双京知的財産事務所

企業の知財法務部で培った知的財産/関連法務の知識・経験を活かし、特に中小企業様向けに、…

双京知的財産事務所

企業の知財法務部で培った知的財産/関連法務の知識・経験を活かし、特に中小企業様向けに、経営に直結する知的財産連サービスを提供しています。 行政書士法人を併設。許認可等の業務も行っています。 ホームページ:https://soukyo.jp/ Twitter :soukyoip

最近の記事

個人情報の漏洩をしてしまった場合に行うべき2つのこと

はじめに個人情報の漏洩が発生した場合やそのおそれがある場合には、個人情報保護法に基づく迅速かつ適切な対応が求められます。ここでは、漏洩が発生した際に取るべき2つの対応と、報告対象となる漏洩の事例について解説します。 個人情報の漏洩とは?個人情報の漏洩とは、第三者に対して個人情報が不正に開示されたり、意図せずに閲覧されたりすることを指します。具体的には、以下のようなケースが該当します。メールの誤送信による情報漏洩は、日常業務で非常に起こり易いものです。 ・不正アクセスに

    • トヨタ子会社、下請法違反で公取委から勧告を受ける

       2024年7月5日、公正取引委員会(以下「公取委」)は、株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメント(以下「TCD」)に対し、下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」)に違反する行為が認められたとして、勧告を行いました。本記事では、TCDが行ったどのような行為が下請法違反と判断されたのか、またその根拠条文や同社の対応について説明します。 1.下請法とは?  下請法は、下請取引の公正化と下請事業者の利益保護を目的として定められた法律です。  親事業者(本件の場合、T

      • 商工会議所LOBO調査(2024年6月)が公表されました

        2024年6月の商工会議所LOBO調査が公表されました。 同調査によると、日本全体の業況DI(業況判断指数)は前月比4.8ポイント悪化し、マイナス16.2となりました。この悪化の背景には、物価高による消費低迷があり、特に中小企業においては厳しい状況が続いています​。 中小企業の景気動向 中小企業は、大企業に比べて資源・原材料価格の上昇や賃上げ、輸送費の増加などのコスト増を吸収するのが難しく、そのため、これらの影響を受けやすいという事情があります。特に、建設業や卸売業では、

        • 不正競争防止法等の改正ポイント

          2023年7月1日、デジタル時代に即した知的財産の保護と手続の効率化を目的として、改正不正競争防止法等が施行されました。本改正は、特に中小企業やスタートアップにとって有益な内容となっています。以下に各項目について詳しく説明します。 限定提供データの保護強化 背景 自社で秘密管理しているビッグデータを他者に提供する企業が増加しています。しかし、改正前の不正競争防止法(不競法)では、秘密管理されていないビッグデータ(地図データ、消費動向データ等)のみが保護対象となっており、

        個人情報の漏洩をしてしまった場合に行うべき2つのこと

          循環経済(サーキュラーエコノミー)の実現に向けた中間報告が公表されました

          経済産業省は、日本での循環経済(サーキュラーエコノミー)の実現・強化に向けた「成長志向型の資源自律経済戦略の 実現に向けた制度見直しに関する 中間とりまとめ」を発表しました。 1. 将来の資源枯渇の問題 日本は資源自給率が低く、多くの資源を輸入に依存しています。国内での資源確保が難しい状況にあり、特に石油、天然ガス、レアメタルなどの資源については、輸入に大きく依存しています。 また、世界的な資源需要の増加、特定の国への供給集中による地政学リスク、廃棄物処理の困難性、資源

          循環経済(サーキュラーエコノミー)の実現に向けた中間報告が公表されました

          2024年版「中小企業白書」が公開されました

          2024年5月、中小企業白書(2024年版)が公開されました。 この記事では、中小企業の事業承継、海外展開、人材不足対策、デジタル技術の活用に焦点を当て、その概要を纏めています。 中小企業の事業承継の傾向 取り巻く環境 中小企業の多くが後継者不足に直面しています。2018年をピークに減少傾向にあるものの、2023年の後継者不在率は54.5%と高いままです。 また、中小企業庁が公表したデータによると、2025年までに約245万人の経営者が70歳に達する見込みであり、経営者の

          2024年版「中小企業白書」が公開されました

          2024年1月-4月の中国知的財産権統計データ

          国家知識産権局戦略規画司が2024年5月13日付けで発表した、中国知的財産権統計データ(2024年1月-4月)の概要です。 1.特許 発明特許 認可件数: 36.2万件 有効件数: 527.4万件(国内: 428.7万件) 実用新型特許 認可件数: 60.1万件 有効件数: 1225.6万件 意匠特許 認可件数: 21.1万件 有効件数: 328.9万件 PCT国際特許出願 受理件数: 2.11万件(中国国内からの出願: 1.92万件) ハーグ条約に

          2024年1月-4月の中国知的財産権統計データ

          日本の若手クリエイター支援事業開始、その効果と課題

          はじめに 文化庁は、若手クリエイターやアーティストを支援するための文化芸術活動基盤強化基金「クリエイター等育成・文化施設高付加価値化支援事業(クリエイター等育成プロジェクト支援)」の採択事業者を公表しました。 https://www.bunka.go.jp/shinsei_boshu/kobo/94035101.html この事業は、国内文化施設の機能強化と日本のコンテンツ産業の国際競争力向上を目指すことを目的とするものです。 日本のコンテンツ産業は、韓国、米国、中

