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木造防音設計の間違った情報

グーグルなどでキーワード検索すると、木造の防音設計に関する間違った情報が出てきます。
例えば「木材は振動を伝えやすく、音が伝わりやすい性質を持っています。 音は空気や物質を振動させて伝わってきます。 そのため、振動しやすいものであるほど、音漏れしやすくなります。 鉄筋コンクリートは振動しにくく音が伝わってきませんが、木材は振動しやすいため音が伝わってしまうのです。」というテキストが出てきます。
この説明は、かなり間違っています。

振動音など固体伝播音と空気伝播音について

木材はコンクリートよりも固体音を吸収するので、少し音の伝播が緩和されます。それに対してコンクリートは軽量衝撃音を瞬時にそのまま拡散させて伝播します。基本的に木材よりも硬い鉄・コンクリートの方が固体音を早く伝えます。空気音より固体音のほうが速く伝わります。
*木材は石膏ボードやALCなど硬質遮音材よりもコインシデンスが緩やかで吸音性があるという特徴を持っています。

また、振動音など固体音には軽量衝撃音と重量衝撃音があります。
*重量音は、木造もコンクリート構造も剛性を高くすると軽減されます。
空気伝播音は、コンクリートのほうが遮音性が高いです。木造もある程度の厚さがあって、つなぎ目が適性に封じられていれば十分な遮音性能を確保できます。つなぎ目のない厚さ20センチの木材は、厚さ20センチのコンクリート躯体と比較しても、空気音の遮音性能は遜色のないものです。

要は材質に応じた防音構造を構築すれば、単純比較して性能が劣るような状況にはなりません。正しい防音設計を、建物構造に応じて作成できるかどうかで性能に差が出ます。
通常の戸建住宅であれば、木造でもコンクリート構造でも設計次第で必要な遮音性能を確保できます。ちなみに、木造よりもコンクリート構造のマンションのほうが固体音(振動音、衝撃音)の生活騒音のクレームが多いのは、構造体の特性によるものであり、その性質を考慮した対策設計がされていない場合、空気音より固体音のクレームが増えます。

持ち家を求めているユーザーは、住宅の中でマンションが必ずしも遮音の面で有利とは言えないことに注意して下さい。

厚さ15センチのコンクリート構造と木造の遮音性の優劣

同じ厚さの壁の構造体の遮音性能について、建築士や専門業者に質問すると大半の人が「同じ厚さであれば、コンクリート構造の壁のほうが遮音性能が高い」と答えます。
私の場合は、防音設計の内容によって、両者の優劣は逆転する場合があると答えています。
それは、コンクリート躯体厚さ15センチの遮音性能はD-45からD-50程度です。これに対して、私が設計している新築の木造防音室の外壁側の遮音性能はD-50であり、同じ厚さ(外壁の外装材+内部の軸組+室内側の内装壁)の設計仕様でも、コンクリート住宅の外壁の遮音性能を上回る場合があります。外装材+軸組内部の吸音断熱材+石膏ボード+内装を含めた遮音層という構成で造れます。

木造の遮音性能は外壁面の外装材と軸組内部の吸音断熱材によって大きく変化します。新築の場合は、計画的に設計仕様を調整すれば、薄型防音壁(室内側)の設計仕様でも対処できます。

木造の防音設計に関するネット情報

ネット上の木造の遮音設計(防音設計)に関する記載内容は、出典が明らかになっていないものが殆どです。
設計事項や事例に関する根拠となる出典が明記されていないので、鵜呑みにするのはかなりリスクがあります。

大半の情報が他のサイトからの無断流用や切り貼りであるため、根拠が確認されていないのです。それは、今までの記事でも触れたように「木造の遮音設計マニュアル」が存在していないからです。
なので、新築木造の生活防音や防音室の設計を担当する建築士やエンジニアは、自力で設計仕様をクリエイトする必要があります。

また、市場に出ている防音材の中で、木造に最適な製品を選ぶ判断基準や事例がウェブサイトの中に公表されていないため、分析すること自体が非常に難しく、実践経験のない業者には理解されていない世界です。
それが現在の専門業者の業界の実情です。

一番問題なのは、人様の大事なコンテンツを無断流用して、出典も明記しないで勝手に切り貼りしたり、コピーして自分のホームページに使うことです。私は自分のコンテンツが部分的に流用されていても、すぐに分かります。それは大事な自分のオリジナルコンテンツだからです。
そのような背信行為を平気でする専門業者のウェブサイトを、貴方は信用することが出来るでしょうか。
*関連記事:木造の防音設計とコインシデンス

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