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個室サウナの経営を考える

 個室サウナ開店のプロジェクトに関わっています。

 2020年にオープンした神楽坂の「ソロサウナtune」が注目を集め、連日で盛況で2022年3月現在も、なかなか予約の取れない状況が続いています。

 当然、この成功を受け、様々な企業や事業者が参入の動きをみせ、関東では昨年から今年にかけ開店ラッシユの様相を呈しています。春から秋にかけ
多くの施設が開店し、その流れは全国に広がることは間違いないでしょう。

なぜ個室サウナなのか?

 個室サウナという施設が登場した背景は、結論から言えば、サウナの社会的地位の向上があったからだと思います。そして、比較的簡単に出店でき、応用も効く、これが答えです。

 その根拠と、だからこそ注意しなけれない点を検証します。

コロナとロウリュ


 元来、我が国のサウナは温浴施設の付帯物という位置づけでした、あくまでも主役は温泉やお風呂であって、それらの脇役に過ぎなかったのです。

 ここ数年のサウナブームでサウナの存在を知りサウナに開眼した人も多くサウナ専用のサイト、専門誌、サークルやイベント、グッズ販売など今まででは考えられない盛り上がりでサウナ自体が注目されるようになりました。

 そんな中でのコロナの発生はサウナブームにも水を差すこととなります。不特定多数がマスクなしに一緒になって密室で過ごす訳ですから、警戒心を持つのは当然のことでしょう。個室サウナは安心してサウナを楽しみたい!そんな願望を満たすことが可能です。

 フィンランド式ロウリュサウナの人気も、要因の一つでしょう。従来の高温サウナと違い、蒸気によって室温を上げるロウリュは、行うタイミングや蒸気の量は人によって好みが違います、思い通りに楽しみたいという願望を持つサウナーは少なくなかったはずです。 

 しかし、ブームでなければ、脇役を主役に起用したような施設の登場はなかったでしょう。サウナだけをスピン・オフさせ、貸切でサウナを楽しむという発想を持っていた人がいたとしても、商売として成功を考えることはできなかった、今はそれだけサウナの存在感が高まっているのだと感じます。

本質を問われるのはこれから

 しかし、本質を問われるのはこれからです、今しばらくは物珍しさもあるので集客はできるでしょうが、部屋貸しの商売は、集客の天井が決まっています。回転率を上げなければ採算が合いません。

 価格設定は従来の温浴施設より高めの設定となるでしょう、フルスペックで時間を過ごせる温浴事業より、高い金額で勝負できる確かな価値を提供しなければ客離れは早いと思います。

 今しばらくは、個室施設は価格設定も、その価格での集客もバブル状態で正常運転とは思われません、ここ1年くらいで出店する施設はスキミングプライスで投資回収を早める売上を確保しながら、2年目以降、3年目以降、コロナが落ち着いた世界でも選ばれる店になるような計画が必要だと感じています。


サウナの市場規模を考察してみる


 サウナを開業するのであれば、サウナの市場規模を知っておく必要があります。ところが、それを明確に示す信頼できるデーターはありません。前述した通り、サウナは温浴事業の付帯設備のため単独市場として捉えられていないからです。

 それでは、温浴施設の市場はどのようになっているのでしょうか?

 厚生労働省が発表の資料を基に、株式会社アクトパス(温浴事業専門コンサルタント会社)が出した推計では、2020年の温浴事業の市場規模は9702億円となっています。この数字は温浴に関わる全産業の入泉料だけの数字です。

 一方、公衆浴場を利用する人の中で、サウナが目的の人はどのくらいの比率なのかという調査では、株式会社クロスマーケテイング社の調査によれば、約25%の人が利用するとの回答を得ています。

 ここから推察すれば、入泉料の1/4,つまり2,425億円が現在の年間のサウナのマーケトサイズと仮定できます。さらに一人当たりに換算すれば一人当たり約2,000円という計算になります。

 仮に商圏内に3万人の人口があれば、6億のマーケットがあり、その中でどれれだけのシェアを獲得できるか?ということになります。

 商圏の設定は立地条件によって変わりますが、例えば東京の大田区の人口が14万人ですので、仮に大田区で大田区の住民を対象に商売を行なうとすれば28億のマーケット、この中で5%のシェアを確保すれば机上の論からすれば年商1.4億円という計算になります。

