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青春の後ろ姿#34 〜20代は、清志郎と、バイクと、文学以外に何もありませんでした〜源氏物語絵巻「柏木」1

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 源氏物語絵巻の中で、とても印象に残っているものがあります。それは「柏木」巻の有名な絵です。
 すっかり年をとった光源氏が女三の宮との子、薫を抱く絵です。薫は実は女三の宮と柏木との間にできた子です。女三の宮の裏切りが発覚して激怒した光源氏は、不倫相手の柏木を睨みつけます。すると柏木は具合を悪くして亡くなります。
 当時の新進気鋭の研究者たちが、この視線の呪力をさまざまに論じた論考を何本か読ませていただいた記憶があります。
 さて、光源氏は、自分の子ではないとわかりながら薫を自分の子として抱きます。そして、かつて自分自身が桐壺帝(光源氏の父親)の中宮藤壺(光源氏にとって義母にあたります)との間に生まれた子、後の冷泉帝を、桐壺帝が抱きながら喜びながら「お前によく似ている」と話したことなどを思い出しながら、因果応報としか言いようのない若かりし頃の自らの罪の深さに思いを巡らせます。薫は光源氏の罪のメタファでもあります。個人的にはこのシーンが『源氏物語』の一番のクライマックスだと思っています。

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