宮上拓

宮上拓といいます。 普段は予備校の言語系科目の講師ですが、威厳はあまりない。

宮上拓

宮上拓といいます。 普段は予備校の言語系科目の講師ですが、威厳はあまりない。

最近の記事

ピートのきいたヤツの効果

 一週間ぐらい前にフランシス・アルバートの話を書いたけれど、今回もお酒の話です。  バーに行って「今日はカクテルの気分でもないな」と思ったりすると、僕は基本的にはウィスキーをちびちび——というか、ぼやっとしながらだらだらというか——飲むことにしている。ウィスキーって日本酒と同じで一家言ある人が多い(僕の父親はウィスキーといえばバーボンである、という人なのです)んだけど、僕自身はアメリカンでもスコッチでもカナディアンでも何でも飲む。バーテンダーさんに適当におすすめしてもらって、

    • フランシス・アルバートの男

       この間タバコの話を書いたので——というわけではないけど、今回はお酒の話です。  僕はどちらかと言えば外に出て飲むことは少なくて、基本的には家でのんびりとお酒を飲む方が好きです。大体は安いワインをソーダで割って飲んだり、しっとりいきたい時にはジンにレモンを絞ってちびちびやったり、という感じ。夏場の暑い時期にはまあビールも飲むし、近所に美味しい日本酒を扱う酒屋があるので、冬場には鍋をしながら日本酒を、ということもある。  でももちろん全く外に飲みに出ないというわけでもない。人か

      • タバコを吸う出来の悪い犬

         突然ですが、僕は喫煙者です。  ——というと何かの罪を告白したみたいだけど、そんなことはなくて、ただタバコを吸う人だというだけです。数年前に紙巻から電気加熱式に切り替えて、大体二日で一箱を吸い切るぐらいかな。ヘビースモーカーやチェインスモーカーでもないのにこの反タバコのご時世に地味に喫煙を続けている、しがない種類の喫煙者です。  僕の喫煙スタイルは、基本的に「何かの隙間を埋める」タイプで、要するに「ちょっと時間が空いているんだけど、差し迫ってやるべきことは無いのでそれならば

        • 大人は出張をする

           世界中の大人の皆さん、「自分も大人になったなぁ」と思ったのはどんな時ですか? 僕は「ちょっとその日は出張で」という台詞を言ったときです。そんなことかよ、と思われる方もいるかもしれないけど——まあ自分でもそう思うけれど——よく考えると大人の要素がこの短い言葉には詰まっている、と思う。  まず冒頭(こんな短いフレーズでも冒頭と言うのかしらん)の「ちょっと」です。この一言には「あなたのご要望に添えず申し訳ないが」という気遣いの気持ちが(多分)込められている。おそらくこの台詞を言う

        ピートのきいたヤツの効果

          閉じた世界のすみれの花

           最近、周りの知り合いから「大丈夫ですか?」と声をかけられることがある。何かというと、宝塚歌劇団に関する一連の報道です。僕が宝塚歌劇団の公演を見にいっていることを知っている人たちが声をかけてくれる。いわゆる「推し」——宝塚風に言えば「ご贔屓」か——が炎上しているみたいに感じる人が多いみたいなんだけど、もちろん僕自身は大丈夫である。しかし、日々報道されているニュースを聞いていると(積極的にそのニュースを追っているわけではないけど、それでも十分耳に入ってくる)、やっぱり気分が滅入

          閉じた世界のすみれの花

          引っ越しと交際の共通点

           このところ、僕の身の回りで引越しが相次いだ。まず僕自身が引越し、次に僕の弟が引越し、それから友人が引っ越した。  引越しが好き、という人に僕はまだ出会ったことがないけれど、もちろん人は好き嫌いに関わらず色んな事情で引越しをするものだし、かく言う僕もこれまでに5〜6回は住まいを移している。  で、今の部屋に引っ越してきてからはちょうど1ヶ月ほどなんだけど、この1ヶ月というのが、引っ越した部屋の素性というか、その部屋と自分のウマが合うかどうかが見えてくる頃だと僕は思っている。あ

          引っ越しと交際の共通点

          シュレディンガーさんちの猫ちゃん

           みなさん「シュレディンガーの猫」をご存知ですか? 量子力学の不確定性を説明するのによく持ち出される、箱の中に入った半分生きてて半分死んでいる猫のことです。文章にして説明してみるとなんのこっちゃだけど、要するに、とある理論の説明のための概念上の猫さん、ということです。  なぜこんな話をしているのかというと、先日ある女子高校生の授業中にこの猫ちゃんが出現したから。たしか"based on"というフレーズを説明するのに、「シュレディンガーの猫の話は量子力学の不確定性に基づいている

          シュレディンガーさんちの猫ちゃん

          腑に落ちない宣教師たち

           この間授業が終わって教員室に戻ってくると、生徒から「外に先生宛にお客さんが来てます」と声をかけられた。特に来客の予定は無かったので、「?」と思って外を見てみると、笑顔の白人男性二人がこちらを見て手を振っている。パリッとした白いワイシャツにスラックスといういでたちで、まるで見覚えがない二人だ。  わけが分からずに、そのまま「?」という顔のままでいると、声をかけてきた生徒が説明してくれた。彼女の話をまとめると、朝の授業に遅刻してきた彼女が(遅刻するなよな)道を歩いていた時に、困

          腑に落ちない宣教師たち

          村上春樹と牡蠣フライとスパイスカレー

           この間ハイティーンの女の子と話をしていて——というと何だかいかがわしい感じもするけど、単に職業上の問題です——村上春樹の話題になった。僕が授業中に翻訳者としての村上春樹の特徴について少し触れた際に、彼女が「そう言えば」と思い出したのだそうだ。  彼女の高校の国語の教科書には、村上春樹の有名な「牡蠣フライの話」が掲載されていたんだそうである。今調べたらこの文章は2001年が初出で、それからは20年以上が経過している。そう考えるとまあ教科書に載るぐらいのことはあるかもしれない。

          村上春樹と牡蠣フライとスパイスカレー

          初めましての自己紹介をいかに切り抜けるか

           こんにちは、宮上拓(みやかみ・ひらく)です。  さて、noteの初回投稿ってみなさんどういうことを書くんでしょうか? きちんとした挨拶や作法みたいなものが——義両親の所へ初のお伺いに行く時にスーツを着て手土産を持っていくように、はたまたジャングルで謎の部族の村に招待された時に動物の血をすするみたいに——必要なものなんでしょうか。よく分からないので取り敢えずはこのnoteアカウントについて説明してみることにします。  このアカウントでは——えーっと、特に何を書くかは特に決めて

          初めましての自己紹介をいかに切り抜けるか