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Strange Fruit 2 #19

 けれど、文学の世界を僕に教えてくれたのは、実は、姉だった。村上龍の「限りなく透明に近いブルー」は、中学生だった僕にはあまりにも鮮烈すぎたが、それも姉の本棚からこっそり抜いて読んだものだった。
 又吉栄喜の「ギンネム屋敷」も、高校時代に姉の本棚から盗んだものだ。文学、思想哲学がらみのことをたまに聞いても、ほぼ知らないことはなかった。
 RCサクセションをはじめに聴いていたのも、実は、姉だった。
「あの人は、ほっといたらひと晩中でもライブハウスで歌い続けるような人やからね」
と、忌野清志郎のことをまるで友だちを紹介するみたいに知ったかぶりして言った。僕が中学を卒業した春休みに、福岡サンパレスにRCサクセションのタダ券ライブに行こうと思ったのも、姉の持っていた「シングルマン」と「ラプソディ」のLPをこっそり聴いていたからだ。あの声に、僕はシビれた。

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