防音職人

木造建物・マンションの防音設計エンジニアです。国立音大附属小学校付近の仕事場での防音相…

防音職人

木造建物・マンションの防音設計エンジニアです。国立音大附属小学校付近の仕事場での防音相談や設計コンサルティングを行っています。主に木造住宅、木造ピアノ・音楽室(地方の現場を含む)の防音設計および防音材の実践的理論について投稿します。https://oto-taisaku.com/

マガジン

  • 木造住宅・音楽室の防音設計

    木造住宅・木造音楽室の防音設計の方法論、留意点等について投稿します。新築およびリフォームにおける事例を踏まえて、担当した現場だけでなく、他の専門業者が失敗した案件の相談についても触れています。

  • 防音相談(木造・マンション)

    主に住宅と音楽防音室に関する防音相談の概要、事例について投稿します。

  • つぶやき・心のかけら

    暮らしの雑記・想い出の欠片などテーマのない投稿。 *日記:https://neodiy.exblog.jp/

  • ピアノ防音室の事例

    私が音響・防音設計を担当した木造ピアノ防音室、ピアノ教室の事例をご紹介します。

  • マンションの防音課題・事例

    マンションの防音設計・工事の課題や事例について投稿します。

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木造ピアノ室は建物全体が楽器のようだ

木造ピアノ室は「建物全体で鳴る楽器のようだ」というコンセプトは、あるピアニストや複数の音楽家からの体験報告の中から生まれました。私の担当した現場の施主様からいただいた貴重なご意見や感想が、私の心の支えでした。このコンセプトは「木造軸組在来工法」の音楽室のためにある言葉です。 木造ピアノ室の留意点と参考情報ピアニストなどの音楽家からのアプローチや体験が、防音設計を担当する専門業者やエンジニアの仕様・工法に反映されないのはどうしてなのか?と長年疑問に思っていました。それは、きっ

    • 防音職人の防音設計スタイル

      明日8月15日の独立開業記念日「20周年」を控えて、改めて今までの防音設計に取り組んできた設計手法や研究スタイルについて振り返ってみました。 防音職人のホームサイトを作ったときのコンセプトは「既成の設計手法や既製品の性能を鵜呑みにしない」「担当現場の効果を検証しながら防音設計の仕様を決める」「伝統的な古い事例や工法に学びながら木造音楽室の構築に活かす」この3つが屋台骨だったと思います。 大学の研究室の恩師から研究開発は自分の目で体で感じながら独自の視点を大事にするというス

      • 木造の防音相談およびコンテンツ問合せ

        2024年6月から毎週、週末に防音相談以外のウェブサイトのコンテンツに関する質問に対応しています。 *基本的にメールで回答しています。 *ホームサイトに掲載しているコンテンツのほか防音材の概算見積の問合せもOKです。概ね数日以内に返信しています。 *日曜・祝日の定休日および年末年始は返信は行いません。 出来る範囲での質問事項に対する回答サービスですので基本的に無料です。有料相談の場合は、別途説明書などの作成を行います。普通は遠方の方のご相談の場合ですが、東京都内の相談者にも

        • 木造防音設計の間違った情報

          グーグルなどでキーワード検索すると、木造の防音設計に関する間違った情報が出てきます。 例えば「木材は振動を伝えやすく、音が伝わりやすい性質を持っています。 音は空気や物質を振動させて伝わってきます。 そのため、振動しやすいものであるほど、音漏れしやすくなります。 鉄筋コンクリートは振動しにくく音が伝わってきませんが、木材は振動しやすいため音が伝わってしまうのです。」というテキストが出てきます。 この説明は、かなり間違っています。 振動音など固体伝播音と空気伝播音について

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          防音職人とウェブサイトの想い出

          防音職人は今年の8月15日に独立開業20周年となります。私が初めてホームページを趣味で立ち上げた2003年当時は、無料ホームページサービスと、ちょっと割高な有料レンタルサーバーのサービス(ホームページのコンテンツを転送するサーバー)があり、主に後者は事業者が利用するサービスでした。 無料ホームページサービスは、現在もいくつかありますが、大半がCMSタイプのブログを内蔵するウェブサイトです。20年前には無料版はありませんでした。 サブドメインの無料ホームページサービスで、当時有

          防音職人とウェブサイトの想い出

          木造ピアノ室のコンサルティング

          木造住宅の新築時に計画的にピアノ防音室を構築できなかった依頼者(施主)へのコンサルティング業務の事例についてご紹介します。 主に、「新築時に予算を確保できなかったケース」と「新築時に新築業者または専門業者の工事でうまく行かなかったケース」について、有料の防音相談から対応して、ご契約に至るまで仕事場での打合せと電話相談で対処した事例です。 大半が施主様のDIYと外壁側内装面のリフォームだけで対策を行った事例です。 私は、本業の新築またはリフォームによる「音響・防音設計」業務の

          木造ピアノ室のコンサルティング

          防音事例をブログで伝える

          新築やリフォームを計画されている施主や音楽防音室の依頼者に伝えたいことは沢山ありますが、一つ一つ順番に詳しく説明することは、ホームページでは殆ど出来ません。 経年的に増えていく現場の事例や分析された防音効果の要因を詳細に解説することは、ウェブサイトの固定ページでは無理です。 そこで、説明するための主力ツールをブログに絞り、投稿してきた記事を主なテーマごとにまとめて、入口ページとして作ったのが先日ご紹介したウェブサイトです。→木造の音楽室・防音室 ブログの長所は、速報的な事

