見出し画像

SNS担当部署の方に【企業でSNSアカウントを作る際の注意点】


 前回の企業法務部向けの注意点の記事に続いて第二弾です。企業がSNSにおいて公式アカウントを運用するうえで、その担当となる部署の方に向けて、注意すべき点4つと、制度面としてシステムに必要な点を紹介したいと思います。

1.個人情報、企業内機密情報の流出をしない

 まず、SNSで個人情報や企業内の機密情報について触れないということが鉄則です。SNSでは気軽に発信ができますが、一度投稿されると、拡散・保存により、その投稿内容を完全に削除することが不可能になります。そのため、このような情報を発信しないよう、入念に確認すべきです。

 写真を投稿する場合、これらの情報が写りこむ危険もありますので、被写体以外にも目を向ける必要があります。

2.誤情報、センシティブな話題についての発信を行わない

 事実か否か不明確な情報については発信しないほうがよいです。また、前の記事でも触れましたが、人によって意見が異なる情報や賛否両論ある意見は、炎上の種になりやすいので、控えるべきです。

 その他センシティブな話題については触れないほうがいいのは無論、まず、担当者がSNS監視によって、炎上のトレンドについても知識を蓄えておくべきです。そうすれば、炎上しやすい内容について論理的にも感覚的にも理解できるようになり、炎上を避けることができます。

3.SNS監視・パトロールを行う

 2でも述べた通り、炎上の種を防げるだけでなく、自社のなりすましアカウントの早期発見にもつながります。また、トラブルへの初動も迅速に行えるようになり、取り返しのつかない炎上にまで発展しないように管理できます。

4.SNSアカウントのIDやパスワード管理の徹底

 アカウント乗っ取りをされると、公式アカウントからいかなる情報の発信や悪用も出来てしまい、大変危険ですし、自社の信用を大きく失うことになります。そのため、SNSアカウントのIDやパスワード管理の徹底が重要になります。

【ポイント】
・定期的にID・パスワードを変更することで、不正利用のリスクを減らせます。変更のタイミングは、3か月に1回程度が目安です。
・ID・パスワードは、他人に簡単に推測されるものは避けましょう。大文字・小文字・数字・記号を組み合わせた、8文字以上のランダムなものがおすすめです。
・ノートパソコンやタブレット・スマホなどのモバイル機器を外出先に持って行く場合は、IDやパスワードを保存しないようにしましょう。万が一、紛失や盗難にあった場合にも、第三者にアカウントが乗っ取られることを防げます。
・セキュリティ設定では、2段階認証を有効にしておきましょう。2段階認証とは、ID・パスワードだけでなく、メールアドレスや電話番号など、別の方法で本人確認を行う仕組みです。これにより、不正アクセスを効果的に防ぐことができます。
・セキュリティ対策ソフトをインストールしておきましょう。セキュリティ対策ソフトとは、ウイルスやマルウェアなどの悪意あるプログラムからコンピュータやデータを守るためのソフトウェアです。最新版に更新しておくことも重要です。

 推測されにくいパスワードやパスワードの保管方法について、持ち運び可能なメディアにおける注意点は、総務省の記事が参考になります。

5.システム

 そして、1〜4を満たすために、SNSアカウントの運営では次の事項がシステムとして大事になってきます。

⑴ 投稿をチェックする人が複数いるシステムにする

 炎上の危険を防ぐことができます。また、チェックする人が異なる立場の方であると、複数の見方で炎上の危険がないかを確認できるため、より適切な投稿をできるようになります。SNSのパトロールも容易になります。

⑵ ソーシャルメディアガイドライン・ポリシーの遵守

 炎上リスクを防ぎ、企業の信用を維持するためのルールですから、これを遵守することが重要です。もし、実務上ルールが機能しない場面などがあったら、適宜報告することもルールの有用性を高めるために必要な事項となります。

 ソーシャルメディアガイドライン・ポリシーが形だけのものとならないよう、教育や研修を行い、運営者が全員きちんと理解して守るようにしなければなりません。

⑶ SNSの利用規約の確認

 それぞれのSNSには利用規約が存在します。利用規約違反の行動をすると、アカウントがロックされたり、場合によっては永久にアカウントが使えなくなる(永久凍結)ことがあります。利用規約は変更されるものなので、適切な運用ができるように、随時確認しておく必要があります。

⑷ 公式アカウントを私物化させない

 個人的な見解や考えを投稿して炎上した事例は多岐にわたります。このような事態を防ぐために、複数チェック体制以外にも、投稿内容の定期的なモニタリングを制度化して、あくまで会社のアカウントであることを認識し続けられるようにするべきです。

 また、フォローするアカウントやいいねした投稿も外から知ることができるので、全く関係のないフォローやいいねをすることも控えるべきでしょう。

⑸ 公式アカウントを操作する端末では、個人アカウントを操作させない。

 前の記事でも述べた通りですが、徹底して区別するようにしましょう。個人アカウントに投稿するつもりで、誤って会社の公式アカウントを利用して投稿してしまうケースが多々見られます。

6.さいごに

 SNSはうまくいけば、認知を広げられ新しいファンを獲得できるメリットがありますが、成果が分かりにくく炎上リスクもあることから、担当者にとってなかなかに負担となることも少なくありません。

 他の部門や部署とも連携し、協力を仰いで、企業一体として運用していくことが大事です。

(参考文献)
清水陽平『企業を守るネット炎上対応の実務』学陽書房 2017.1
深澤諭史『企業法務のためのネット・SNSトラブルのルール作り・再発防止』中央経済社 2023.4


 当事務所のネットワークには、リスク管理のプロフェッショナルが揃っております。リスク管理に関するお悩み事項についても、遠慮なくお問い合わせください。

文責:スパークル法律事務所
連絡先:TEL 03-6260-7155/ info@sparkle.legal
本記事は、個別案件について法的助言を目的とするものではありません。
具体的案件については、当該案件の個別の状況に応じて、弁護士にご相談いただきますようお願い申し上げます。
取り上げてほしいテーマなど、皆様の忌憚ないご意見・ご要望をお寄せください。

この記事が参加している募集