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タバコを吸う出来の悪い犬

 突然ですが、僕は喫煙者です。
 ——というと何かの罪を告白したみたいだけど、そんなことはなくて、ただタバコを吸う人だというだけです。数年前に紙巻から電気加熱式に切り替えて、大体二日で一箱を吸い切るぐらいかな。ヘビースモーカーやチェインスモーカーでもないのにこの反タバコのご時世に地味に喫煙を続けている、しがない種類の喫煙者です。
 僕の喫煙スタイルは、基本的に「何かの隙間を埋める」タイプで、要するに「ちょっと時間が空いているんだけど、差し迫ってやるべきことは無いのでそれならば……」という感じで一服する。だから何かをしているときには全く吸わないし、そういう時には吸わなくても何の痛痒も感じない。「たばこ? ああ、そういうものもありましたね」という感じである。じゃあタバコなんて止めればいいじゃない、と言われると——まあその通りですねえとしか言いようがない。
 でも最近思うのは、若い世代には「タバコ、ダメ、絶対」というのがかなり根付いてきているなあということです。職業上、定点的に17〜20歳ぐらいの子の相手をすることになるのだけど、ここ数年は僕がタバコを吸っている所を目にすると(喫煙所がわりと丸見えの所にあるのです)、信じられないというふうに目を丸くする子が結構いる。
 僕たちが子供の頃なんて、大人がタバコを吸うのはわりと当たり前で、たまに吸わない大人(特に男性)を見ると「へえ、珍しいな」と思うぐらいだった。僕が仕事を始めたぐらいの頃は、「まあタバコを吸うなとは言いませんけど、健康には気をつけてくださいね」ぐらいの反応だった。それが今や、呆れた様子で「タバコ吸ってるの? まったく、救いようがないわね」というような反応をされるのです。あまりに言われるので、この間なんか、生徒にタバコを吸っているのを見られそうになったときに思わず物陰に隠れてしまった。結局バレて、「先生、あのですね、タバコを吸うと死亡率に有意な違いが出てくるんですよ、分かってるんですか?」とお説教されたけど。どうやら彼らは僕のことを出来の悪い犬みたいに思っているみたいだ。

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