          防音事例をブログで伝える

          理論式と現場の防音効果

          机上の理論式や製品データによる防音効果の想定が現場の実測値と乖離することは、よくあることです。 それは現場の建物構造や構造体の規模などによって防音効果が異なるのは当たり前の現象です。 理論式や製品データの試験体測定は、通常小さな区画で行われるため、区画の規模も試験体の拘束条件も実際の現場の施工条件と異なるので、音響透過損失(遮音性能)そのものが乖離します。 このため、古い計算式やメーカーの製品データをもとに遮音性能を算出することは、かなりリスクがあります。 大半の専門業者は

          理論式と現場の防音効果

          マンション界壁の防音構造

          この現場は、私の仕事場から遠方にある分譲マンションであり、私以外の防音専門業者が諦めた案件です。 それは金額の問題ではなく、界壁の梁型の出っ張り幅が戸境壁面から80ミリしかなく、他の専門業者が提示した防音構造がすべて180ミリの厚さがあったからです。すべての提案が梁型部分から約100ミリ飛び出てしまうため、非常に見苦しく、しかも既存の収納建具や隣接するカーテンボックスなどの造作をすべて壊さないと構築できない構造でした。 施主の希望する遮音性能は既存より15dB以上アップさ

          マンション界壁の防音構造

          新築木造ピアノ室の基本

          今まで他の投稿記事でもご紹介してきたように、木造ピアノ室、特に新築の推奨する建物工法は「木造軸組在来工法」です。 依然として、地方の現場では最も多い建築工法です。 関東方面でも、ピアノ防音室をプロ仕様の練習室または音楽教室として利用する場合は、軸組在来工法が多いのは、プロピアニストや音楽教室の先生が推奨する工法だからです。 私の運営する「防音職人」サイト経由で、軸組在来工法の依頼が多いのは、私の音響・防音設計手法が「木造軸組在来工法」を前提として説明している内容と、依頼者の

          新築木造ピアノ室の基本

          業界のコンパクト防音設計

          コンパクトな防音設計技術は防音職人が開発したものではありませんが、住宅及び木造防音室における「コンパクトな防音設計」は、私が開発した独自の設計仕様です。 歴史的に見ると薄型のコンパクト防音仕様は、車業界が先に開発しました。 防音職人は、これに機械工学と土木業界のメーカーが開発した防音材を組合せて、担当現場において、提携先に音響透過損失の精密測定を自腹で依頼して計測した結果を踏まえて、独自の仕様・施工要領を確立しました。 なので、主力の防音材メーカーは、建築業界とは別の業界

          業界のコンパクト防音設計

          遮音パネルと界壁の防音

          最近、通販でも「遮音パネル」という製品が沢山販売されています。 通常、硬質の遮音材によって加工されている製品が大半です。 他の記事でも「硬質系遮音材」について特徴を述べましたが、これを建物内部の界壁に使用すると、いくつかの問題が生じます。 それは、遮音材の材質の問題だけでなく、隙間が弱点となるパネル工法の宿命というような話になります。 なので、この隙間をどう考えて設計するか、どういう対象物の界壁に使用するのかという点が重要です。 同様の事例で、ALCパネル住宅があります

          遮音パネルと界壁の防音

          木材と防音材の多層構造の設計仕様

          防音職人は、今年の夏(8月15日)でちょうど、独立開業20周年になります。そして、その中で主力の防音設計理論を検証するのに10年かかりました。現在では「木材と防音材の多層構造」を構築する防音設計が標準仕様となったわけです。 この設計仕様(多層構造の理論)にたどり着くまでに、会社勤め時代から集めていた資料や、ネットのキーワード検索で沢山の古い事例を探しました。現在は、その大半がネット上から消えてしまったので、出典を探すことも不可能に近いです。 ですが、その古い資料の概要や断片

          木材と防音材の多層構造の設計仕様

          無垢杉材と木造ピアノ防音室

          出来るだけ天然素材でピアノ防音室を造りたいという想いには、いくつかの理由があります。 海外では普通に木材が多用されて、殆ど防音材を使用しないピアノ室を木造で構築します。 日本の場合は、木材資源が豊富な国であるにも関わらず、「防音室」という言葉を意識しすぎて、「木材は防音に弱い」と思い込み、間違った方向へ走ってきたという反省が、我々専門家にはあるように思います。 しかもピアノ防音室に必要な補強材として構造用合板がありますが、接着剤を使用した合板類を、健康上の理由で使えない施主

          無垢杉材と木造ピアノ防音室

          施主は直接専門家(防音設計)と契約すべき

          最近、新築設計を担当する建築士が施主の意向を適正に反映させることなく、防音設計の計画書を受取りながらも、施主に説明する前に勝手に確認申請作業や見積を作ろうとした事例がありました。 私は計画書(提案書)について、詳しい質問を聞かれたので不審に思い、施主と相談して了解を取るように返事しました。その後、何も連絡がなく、施主の返事も確認できていません。 今回のような事例は、実は過去に何回も有り、繰り返し、建築士に施主と直接話しをさせてくれと要望して、初めて施主が事情を聞いていなか

          施主は直接専門家(防音設計)と契約すべき

          木造防音室と固体音・制振材

          今までの投稿記事において、固体伝播音の抑制には制振材が不可欠であることを述べてきました。 特に床と壁を共振させる楽器の木造防音室においては、制振材および構造体の多層構造が相乗効果を出すことを多くの実例の中で体感・計測してきました。 木造建物における固体音の制御は、音楽防音室としての音響調整において重要な役割を持ちます。 例えば、グランドピアノやチェロなどの楽器は床に強いインパクトを与えるため完全遮断することが最適と考えられますが、実はそうではありません。 「適度に音を響かし

          木造防音室と固体音・制振材