投資コストと成功のボーダーライン

 温浴事業を行うには相当な投資額が必要です。場所によりますが、スーパー銭湯なら、小さな本当に小さな超絶シンプルなものでも、最低5億円でも足りないのではないでしょうか。街中だと地代は目を見張る金額だし、郊外だと相当数の駐車場が必要になります。

 今、開店している個室サウナはほぼ既存のビルのなかで開店しています。
5室から10室くらい、1室が2坪から3坪として、延床面積が20坪から60坪、坪単価200万から250万+α、一概には言えませんが、この投資で採算が合う運営を行えることが条件になります。

 投資金額は温浴施設と比べるとはるかに低いと言えます。仮に投資総額6,000万の施設だとすれば、少なくとも年商2,500万、月商にして200万の商いを行うことができれば合格ラインに立てるのではないかと思います。

 しかし、油断は禁物です、参入障壁が低いと、それだけ競争も激しくなる可能性が高く、そこで選ばれる施設でないとならないでしょう。


コンセプトを明確にしてターゲットを絞る

 

装置偏向なら生き残りは難しい

 スーパー銭湯が台頭し始めた2000年前後、開店すればどの施設も満入り御礼状態でした。高額な投資家があっという間に回収できる、そんな時代がありました。その後多くの参入があり規模も施設もどんどん立派になりましたが、ターゲットもコンセプトも違いはありませんでした。
 
 この数年、その結果は明確になっています、施設のコンセプトが明確な施設は今も繁盛を続けています。

 実際、年内には30室を超える大型の個室サウナの計画が地方を始めスタートしています。設備や規模だけでは、資本力のある企業に太刀打は難しくなります。

スナックにみるカラオケの強み

 我が国発祥のエンターテイメントにカラオケがあります。初期は様々なカラオケ店が乱立していましたが、今は専門店としては数社の全国規模のチェーン店か、各地方の有力な店舗以外は姿を消しました。

 こんな中で、どんな街にも必ず繁盛しているカラオケスナックがあります。歌を歌うというベネフィットはスナックもカラオケ店も同じですが、そこには運営者であるママやマスターの個性が光っています。

 エンタメとしても、心身のメンテナンス手段としてもサウナは我が国独自の文化となる可能性を秘めています。設備を追求するか、運営サイドの個性を発揮するか、どちらかの道で頭角を表す必要があります。

名脇役としてサウナをキャステイングする

 冒頭にも記しましたように、我が国のサウナはそもそも脇役でした、その中には名バイプレイヤーとも言える中心的な役割を担うサウナも多くあります。

 キラリと光る脇役で既存事業との組み合わせで強みを活かすことが、個性的なサウナの今後の流れの主流になると考えています。

 例えば、コワーキングスペースとサウナの組み合わせで、事業価値を高めた西荻窪の「Lifi Work Cafe」は都内最大の大型のコワーキングスペースに
「ROOF TOP」というフィンランドサウナを作り、事業価値を高めました。

 現在私も、銭湯の階上にコワーキングスペースを設ける計画をプロデュースをしておりますが、いずれもサウナは名脇役として重要な位置付けになります。

 恵比寿にある「恵比寿サウナー」は居酒屋にサウナを併設したそば居酒屋です。ここも、サウナのなかの飲食コーナーという切り口ではなく、居酒屋で入れるサウナというコンセプトです。

 旅館の客室にサウナというのも、全国区的に広かってきています。ここ数年は、客室に露天風呂を備えた旅館が増え、高い客室料金でも予約が取れない状況が続いていますが、今後はサウナが取って代わる可能性は大きいのではないでしょうか。

 大阪初の個室サウナは「MENTE」はメンズエステサロンが運営する個室サウナで、サウナを堪能した後にヘッドスパを始め、さまざまなエステメニューを受けることができます。

 私自身は、今後メデイカルやパーソナルヘルスケアとの組み合わせは相性が良いのではないかと考えています。今後の我が国の最大の産業は健康産業となります。クリニックやパーソナルトレーニングなど、生涯にわたるケアを行う場所のあり方を変えるアイテムにならないかと思います。

 ブームで主役を狙うサウナに、敢えて脇役を担って貰うことで新たな広がりがあると思います。

サウナが主役の個室サウナ体験談

・狭さにこだわりることが成功の秘訣か?
高回転率で価格競争に打ち勝つビジネスモデル

・水風呂のこだわりをどこまで顧客に訴え、理解をしてもらえるか?
設備に頼らない訴えが大事と感じる、高級個室サウナ

・照明と音楽のこだわりが伝わるか?
今後の取り組みに期待したいほのぼのサウナ











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