sotoboriumeko

今をときめきたくない研究者のたまご。ときどきライター。

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    母になった博士院生、久しぶりの日記です。

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    東京での暮らしで見・聞・感じたあれこれ。

記事一覧

またたく毎日 ー序ー

noteから席を外している3年の間に、結婚・妊娠・出産を経験した。 妊娠出産は稀有な経験であったけれど、思ったほど「自分」という人間は変わらなかった、というのが正直…

sotoboriumeko
5年前

スパークの、一歩手前

3連休の最終日、いい天気でしたね。 先週から東京は春らしい気候の日が増え、まちゆく人の服装のトーンや素材もだいぶ軽やかになってきました。 行楽者たちをわき目に、…

sotoboriumeko
8年前
1

気配を感じて振り向いたらきっともう、春は私のすぐ後ろにいるのだろう。黒タイツが好きだから、春よもうちょっと待っておくれ。急いで肌を磨くから。ストッキングの季節はもうすぐそこ。

sotoboriumeko
8年前

敵わないなぁ、への飢え

フリーランスのライターをしているシェアメイトから突然1枚のショップカードを渡された。 「あのね、明日から日本酒バーを開くことにしたの」 10月に移ったシェアハウ…

sotoboriumeko
8年前
1

教えることと学ぶこと

新年の高揚感が少し落ち着いたこの時期、大学は集中講義シーズンを迎える。 私は昨日から3日間に渡る集中講義のTA(ティーチング・アシスタント)を務めるべく、所属大学…

sotoboriumeko
8年前
1

めざせ、3歳児

わたしより7つほど年上の、ときたまこぼれる関西弁がチャーミングな彼女は言う。 「年を重ねるとね、物事のとらえ方が驚くぐらいシンプルになっていくんだよ。人を好きに…

sotoboriumeko
9年前
1

宝箱をかかえて

連休最終日に引越しを控えて、今日は朝から人生6度目の荷造りに勤しんでいる。大学入学を機に一人暮らしを初めてちょうど10年。その多くは進学など必要に迫られてする引越…

sotoboriumeko
9年前
1

人生のもぐらたたき

大学図書館の蔵書は研究に係る専門書が中心だから、文芸書を読みたいときは区立図書館やその分館など公立図書館に足を運ぶ。以前は、目に付いたものすべてを購入していたけ…

sotoboriumeko
9年前
2

命の次に大事なものは?と訊かれたら迷わず本を挙げる。この10年で蔵書は200冊をゆうに越えた。
本との別れは、自分の右腕をもぎるような痛みを伴う。けれど、新しい風が吹き込むためには、やっぱり心にも本棚にもスペースが必要。
私の20代を支えてくれてありがとう。きっとまた、どこかで。

sotoboriumeko
9年前
1

深夜のおみくじは悲喜交々。
大吉!全方位オールオーケイ!と言われてしまうと逆に不安になるのは、人間が本質的に不幸や苦しさの対比のなかに相対的な『幸せ』を感じる生き物だからなのかもしれない。ほんとうは、私たちは生きているだけで、驚くほど満たされているというのに。

sotoboriumeko
9年前
1

夏に溺れよ

sotoboriumeko
9年前

「幸せ」ってあるときは植物のかたちをしていたり、人のかたちをしていたりと、いつもかたちが違うからおもしろい。時には目に見えないものだったして、あやうく見落としそうになる。日常にじっと目を凝らして、ひとつ、ふたつ、と幸せを数えてるうちに、人生のゴールテープを切れたら最高。

sotoboriumeko
9年前
2

『あんた、10年も大学に行って親のスネかじって研究して、おまけにライターとかもしてるらしいけど、結局あんたの武器ってなんなの?人に誇れるものとか、譲れないものとかあんの?』

そんな風にnoteに聞かれてる気がして、ドキッとしちゃう銀座線。

sotoboriumeko
9年前

その名を聞く機会も増えた若手研究者の講演会。終演後、サインを求める人の列がぶわーってできて、高揚感が一気にしぼむ。興奮したご婦人に「あなたもサインしてもらったら?』と言われたけど、同業の人にサインをもらうのはままごとみたいで滑稽だから丁重にお断りしたりして。よって記念撮影も回避。

sotoboriumeko
9年前

この半年、28年間でいちばんの長考状態にある。もがき苦しむ毎日は終わりのないトンネルのよう。
長い暗闇の中で掴んだのは「いまの私の悩みがいつか誰かの役に立つとしたら?」という発想の転換。それなら悩み尽くそう。苦悩すらも味わい、咀嚼し、血肉にすることが出来たら、私の勝ちだ。

sotoboriumeko
9年前
2

スーパーで食材を吟味するかのごとく大型書店の書棚を眺めたり、初めて行くまちの小さな古書店で一期一会の出会いに心躍らせたり。帰り道、本を抱えて浮足立つ感覚は子どもの頃のままだけど、大人になったわたしは、寄り道して冷たいビールを飲みながら、ふわふわと本の世界を泳ぐのが最高の贅沢。

sotoboriumeko
9年前
2

またたく毎日 ー序ー

noteから席を外している3年の間に、結婚・妊娠・出産を経験した。

妊娠出産は稀有な経験であったけれど、思ったほど「自分」という人間は変わらなかった、というのが正直な感想。その時々のプライオリティは変化しても、やっぱり研究が好きだし、追い求める研究テーマや関心事はあまり変わらなかった。ただ「角度」はかわったかも。いずれにしても、私には、出産は「ビックバン」にはならなかった(笑)

