計算式の算数で考える、労働生産性を効率的に上げる方法 ③
前回まで物的労働生産性を向上させる方法をお話してきました。
物的労働生産性だと、極端に言うと、定価30万円のブランドバッグを12万円で仕入れて、1人で3万円で100個で売ると、大赤字なのに一人当たり300万円の物的労働生産性が生まれてしまいます。
誰でもやろうと思えば可能ですが、絶対赤字になるから誰もしません。
そういう事態も考慮すれば、企業としては付加価値労働生産性で考えるべきです。
付加価値労働生産性とは
付加価値労働生産性の計算式は、
付加価値=経常利益+人件費+賃借料+減価償却費+金融費用+租税公課
これは「日銀方式」と言われる計算方法で、標準的な指標はこれで計算されています。
とりあえず経理や簿記に疎い人向けに、正確性よりもイメージのしやすさを重視して、それぞれの項目をざっくりと解説します。
・経常利益
経常利益=営業利益ー営業外費用+営業外収益
本業の利益に、本業以外の費用を引いて、本業以外の利益を足したものです。この金額に対して税金がかかります。
・人件費
従業員の給料だけでなく、法定福利費を含んだものです。
法定福利費とは、主に社会保険料(健保・厚生年金・雇用保険・労災保険等)の会社負担分です。
・賃借料
リース代や家賃等の経費です。
・減価償却費
購入した資産は、その年度に全額経費にするのではなく、毎年少しづつ経費で落としていきます。その経費のことです。
・金融費用
借入金の利息とかです。それ以外にも手形の割引料とか、社債の費用も入ります。
・租税公課
費用になる税金です。印紙税とか登録免許税とか事業税等が入ります。
所得税や消費税は入りません。
全て足し算なので、どれかが上がって、他が下がらなければ生産性は上がります。
計算式をきちんと見直してみると・・・
経常利益は、経常利益=営業利益ー営業外費用+営業外収益です。
営業外費用と営業外収益が面倒なので、併せて「営業外損益」と言い換えます。損していたらマイナス、得していたらプラスになります。
経常利益=営業利益+営業外損益
営業利益の計算式は、
営業利益=売上高-売上原価-販売管理費
です。
売上原価+販売管理費のことを、この話の中で「費用」と呼ぶことにします(会計上の定義とは違うのであしからず)
そうすると、
営業利益=売上高-売上原価-販売管理費=売上高-費用
となります。
そして、各項目の人件費、賃借料、減価償却費、金融費用、租税公課
は全て費用です。これ以外の費用もあります。
何度も書くと分かりにくいので、これらを「付加価値費用」と呼ぶことにします。すると、
付加価値費用=人件費+賃借料+減価償却費+金融費用+租税公課
そして、これ以外の費用を「付加価値外費用」と名前を付けると、
費用=付加価値費用+付加価値外費用
となります。
これらをまとめると、経常利益はどうなるでしょう。
経常利益=売上高-費用+営業外損益
すると付加価値生産性の計算式は、
付加価値=経常利益+人件費+賃借料+減価償却費+金融費用+租税公課
=経常利益+付加価値費用
=売上高-費用+営業外損益+付加価値費用
=売上高-(付加価値費用+付加価値外費用)+営業外損益+付加価値費用
=売上高-付加価値外費用+営業外損益
・・・付加価値費用が消えてしまいました・・・
つまり計算上で付加価値費用を増減させても付加価値に影響しないということになります。
変な方向に行っているような気がしますが、そのまま進めます。
付加価値を上げるには
ということで、計算式上で検討すべきは、
1.売上を上げる
2.付加価値外費用を下げる
3.営業外収益を上げる
という3パターンになります。
1.売上を上げる
いろんな手法がありますが、ケースバイケースなので、それぞれ頑張ってくださいと言っておきます。詳細は次の回でやります。
2.付加価値外費用を下げる
付加価値外費用で代表的なものには何があるでしょう。
・売上原価(但し付加価値費用に該当するもの以外)
・広告宣伝費
・交際費
・旅費交通費
・水道光熱費
・売上原価を下げるには、仕入値の値下げ交渉でしょう。今のご時世で無理だと思いますけど。
・広告宣伝費を下げると売上が下がるような気がします。意味の無い広告はやめないといけません。そんなものは、かなり少ないと思いますが。
・交際費を下げるのは有効ですが、そんなにジャブジャブ遣ってないと思います。
・旅費交通費は遊びに行ってるなら、そもそも計上できませんし、仕事上の出張や移動費を下げると売上が下がるのでは。
・水道光熱費はむしろ値上げで困ってる状態です。
ということで基本的に全滅です。無駄を思いつくだけ削減することで、少しぐらいなら下げられるかもしれません。
3.営業外収益を上げる
「本業以外で稼げ」という本末転倒な話をすることになります。かなりの額を稼げるなら定款変更して、本業にした方が、営業利益が増加するので、決算書の見栄えが良くなるでしょう。
本業ではない株式投資で稼いだり、不動産運用で稼ぐことを営業外収益で取れば付加価値も増えます。それで損すれば、当然付加価値は減ります。
正しく付加価値増やすのは無理ゲーでは?という感じになってきたので、次回に売上を伸ばして付加価値向上と生産性向上の話をします。
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