が無いものに対して、AIであっても正解を出すことはできません。また、AI出した理想的な解答があったとしても、それを絶対的な正解だと判断できる人がいません。


 冷静に考えれば、裁判所の権威と知見と良識によって信頼を重ねているから判決に従えるのであって、AIが決定したとなれば、不都合な方が
「機械が間違った判断をした」
と騒ぐことは容易に想像ができます。

 地方裁判所の前に、AI裁判所を置いて、小さい裁判はそこで済ませることで、裁判の早期化と裁判所の負担減を図るというのは、面白いかもしれません。AIの判決には権威が生まれにくいので、多分実現しないでしょう。

面白いとか、役に立ったとか、おまえは何を言っているんだとか思って頂けたら、ハートをお願いします。ツイートやFBで拡散して頂けると、とってもうれしいです。


最初の話はこちら


この記事が参加している募集

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?