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防音職人の防音設計スタイル

明日8月15日の独立開業記念日「20周年」を控えて、改めて今までの防音設計に取り組んできた設計手法や研究スタイルについて振り返ってみました。

防音職人のホームサイトを作ったときのコンセプトは「既成の設計手法や既製品の性能を鵜呑みにしない」「担当現場の効果を検証しながら防音設計の仕様を決める」「伝統的な古い事例や工法に学びながら木造音楽室の構築に活かす」この3つが屋台骨だったと思います。

大学の研究室の恩師から研究開発は自分の目で体で感じながら独自の視点を大事にするというスタンスを学びました。これが独立開業したときの方針に大きく影響を与えています。
オリジナルの設計手法を開発するには、既存の設計手法のモノマネだけでは開拓できないという想いで、地道に文献資料や製品データ、事例のレポート、木造などの伝統的工法の知恵などを探りました。一人でコツコツと積み上げたので、基本的な設計仕様を確立するのに10年かかり、さらに担当現場の検証を加えて、木造の薄型防音仕様やマンションの天井防音仕様などの新しい技法も生み出すことが出来ました。

既成の設計手法や既製品の性能を鵜呑みにしない

多くの専門業者や建築士が現場で失敗する事例を目の当たりにして、既成の設計手法や製品に疑念を持っていました。
問題の分析を進めるうちに、設計仕様と施工要領そのものが間違っている部分も検証できました。

今までの経験では成功事例よりも失敗事例のほうが多くを学ぶことが出来ました。防音相談を通じて、施主や建築士からの相談内容からも多くの手がかりを掴むことができて、仕事場での相談業務を通じて、貴重な情報を得ることが出来たのです。

もちろん、防音材以外の既製品の中に有望な建築材を見つけることが出来たのも幸運でした。まさに理想とする防音材と木材・木製品の相乗効果に繋がりました。他の専門業者が想定していなかった一般的な建築材の活用が、「木造音楽室・防音室」の標準設計や薄型防音仕様の開発を生み出しました。
私は防音相談において、施主や建築士の体験談や情報提供を生かしながら、自分の資料としてストックしました。取引先メーカーからも内部資料の提供をいただいたことも、重要な検証材料となりました。

一方で、メーカーが行う「小さな試験体・区画の音響・透過損失の試験データ」に大きな問題があることに気づきました。これを見逃してきた専門業者が薄い防音構造の設計施工が出来ない理由も理解できました。
*小さな試験体の性能データは大きな区画の現場の効果と乖離するのは当然の事だったのです。

担当現場の効果を検証しながら防音設計の仕様を決める

自分が開発した防音設計仕様と施工要領は、実際の現場で計測したり、施主の体感報告を勘案して最適化する作業が必要でした。
この地道な作業には約10年以上かかり、現在の色々な現場の報告を受けながら補正できる点を探し続けています。

机上の設計理論と現場の効果は、乖離することを前提にして、補正して行く作業が大事です。
一つの木造防音室の現場で施工したから終わりではなく、一つの検証材料として考察することが重要です。

建物構造や断熱材などの設計仕様によっても防音効果には差が出ますので、新築の設計内容に応じて臨機応変に補強したり、防音設計の仕様を補正することになります。

伝統的な古い事例や工法に学びながら木造音楽室の構築に活かす

とくに木造の音楽防音室を設計・施工するにあたり、軽視されがちな伝統的な木造工法や材料に着目することで、音響と防音効果のバランスの取れた音楽室を構築することが出来ました。

古い建築の知恵や伝統的な木材そして新しい木製品を活用することで、相性の良い防音材との相乗効果を生み出すことを重視して来ました。
*自分で伝統的な木造建築や和洋折衷型の住宅の見学に行き、自分の目で可能性に思いを馳せながら、活かすことができる構造・工法を探しました。

構造梁や化粧梁・板材などによる剛性補強と音響的な効果、音の減衰効果など木造・木材の可能性にも着目しました。

現在の提携先建築業者は、私の設計手法や考え方に賛同して業務提携を続けています。彼らも木造・木材そのものが好きなのです。

音響防音設計・コンサルティング+現場施工+現場調査と管理のシステムによる役割分担と協力体制により、東京・埼玉・千葉・神奈川方面の現場の実績を積み重ねてきました。
また、遠方の地方の現場には、私の設計書・施工説明書および専門的な防音材を納品することで、木造の音楽室・防音室の担当業務を実践してきました。現場の建築士や職人と協力して仕事を進めるのが私のスタンスです。


【追記】
文中の用語の使い方や意味、表現などを含めて、時々読み返して、記述ミスを含めて修正していますが、コメント欄で、ご指摘いただけると助かります。
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