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『タイタンの妖女』誰かに利用されることは幸福なことかもしれない。



はじめに

実のところこの小説はかなり前から知っていて、「読もう読もう」と思いながらも読む機会がありませんでした。

タイトルから、スターウォーズのような宇宙戦争を題材にしたスペースオペラかなと思っていました。(読む前は、妖女が私の脳内で勝手にアンジェリーナジョリーに変換されてた。)

実際に読み始めてみると、読み始めは、「ふんふんふん」途中から、「うんうんうん、うん?」最後は、「えっ?」という感じでした。

なんのこっちゃ。

とにかく、妖女は重要ではありませんでした。

~あらすじ~

時空を超えたあらゆる時と場所に波動現象として存在する、ウィンストン・ナイルズ・ラムファードは、神のような力を使って、さまざまな計画を実行し、人類を導いていた。その計画で操られる最大の受難者が、全米一の大富豪マラカイ・コンスタントだった。富も記憶も奪われ、地球から火星、水星へと太陽系を流浪させられるコンスタントの行く末と、人類の究極の運命とは? 巨匠がシニカルかつユーモラスに描いた感動作。

タイタンの妖女、Amazon販売ページより

この物語の重要人物はウィンストン・ナイルズ・ラムファードと、主人公のマラカイ・コンスタントなのだが。あらすじを読んだだけだと、ちんぷんかんぷんなんじゃないでしょうか。正直なところ、この物語で最初につまずくのはここだと思います。

この小説の最初のページにあらすじとして、このウィンストン・ナイルズ・ラムファードのことが説明されていて。

”地球と火星の間を旅している時に、ラムフォードとその飼い犬のカザックを載せた宇宙船は「時間等曲率漏斗」(クロノ・シンクラスティック・インファンディブラム)として知られる現象に飛び込み、ラムフォードとカザックは量子力学において波が有する確率と同様な「波動現象」になる。”

wikiより抜粋

要するに、過去と未来、この宇宙のすべての場所に同時に存在するらしい。
しかし、このあたりの設定は読み進めると分かってくるので、とりあえず「なんか超越した人」という認識で読み進めることをお勧めします。

無関心な神

主人公のマラカイ・コンスタントは、地球にいる頃は、女癖が悪く。パーティー三昧、金にモノを言わせてやりたい放題でした。
しかし、ラムフォードの計画によって、すべての事業が破綻し無一文になり、記憶を奪われ火星に送られ、火星の後は水星へ飛ばされ、やっとの思いで地球に帰ってきます。

苦難の果てに帰ってきた地球でマラカイが目にしたものは、ラムフォードが神の新興宗教「徹底的に無関心な神の教会」を信仰する人々でした。

人間に対して徹底的な無関心を貫く神。これは、隣人を愛せというキリスト教の教えの反対なの存在ではないでしょうか。愛の反対は憎悪?いや愛の反対は無関心なのでしょう。このあたりが、キリスト教圏の小説家が考えるディストピア的な世界でおもしろかったです。

この宗教にはもう一つ特徴があります。それは、すべての人間が平等になるために、恵まれた人間にはハンディキャップを与えるというものです。

健康な人間は体に重りをつけ、イケメンはブサイクと結婚して、頭のいい女はバカな男と結婚する。(世にも奇妙な物語に「美人税」という回がありましたが、考えた人はこの小説を読んだのかも。)

実際これを実現しようとすると、どこの誰を基準にするかが問題で、その場合世界で一番不幸な人間を探さなければいけません。それはたぶん死にかけの人間なので、それと平等にするにはみんな死ななければなりません。それは無理では?

まとめ

読み終わってみると、主人公と共に、火星、水星、地球そしてタイタンを旅をした自分がいた。金、ラムフォード、あるいはもっと大きなものに利用されているのは、主人公だけではないのではないだろう。

我々は何処から来たのか、我々は何者か、我々は何処へ行くのか。

幸福とはなにか、平等とはなにか、愛とは何か。そして、この宇宙において人間の歴史とは何を意味するのか。というあまりにも壮大なテーマを一冊にまとめた著者はやはり天才的なのだろう。

間違いなく、この本を読む前と読み終わった後では見える世界が変わるはずだ。
それでは!

”単時点的(パンクチュアル)な意味において、さようなら!”

ウィンストン・ナイルズ・ラムファード



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