説明しない方がよく伝わるというパラドックス
「こんにちは!」
一番乗りの子どもがやってきた。2人でゴールをセットして1対1が始まります。すぐに2人目、3人目と子どもたちが続々やってきて、2対1、2対2、3対2とゲームは楽しさが増していく。やがて10対10ほどになって、みんなが少し疲れてきた頃にブレイクタイム。
その間コーチは次の練習のセッティング。そして近くにいる子ども達とすぐに次の練習を始めてしまう。周りでは、おしゃべりをしている子、水を飲んでいる子、トレイに行っている子、ボールを蹴っている子、みんなそれぞれなんかしているけど、気にせずこっちはサッカーをする。
すると不思議なことにあっという間にみんな集まってくる。「コーチがなんかやってる!」。集合の号令をかけてもなかなか集まらない子どもたちが、1人残らず周りに集まってくる。
「次、これやります」
こんな感じでほとんど説明することなく、練習はどんどん進んでいく。
僕は本当にコーチなんだろうか。そこにいるのはコーチというより、ただのサッカーが好きな人。
でも紆余曲折あってこういうスタイルにたどり着いてから、明らかに子どもたちの集中力は上がり、加速度的に上達しているように感じるのです。
彼らはサッカーがしたい。楽しそうなことがしたい。もちろん上手くなりたいとは思っているでしょう。でも大人の話なんか聞きたかない。サッカーがしたい。そして僕もサッカーがしたい。
コーチが説明をしなくなってから、彼らは練習時間のずいぶんと前から集まるようになりました。「えっー、もう終わり?」。そして満足した笑顔で帰っていく。
説明するよりも説明しなくなってからの方が、こちらが伝えたいことが伝わるというパラドックス。
彼らのおかげで、僕はなりたい自分を見つけたような気がしたのでした。
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