計算式から考える、労働生産性を効果的に上げる方法 ①
生産性が重要という話が良く出てきます。わたしの会社は一人当たりがどうたらこうたらと、自慢も自虐もあったりしますが、生産性を上げるために何をすればいいのでしょう。
まずは労働生産性とは何か?から考えます。
労働生産性は2種類あります。ひとつは物的労働生産性、もうひとつは付加価値労働生産性です。
物的労働生産性とは
物的労働生産性=生産物の物量÷労働量
で計算します。物量が単位なので、重量・通貨・個数等を人数で割ったものが単位になります。
生産ラインとか企業単位とかで比較を行う場合には、効率化が進んでいるかどうかの指標になるでしょう。
売上を人数で割って、私の会社の労働生産性は○○円だと主張もできるのですが、この比較をすると、高い物を流通させる企業が上位になりやすくなります。
分かりやすい例で言うと、社員一人だけの会社で、2億で購入した持ちビルを、買った翌日に2億円で売れば、収支は0ですが、労働生産性は、
2億円(売上)÷1人(労働量)=2億円/人
となります。(手数料等の費用はとりあえず無視します。)
一人でこの売上を出すのは、他の業種だとほとんど無理。高い物を流通させる方が上位になりやすいのです。
これは「一人当たりでいくら稼いだのか」という感覚に近い数値です。
付加価値労働生産性とは
付加価値労働生産性=付加価値額÷労働量
で計算します。付加価値「額」なので、日本であれば「円/人」が単位になります(労働量を時間にすると「円/時間」になるように違う場合もあります)
では、付加価値額とは何でしょう?
付加価値=経常利益+人件費+賃借料+減価償却費+金融費用+租税公課
で求めます(日銀方式の場合)。
厳密には違いますが、ニュアンス的には、売上の中で、原料や仕入や製造・販売にかかる費用以外で、多くの場合は粗利益に近い数字になるでしょう。
これは「一人当たりでいくら儲かったのか」という感覚に近くなります。
経常利益がマイナスだと生産性もマイナスになる可能性があります。
生産性と言ったらどちらのことか?
「生産性」と言えば、物的労働生産性のことで考えている場合が多く、単純化して
生産性=売上÷人数 、生産性=売上÷総労働時間数
で計算して比較しているタイプを多く見受けられます。
実際に社会的には、売上より利益の方が重要なので、付加価値労働生産性の方を求めていると思われます。
また、企業の年次比較であれば、その企業の成長の尺度で物的労働生産性を使うことも妥当性があると思われます。
ちなみに国際比較でよく行われる一人当たりの国の労働生産性を求める場合は、
国の労働生産性=GDP÷総労働人口 又は 国の労働生産性=GDP÷人口
で計算しています。
GDPは元々が国内生産された付加価値の総和なので、付加価値労働生産性そのものですが、GDPを売上の総和と勘違いしている人もいるので、物的労働生産性のことだと勘違いされている方も一定数いるでしょう。
物的労働生産性を上げるには
では本題に入ります。先に物的労働生産性について考えます。
ここでの「生産性」とは物的労働生産性のことです。
計算式は
物的労働生産性=生産物の物量÷労働量
なので、生産性を上げるには、
①生産物の物量を増やす
②労働量を減らす
しかありません。
①生産物の物量を増やすには
1)自動化や機械化によって増加させる
人手で行っていた部分を機械化すれば、生産量は上がりますし、より速度の速い機械やシステムを導入すれば、処理量を増加させることができます。
問題はコストがかかることです。
2)生産時間を増加させる
労働量で割るので、時間増加は対策にならないと思われがちですが、人数で割る場合は、残業させても従業員数は増えないので、生産性が上がります。
時間当たりの生産性としても、生産開始準備や生産終了の片づけ時間のような生産時のタイムロスが発生する場合は、時間当たりの生産性も増加します。
3)生産物の標準を変更する
最初に生産物の物量の単位は、重量・通貨・個数等という話をしました。
生産物が重量だとこのパターンは使いにくいのですが、通貨や個数の場合なら可能になります。
例1)単価を上げる
通貨の場合に、1個1,000円の商品があれば、1個1,200円にすると、売上個数が同じであれば、生産性が上がります。
例2)重量を減らす
10㎏のジュースを100g入りのパックに詰めている場合に、100個の商品ができます。これを80gに減らすと、125個作れるようになります。
重量ベースでも個数ベースでも生産性が上がることになります。いわゆるステルス値上げと言われるものです。
要するに単なる値上げか、ステルス値上げでも生産性は上がります。
4)生産物を別のものにする、業態を変える
単純に高いものを売る、より多く売ると生産性が上がります。
例1)農家が加工品を販売する。
単価が高いものを売るパターン。加工品の方が高く売れます。
例2)洋服屋さんがアクセサリーを販売する
服を2着売るより服1着とそれに合うアクセサリー1個の方が売りやすい。売りやすい手法で売上を稼ぎます。アップセルと言ったりします。
通販サイトで「この商品を買った人はこんな商品も買っています」
と出るのも、これと同じです。
例3)建設業が元請工事をする
この場合も売上が生産物とすれば、下請け業者が元請を少しでもやると、作業内容は同じでも生産性が上がります。
②労働量を減らすには
1)無人化、自動化による工数削減
工数が減れば最も削減されます。コストがかかります。
2)時短、休日増、残業減少、工数削減等
単純に働く時間や人数が減れば、労働量は減ります。①の2)と逆のことを言ってます。人数によって生産量の物量が変わらない職種なら取り組むのも有効です。
3)やっていた業務をやらないようにする
単純に言うとアウトソーシングしたり、業務の見直しによって無駄を探して制度の変更や廃止をする方法です。
簡単なのはアウトソーシングです。社内でやらないので、労働量は減ります。同時にコストが上がりますが、売上÷人数で計算するなら、関係ありません。
業務の見直しは定期的に行うことで効率化になる場合もあります。ムリ・ムラ・ムダの撲滅とか生産管理の現場では言ったりします。
違法ですが、サービス残業をさせるとか、社内通貨(ペリカとか)で払うとかの手段を採ると、金銭的な労働量が減ります。
念のためもう一度言いますが、違法です。
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