          日本の若手クリエイター支援事業開始、その効果と課題

          アドビ、サブスクリプションサービスに関し米司法省から訴訟を提起される

          アドビ株式会社(Adobe Inc.、以下「アドビ」という。)は、2024年6月17日(現地時間)付けで、米国司法省(以下、「DOJ」という。)から訴訟を提起されました。 米国連邦取引委員会(以下、「FTC」という。)からの通知を受けたDOJは、アドビがそのサブスクリプションサービスに関連する詐欺的な行為を行っていると非難しています。この訴訟は、消費者保護と企業の透明性に関する重大な懸念を浮き彫りにしています。 訴訟の背景 アクロバット、フォトショップ、イラストレーターな

          アドビ、サブスクリプションサービスに関し米司法省から訴訟を提起される

          「中小企業省力化投資補助事業」の申請受付が開始しました

          中小企業省力化投資補助金とは? 中小企業等の売上拡大と生産性向上を支援するために設けられた補助金です。他の補助金と違い、非常にシンプルで効果的な制度となっています。 この制度は、労働力不足に悩む中小企業等がIoTやロボットなどの省力化製品を導入することで、すぐに効果を実感できるよう設計されています。 簡素な要件と高い補助率 中小企業省力化投資補助金の魅力は、その簡素な要件と高い補助率にあります。 補助対象者は、こちらのカタログに掲載された省力化製品を導入し、申請をする

          「中小企業省力化投資補助事業」の申請受付が開始しました

          中小企業が気を付けるべき個人情報保護法について

          最近、外部からの攻撃や従業員のミスによる個人情報漏洩事件が多く報告されており、事業者による対策がますます重要になっています。特に中小企業では、情報の取り扱いミスが信頼の喪失や法的トラブルを招く可能性があります。 本記事では、「個人情報保護法」(正式名称:個人情報の保護に関する法律)で定められている事項のうち、個人情報を取り扱う事業者が日常業務で気を付けるべきポイントをまとめました。 個人情報とは?個人情報保護法では、内容や性質によって情報を「個人情報」「要配慮個人情報」「個

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          中小企業の事業承継:仲介業者とのトラブル増加と国の対策

          事業承継のニーズと現状 日本の中小企業では、経営者の高齢化が進み、後継者不足が深刻化しています。このような背景から、事業承継の重要性が増しています。 中小企業庁は、優良な仲介業者を選びやすくするために、3年前に仲介業者登録制度を設けました。2024年3月時点で3,000を超える事業者が登録しています​ (参考:中小企業庁サイト:https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2024/240313m_and_a.html) トラブ

          中小企業の事業承継:仲介業者とのトラブル増加と国の対策

          中小企業向け資金繰り支援の今後の展開について

          2024年6月7日、金融庁と財務省とは、「中小企業向けの新たな資金繰り支援策」を共同発表しました。経済産業省も同時に、中小企業と地域経済の活性化を目指した支援策を打ち出し、官民の金融機関に対して、コロナ資金繰り支援策からの転換を踏まえた支援の徹底を要請しました。 1.今後の中小企業向け資金繰り支援 コロナ関連の支援策は終了。ただし、コロナ禍の影響に苦しむ事業者への再生支援を強化。また、円安等の経済情勢で苦しむ事業者向けの制度も継続。 2.官民金融機関等に対する要請につい

          中小企業向け資金繰り支援の今後の展開について

          WIPO国際事務局(IB)へのDASアクセスコードの通知方法について

          特許協力条約(PCT)に基づく国際出願を行う際に、各国の基礎出願に基づく優先権を主張する場合、優先権書類の提出を省略することができます。 これを実現するためには、世界知的所有権機関(WIPO)の国際事務局(IB)にデジタルアクセスサービス(DAS)を利用して優先権書類を入手するよう請求することが必要です。以下では、その手続方法を解説します。 手続の概要PCT規則17.1(bの2)に基づき、DASを利用して優先権書類をIBに通知することで、書類提出の手間を省略することが可能で

          WIPO国際事務局(IB)へのDASアクセスコードの通知方法について

          知れば知るほど奥深い商標実務

          実際の使用商標と登録商標との同一性の重要性については、先の記事で触れましたが、今回は、指定商品・役務選択の重要性についても触れたいと思います。 以下は、2024年4月30日付けで審決が確定した、取消2022-300838(登録3329623)での判断の概要です。 1.背景取消審判の対象となったのは、商標「スターフィルド」です。 指定商品のうち、  第25類 作業服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,スカーフ,      足袋,足袋カバー,手袋,マフラー,耳覆い,腕カバー

          知れば知るほど奥深い商標実務

          登録商標をいじって使わない方がいい理由

          商標登録したのに安心できない?注意点を解説!自社の商品名やサービス名について商標出願をして、審査をパスして、登録になって、めでたしめでたし。本当にそれで安心なのでしょうか。 日本の商標法では、継続して3年以上使用されていない登録商標に対して、誰でも「登録の取り消し」を求めることのできる制度(不使用取消審判:商標法第50条)を設けています。 不使用取消審判を請求された場合、対象の登録商標の権利者(商標権者)は、その期間内に「登録商標を指定商品・役務に使用していた」ことを証明

          登録商標をいじって使わない方がいい理由