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不正競争防止法等の改正ポイント


2023年7月1日、デジタル時代に即した知的財産の保護と手続の効率化を目的として、改正不正競争防止法等が施行されました。本改正は、特に中小企業やスタートアップにとって有益な内容となっています。以下に各項目について詳しく説明します。

限定提供データの保護強化

背景
自社で秘密管理しているビッグデータを他者に提供する企業が増加しています。しかし、改正前の不正競争防止法(不競法)では、秘密管理されていないビッグデータ(地図データ、消費動向データ等)のみが保護対象となっており、早急な対応が必要でした。

改正内容
限定提供データの定義を拡充し、秘密管理されたビッグデータも保護対象に含めることとしました。これにより、高精度の地図データや消費動向データなど、企業が収集・分析したデータについて、営業秘密と一体的な情報管理が可能となり、企業は安心してビッグデータを活用できるようになりました。
※限定提供データとは、以下の3要件を満たすデータを言います(不正競争防止法第2条)。
(1)限定提供性: 業として特定の者に提供されること
(2)相当蓄積性: 電磁的方法で相当量蓄積されること
(3)電磁的管理性: パスワード等でアクセス制限がされていること

損害賠償額の算定規定の拡充

背景
営業秘密等の損害額の立証が困難であり、特に被侵害者の生産・販売能力を超えた損害額は改正前の不競法では認められていませんでした。

改正内容
侵害者に対して使用許諾料相当額として損害賠償額を増額できる規定を追加しました。これにより、中小企業が生産能力を超えた損害を受けた場合でも、侵害者に対してライセンス料相当額を請求できるようになり、適切な損害回復が可能になります。

使用等の推定規定の拡充

背景
改正前の不競法では、推定規定の適用対象が産業スパイ等の悪質性の高い者に限定されていました。

改正内容
推定規定の適用対象を拡充し、元従業員や不正な経緯を知らずに転得したがその経緯を事後的に知った者も対象としました。これにより、悪質性が高いと認められる場合には、より広範な適用が可能となります。
よって、例えば、元従業員が退職後に営業秘密を不正に持ち出した場合や、不正な経緯を事後的に知った新しい雇用先がその営業秘密を使用している場合にも、推定規定が適用されます。

裁定における営業秘密を含む書類の閲覧制限

背景
改正前の不競法では、裁定関係書類は閲覧制限の対象外でした。そのため、第三者による閲覧による営業秘密の開示を回避するために、裁定手続き中の営業秘密の提出を控える事態が想定され、妥当な裁定判断が阻害される可能性がありました。

改正内容
裁定における営業秘密を含む書類の閲覧制限を可能とする改正が行われました。これにより、企業は営業秘密を含む重要証拠を安心して提出でき、妥当な裁定判断が期待できます。これにより、特許庁における裁定手続きで、営業秘密を含む書類が第三者に閲覧されることなく、適切な判断が行われることが保証されます。

国際的な営業秘密侵害事案における手続の明確化

背景
日本国内で事業を行う企業の営業秘密が海外で侵害された場合、民事訴訟での手続が不明確でした。

改正内容
日本国内で管理されている営業秘密に関する民事訴訟であれば、海外での侵害行為も日本の裁判所で提訴できる旨を明確化しました。これにより、企業は国内での裁判を通じて権利を守ることができます。
例えば、日本企業が管理する営業秘密が海外企業によって侵害された場合でも、日本の裁判所で日本法に基づき訴訟を提起し、損害賠償を求めることが可能となります。


これらの改正により、デジタル時代に即した知的財産の保護と手続の効率化が図られます。特に中小企業やスタートアップにとっては、ビッグデータの活用や営業秘密の保護が強化されることで、より安心して事業を展開できるようになります。

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