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日本の若手クリエイター支援事業開始、その効果と課題


はじめに

文化庁は、若手クリエイターやアーティストを支援するための文化芸術活動基盤強化基金「クリエイター等育成・文化施設高付加価値化支援事業(クリエイター等育成プロジェクト支援)」の採択事業者を公表しました。

https://www.bunka.go.jp/shinsei_boshu/kobo/94035101.html

この事業は、国内文化施設の機能強化と日本のコンテンツ産業の国際競争力向上を目指すことを目的とするものです。

日本のコンテンツ産業は、韓国、米国、中国等と比較して海外進出が遅れています。以下がその主な原因と言われています。

  • 国内市場依存:国内市場が大きいため、海外進出のインセンティブが低い。

  • 資金と支援の不足:海外進出には多大な資金が必要であるが、そのような資金力のない事業者が少なくない。また、継続的な支援ができていない。

  • マーケティング力不足:海外市場向けの効果的なマーケティング戦略が欠如している。

  • 言語と文化の壁:日本語や日本文化に対し、偏った理解を持たれている。言語面でニュアンスを正しく伝えられない場合がある。

本支援事業の概要

本事業は、若手クリエイターやアーティストの発掘、育成、制作、海外展開を一体的に支援するものです。採択された団体への支援は、「委託型」と「補助型」の2つに分かれ、継続的なサポートが提供されます。

採択された団体・事業者の傾向

  • 音楽:13件応募、4件採択

  • 舞踊:12件応募、3件採択

  • 演劇:37件応募、5件採択

  • 伝統芸能・大衆芸能:10件応募、3件採択

  • 舞台芸術等:2件応募、1件採択

  • メディア芸術:多くの応募があり、多様なジャンルで採択

具体的な支援事例

  • 国際音楽祭での新作初演:若手音楽家の国際舞台での育成。

  • ニコニコ動画主催企画:若手クリエイターの発掘と海外進出支援。

  • KYOTO EXPERIMENT:次代のクリエイター育成と国際的な舞台提供。

期待される効果

  • 国内文化インフラの強化
    博物館、美術館、劇場などの文化施設の機能を強化し、若手クリエイターの育成と活動拠点を提供します。

  • 若手クリエイターの育成
    国際的な舞台で活躍できるよう、専門家のアドバイスや海外フェスティバルへの出品を支援します。

  • 日本文化の国際的な評価向上
    海外公演や展示を通じて、日本文化の魅力を世界に発信し、国際的な評価を高めます。

支援事業の課題と限界

  • 短期的な解決の難しさ
    これまでの支援策は短期的なものが多く、根本的な問題に対する長期的な解決には不十分。例えば、韓国政府は、K-POPや韓国ドラマの海外市場進出を長期的に支援している。いまも、大韓貿易投資振興公社(KOTRA)や韓国文化院などの機関がプロモーションを行い、コンテンツの輸出を支援している。

  • 継続的な資金と支援の不足
    一時的な支援に留まり、継続的な資金が確保されていない。

  • 包括的なマーケティング戦略の欠如
    海外市場向けの効果的なマーケティングキャンペーンが不十分。事業者や業界個々のマーケティング戦略ではなく、国としての戦略が不十分。

  • 現地パートナーシップの欠如
    海外の文化機関や企業との連携が他国と比べて弱く、現地でのサポートが不足している。

課題を解決するための方法の提案

  • ターゲット市場の選定と分析
    国が先頭に立ち、海外市場のニーズや競争環境を詳細に分析。その上で、日本「国」として、海外市場での戦略的なポジショニングを行う。

  • 現地パートナーとの連携
    現地の文化機関や企業と日本が積極的に連携し、ネットワークを活用する。また、現地でのサポート体制を強化する。

  • デジタルアーカイブの活用
    デジタルコンテンツの活用を強化し、オンラインでのプロモーションを展開する。

  • 長期的な支援プログラムの設立
    単発や単年度ではなく、継続的な資金と支援を提供する政策を構築する。

  • プロモーションとブランド構築
    海外市場向けのプロモーション活動を国主導で強化し、効果的なマーケティングキャンペーンを展開する。

いずれも、数年スパンでの計画・戦略の立案と、国主導での一丸となったコンテンツの海外展開が肝要と考えます。

結論

日本の若手クリエイター支援事業は、国内文化インフラの強化と国際的な評価向上に向けた重要なステップです。
しかし、現行の支援策には、長期的支援の欠如や包括的なマーケティング戦略の不足などの課題があります。持続的な支援と戦略的なアプローチを強化することで、日本の文化関連事業者が効果的に海外進出を果たし、国際的な競争力を高めることが期待されます。

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