敵わないなぁ、への飢え
フリーランスのライターをしているシェアメイトから突然1枚のショップカードを渡された。
「あのね、明日から日本酒バーを開くことにしたの」
10月に移ったシェアハウスはお酒が苦手な子も多く、ウチ飲みの機会は限られていたのだけど、ミネラルウォーターもワイングラスで飲むぐらいにはお酒が好きな女子がいて、リビングで居合わせれば、どちらからともなく酒瓶を持ち出しては杯を交わしたりしていた。それが冒頭の子だった。
えええ、知らんかったよ。まじでビックリだよ。
面食らう私に、そっと差し出されたピンク色のショップカードは、これまた同じく商品パッケージデザインを手がける素敵女子(いつも笑顔でお料理上手)がデザインした素敵カード。
さらに、そのお店は不動産業に奉じているまたまた別のシェアメイトが管理している物件で、数ヶ月だけ物件が空いてしまうから、ということで酒好きの彼女にお声がかかり、あれよあれよと言う間に期間限定の日本酒バーを構える運びとなった。
彼女は去年まで会社員だった。
「いくらお酒が好きでも、会社に勤めてたら数ヶ月のために辞めること、できないじゃない。だからこれは本当にめぐり合わせ」
うん、そうだよね。
それでわたしは思うのである。敵わないなぁ。と。
その決断力、行動力、実現力。
同時にものすごく嬉しい気持ちになった。「敵わないなぁ」と思える人がいることや、できごとが身の回りにあることが、どうしようもなく嬉しい。
わたし、変、ですよね。
でもわたしはきっとこの「敵わないなぁ」に長らく飢えていたのだろう。誰かが、自分の予想を超えていく姿を見るのは、私にとっていちばんの起爆剤。負けた!とか、越えられない!とかじゃなく、おもしろいなぁ!と膝を打つこの感覚。
そして敵わないなぁ、にめぐり会うたびに思う。私にもその決断力あるだろうか、勢い、失っていないだろうか、と。
自分の中で乾いていた刺激への飢えがいっきに満たされていくのを感じる。
敵わないなぁ、は、ほんとうに気持ちがいい。
期間限定の日本酒バーは利き酒師でもある彼女がセレクトした20種類の日本酒が置かれるとのこと。さっそく、明日はおでん食べながらの熱燗です。
いいなぁ、勢いがあるって。
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