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計算式の算数で考える、労働生産性を効率的に上げる方法 ④

 前回付加価値生産性の式を計算していくと、付加価値を上げるに必要な要素が、計算上で関係なくなってしまうことを説明しました。

 結果的に付加価値生産性は、
付加価値生産性=価値費用÷労働量
       =(売上高-付加価値外費用+営業外損益)÷労働量
となるため、「売上をあげるしかない」という結論になったのですが、単純に売上を上げれば、生産性が上がるわけではありません。各要素には売上との相関関係もあるからです。

相関関係を考えながら売上を上げていく

 付加価値の計算式で挙げられている費用(人件費、賃借料、減価償却費、金融費用、租税公課)は、計算上で関係無いので、無視します。

 前回に代表的な付加価値外費用は、売上原価、広告宣伝費、交際費、旅費交通費、水道光熱費とお話しました(この時のそれぞれの費用は、製造原価や販売管理等で計上される項目の合算で考えます)。

 費用の削減ばかり考えていても、売上は上がらないので、積極的に売上を上げる視点に立ちながら、各項目毎に考えていきます。

1.売上原価を上げずに売上を上げる
 この場合の売上原価とは、会計上の製造原価とは異なり、製造業や建設業等なら原材料、販売業なら仕入等に関する原価のことです。
(期首期末棚卸等も関係ありますが、ここではイメージだけでいいです。)
 
 売上=数量×単価 なので、数量が増えれば、売上原価は上がります。
売上高-付加価値外費用 が増えればいいので、
売上高の増加>売上原価増加 になれば、全体は増加します。

 ということで、手法1
粗利益がプラスなら、たくさん売る方がいい。

 売上=数量×単価 なので、単価が増えれば、売上原価は上がります。
 ということで、手法2
数量が減らないなら、値上した方がいい。

2.広告宣伝費を増やさずに売上を上げる
 これも単価の問題で、広告費を100万円使って、1万円の商品を100個売れば、1個当たり1万円の広告費がかかったことになります。
 これでは売上原価も出ません。

 ということで、当たり前ですが、なかなか予測が難しい手法3
粗利益額を超える広告宣伝なら、やらない。

 誰でも事前にわかっていたらやりません。だから現実的には難しい。

3.減価償却費を増やさずに売上を上げる
 ということは、設備投資をしなければいい・・・
ではなく、積極的に売上を上げる視点で考えるので、減価償却が増加しても、それ以上の売上を見込めればいいのです。生産量を上げる投資や、店舗のリニューアル等でも、結果がでれば妥当性があったことになります。

 売上原価の削減が見込める投資でも妥当性があります。
例えば、歩留まりが上がるとかです。

4.交際費を上げずに売上を上げる
 接待しないで、売上アップ。小売業や製造業だと関係性が遠いので、交際費を上げないで売上を上げるのは不可能では無いでしょう。

 接待している企業が接待を止めると、売上が下がる可能性があるので、積極的に売上を作る視点からみたら、採用できません。

 新規顧客開拓のために、交際費を必要とする職種(人脈や新たな出会いや紹介が必要な場合)では、交際費が売上増進の要だったりするので、避けては通れない部分があります。

5.旅費交通費を上げずに売上を上げる
 遠くに売りに行かなければいいという話になるのですが、そもそもが遠方に販売することで成り立っている場合もあるので一概には言えません。
 積極的に売上を作る面から考えれば、採算性を考慮して出張先や販売先訪問を考えることになるでしょう。

あくまで結果次第なので、これも難しいです。

6.水道光熱費を上げずに売上を上げる
 商品の開発量に比例して、水道や電気を使う産業であっても、それが商品の売上の伸び以上に費用がかかるケースは稀だと思いますので、あまり気にする必要は無いでしょう。

 費用削減を目的としたLED化や節電効率の高い機械投資であれば、減価償却が上がっても、積極的に投資すべき場合があります。償却費を上回る投資を行うと生産性は落ちます。

代表的なものを挙げましたが、それ以外の勘定科目も考えてみます。
・採用教育費
 新規採用にかかる経費。単に生産性だけ上げるなら不要。将来的な投資の意味合いが強いですから、本当は一定程度必要だと思います。

・外注費
 アウトソーシングです。削減して社内でやればいい。人件費は上がりますが、人件費は生産性には関係ありません。私の仕事に影響があるので、あまり言いたくないです。

・荷造運賃、発送配達費
 配送運賃関係です。多くは売上に比例して上がるものなので、減らしにくいものです。遠方を避けて、ゆっくり届けると下がります。即日お届けは生産性のためにはやめるべきです。

・販売手数料、支払手数料
 バックリベートやブローカー費用、販売時に関する各種手数料のことです。売上増進に必要なら、妥当な範囲で伸ばさざるを得ません。代替方法で売上が作れるなら、そちらに注力してもいいでしょう。
 売上と関係性が薄い手数料なら、安いところに変更する方がいいです。

・リース料
 減価償却費は生産性に関係ないので、増えても構いません。リースは増えると生産性が落ちます。節税効果があり、キャッシュフロー的にメリットがあっても、今は生産性を上げることしか考えていないので、リースはダメという結論になります。

勘定科目はまだまだありますが、かなり内容が絞り込めてきました。
次回は「付加価値労働生産性を上げるベストな手法は何か」のお話になります。


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