まだ博士課程に

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スパークの、一歩手前

3連休の最終日、いい天気でしたね。

先週から東京は春らしい気候の日が増え、まちゆく人の服装のトーンや素材もだいぶ軽やかになってきました。

行楽者たちをわき目に、私はひとり大学の研究室にこもっています。私は最近では日本人よりも外国人のほうが多くなった観光地に住んでいるのですが、窓の外から聞こえるにぎわいに家から出るのにはだいぶ勇気がいりました。

こんな日には、私だって休日らしくまちを歩いたり、

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気配を感じて振り向いたらきっともう、春は私のすぐ後ろにいるのだろう。黒タイツが好きだから、春よもうちょっと待っておくれ。急いで肌を磨くから。ストッキングの季節はもうすぐそこ。

敵わないなぁ、への飢え

フリーランスのライターをしているシェアメイトから突然1枚のショップカードを渡された。

「あのね、明日から日本酒バーを開くことにしたの」

10月に移ったシェアハウスはお酒が苦手な子も多く、ウチ飲みの機会は限られていたのだけど、ミネラルウォーターもワイングラスで飲むぐらいにはお酒が好きな女子がいて、リビングで居合わせれば、どちらからともなく酒瓶を持ち出しては杯を交わしたりしていた。それが冒頭の子だ

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教えることと学ぶこと

教えることと学ぶこと

新年の高揚感が少し落ち着いたこの時期、大学は集中講義シーズンを迎える。

私は昨日から3日間に渡る集中講義のTA(ティーチング・アシスタント)を務めるべく、所属大学の別キャンパスにせっせと通う日々だ。

ふだんは起きる時間も研究する時間も気ままな大学院生のわたし。(そのへんの大学生よりも自堕落…)そんな生活に慣れきった身体に連日の早起きと長時間労働はだいぶ堪える。

集中講義は学生にとって、1日の

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めざせ、3歳児

わたしより7つほど年上の、ときたまこぼれる関西弁がチャーミングな彼女は言う。

「年を重ねるとね、物事のとらえ方が驚くぐらいシンプルになっていくんだよ。人を好きになることだって、好きだから会いたい、好きだから一緒の時間をすごしたい。ただ、それだけのことやなぁって気がついて。理由なんてあれこれひねり出す必要、ないんだよね。20代の頃はもっとあれこれ複雑に考えていたこともあったけど、この歳になって、だ

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宝箱をかかえて

連休最終日に引越しを控えて、今日は朝から人生6度目の荷造りに勤しんでいる。大学入学を機に一人暮らしを初めてちょうど10年。その多くは進学など必要に迫られてする引越しだった。迫る期日、新天地での生活に想いを馳せる余裕も、それまでの生活を惜しむ余裕もなく、ただただ慌ただしく片づけをし、荷物を積み、急ぎ足で去っていくばかりだった。

今回の引越しは、そういった迫られた引越しではなく、「よし、環境を変えよ

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人生のもぐらたたき

大学図書館の蔵書は研究に係る専門書が中心だから、文芸書を読みたいときは区立図書館やその分館など公立図書館に足を運ぶ。以前は、目に付いたものすべてを購入していたけれど、新居は5.5畳と狭く、いたずらに本を増やせないのだ。

平日の午後2時、昼下がりの図書館の閲覧コーナーは「満員御礼」でイスひとつ空いていない。雑誌を読みふけっている利用者の多くは、他の公立図書館と同様、団塊世代の男性が8割を占めていた

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命の次に大事なものは?と訊かれたら迷わず本を挙げる。この10年で蔵書は200冊をゆうに越えた。
本との別れは、自分の右腕をもぎるような痛みを伴う。けれど、新しい風が吹き込むためには、やっぱり心にも本棚にもスペースが必要。
私の20代を支えてくれてありがとう。きっとまた、どこかで。

深夜のおみくじは悲喜交々。
大吉!全方位オールオーケイ!と言われてしまうと逆に不安になるのは、人間が本質的に不幸や苦しさの対比のなかに相対的な『幸せ』を感じる生き物だからなのかもしれない。ほんとうは、私たちは生きているだけで、驚くほど満たされているというのに。

「幸せ」ってあるときは植物のかたちをしていたり、人のかたちをしていたりと、いつもかたちが違うからおもしろい。時には目に見えないものだったして、あやうく見落としそうになる。日常にじっと目を凝らして、ひとつ、ふたつ、と幸せを数えてるうちに、人生のゴールテープを切れたら最高。

『あんた、10年も大学に行って親のスネかじって研究して、おまけにライターとかもしてるらしいけど、結局あんたの武器ってなんなの?人に誇れるものとか、譲れないものとかあんの?』

そんな風にnoteに聞かれてる気がして、ドキッとしちゃう銀座線。

その名を聞く機会も増えた若手研究者の講演会。終演後、サインを求める人の列がぶわーってできて、高揚感が一気にしぼむ。興奮したご婦人に「あなたもサインしてもらったら?』と言われたけど、同業の人にサインをもらうのはままごとみたいで滑稽だから丁重にお断りしたりして。よって記念撮影も回避。

この半年、28年間でいちばんの長考状態にある。もがき苦しむ毎日は終わりのないトンネルのよう。
長い暗闇の中で掴んだのは「いまの私の悩みがいつか誰かの役に立つとしたら?」という発想の転換。それなら悩み尽くそう。苦悩すらも味わい、咀嚼し、血肉にすることが出来たら、私の勝ちだ。

スーパーで食材を吟味するかのごとく大型書店の書棚を眺めたり、初めて行くまちの小さな古書店で一期一会の出会いに心躍らせたり。帰り道、本を抱えて浮足立つ感覚は子どもの頃のままだけど、大人になったわたしは、寄り道して冷たいビールを飲みながら、ふわふわと本の世界を泳ぐのが最高の贅沢。