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木材と防音材の多層構造の設計仕様

防音職人は、今年の夏(8月15日)でちょうど、独立開業20周年になります。そして、その中で主力の防音設計理論を検証するのに10年かかりました。現在では「木材と防音材の多層構造」を構築する防音設計が標準仕様となったわけです。

この設計仕様(多層構造の理論)にたどり着くまでに、会社勤め時代から集めていた資料や、ネットのキーワード検索で沢山の古い事例を探しました。現在は、その大半がネット上から消えてしまったので、出典を探すことも不可能に近いです。
ですが、その古い資料の概要や断片は、私が作ったウェブサイトのコンテンツや運営するブログの投稿記事の中に残っています。
*もちろん、私の頭の中の引き出しにも残っています。

現在、ネット上のウェブサイトの資料として、企業団体やメーカーが公開している製品の試験データが一部残っています。次の資料は内装材の吸音率ですが、これに加えて、先日投稿した杉材の資料として吸音率を測定した結果がネット上に存在していたのですが、今は見つからないようです。

内装材や杉材等の木材の吸音率は重要な音響・防音設計の資料です。特にピアノ室と相性の良い杉材の資料は貴重なものでした。杉材は針葉樹の中でも柔らかく、ヒノキよりも吸音率が高い素材です。ヒノキに比べて二次共振を抑えるという特性もあります。
昔の木造音楽室の板張りの床には、塗装されていない杉材が多用されていました。この建築材を使用するだけでも、音色が適度に伸びて、嫌な共振も抑えていたのです。

木材と防音材の多層構造による効果の分析は、上記に示したような一般的な建築材の基礎資料を分析することも含めて、地道な時間のかかる作業でした。
余談ですが、キーワード検索して防音設計に関するコンテンツをいろいろな業者のホームページで断片的に出てきますが、かなり私の「防音職人」のコンテンツの記述を切り貼りして無断流用しているページが少なくないです。

これは後発の防音業者が、先発の老舗のようなオリジナルサイトのコンテンツを無断流用するからです。要するに、防音設計がまともに出来る専門業者の実数は、かなり少ないと言えます。

木材と防音材の多層構造の基本

遮音・制振・吸音の3つの機能を複合化することが、標準的な多層構造の設計仕様の基本になっています。
専門業者の大半が、木材・木製品を「制振材・吸音材」から除外して考えているので、木材と防音材による多層構造そのものが理解できないのです。

木材・木製品の効果について、基礎的な製品や現場経験の分析に加えて、施工業者・職人などと情報交換しながら、有益な情報を収集して取り入れる必要があります。
防音材は専門的な製品だけではなく、多種多様なものがあり、一般的な建築材の中にも存在します。
古くは、伝統的な漆喰・土壁など左官職人が得意な素材もあり、現在でも自然素材を中心に音楽室を構築した実例も地方の現場にあります。

学ぶべき実例の情報も、ネット上に以前は存在していましたが、近年、多くのウェブサイトが閉鎖され、貴重な資料を見つけることが難しくなりました。なので、市販されている木造建築の本も重要な資料となっています。

木造防音の基本は、木材及び木製品、木造建物の中にあります。

多層構造の防音事例

典型的な事例の多くは、木造の音楽防音室です。特に、木造軸組在来工法の建物において構築された「ピアノ防音室」が代表的な事例となります。

ピアノ自体が幅広い周波数(低周波から高い周波数)の音を発する楽器であるため、単一素材による単層構造では対処できないからです。
また、遮音効果だけでなく、音響効果も含めた総合的な音響・防音対策を実施しないと木造建物の制約のある構造体や比較的小規模な空間に適用できません。※分厚い防音構造によるマスで対応する方法は、木造建物には適切な対策とは言えません。

私は、プロのピアニストなど音楽家や、音楽教室の先生など依頼者や関係者から体験談や防音室完成後の生の声をたくさん頂戴して、貴重な経験・資料として活用させていただきました。
他の業者が失敗した事例も、批判をするのではなく、反省材料として、重要な資料として日常的な「防音相談」の中から情報を得ていました。

沢山の事例や情報、専門的な資料などを勘案して、防音職人独自の「多層構造の設計仕様」を作ってきました。
これからも、実例・現場から謙虚に学んで行きたいと考えています。

木材と防音材の多層構造は、合板や無垢材を含めた建築材、および専門的な防音材を組み合せることによって進化していく可能性があると思います。

しかし、一緒に多層構造の防音効果を検証していたベテラン技術者が、このテーマとなる主力業務から引退してしまい、取引先メーカーの代表者も世代交代が起こり、防音材の研究に消極的となりました。
このため、新製品の開発は余り期待できず、現時点で生産されている防音材や一般建材を効果的に組み合せることが、主な課題になっています。

防音職人では、引き続き有益な情報収集と担当現場の分析を行っていく方針です。随時、関連情報をこのブログでご紹介したいと思います。

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