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僕は特撮が好きだ

僕は特撮が好きだ。
この言葉を初めて周りの人に伝えたのは僕が20歳になった頃だ。それまで特撮を好きである事を知らないふりしてまで、ずっと隠していた。
なぜなら僕自身も「特撮作品は子ども向け」と認識していたからである。

僕は高校生の時アニメが好きなA君が、いわゆる陽キャラと呼ばれるB君に「アニメなんか見てるの?なんかダセーな笑」と冗談まじりにいじられる姿を見た。
その時A君は「ハハハ〜そーかなぁ笑」と笑いながら返した。だが僕はその顔がなんとなく曇っているように感じた。
そして、もし自分ならどう返すのだろう。どう思うのだろうと考え、その結果自分は好きなものを隠し陽キャラのチームに属する事を決めた。

怖かったのだ。自分の好きなものを否定され学校での立場が悪くなる事が。
それから僕は他に熱中できるものを探しながら必死に自分の立場を守ろうとしていた。
正直苦しくはなかった。
これまで人と関わる事が苦手で部活の仲間や先輩にいじめられたり、その経験から一人ぼっちになり学校が嫌いになった過去を持っているから。

でもそんな時自分を支えてくれた映像作品それが『特撮作品』だった。
映像の中で主人公やその仲間たちが様々な困難に立ち向かい、挫折や失敗をしながらも諦めず戦い続ける姿に勇気を貰っていた。

そんな僕が人と関わる中でも好きなものを好きだと言えるようになったきっかけは、母の

自分が変われば人も変わる

という言葉だった。
初めはその意味を理解する事が出来なかった。
その言葉聞いた僕は、「周りの人に自分が合わせられるように変わる」という事なのだと思いそのように行動した。
きっとその行動も間違いではなかったと思う。その結果、初めて友達とカラオケに行った。初めて友達と食事をした。初めて放課後たわいもない話を日がくれるまで公園で話した。
その経験は僕にとってとても幸せで大切な思い出になっている。
だがどこかで、もっと正直に本当の自分を知る友達が欲しいと思っていた。


この気持ちを持ったまま僕は保育の専門学校に入学した。
入学当初はこれまで通り自分が特撮作品が好きな事を隠し、周りの人が好きなものが好きな自分を演じようと思っていた。
だが、学校生活を送る中で仲良くなった友だちは「俺はアニメが大好きなんだ!」
「俺はゲームが好きで夜寝ないでずっとやってるよ!笑」
「私はジャニーズが好きでどんなに遠くてもイベントに行くの!」
「私は友達とワイワイするのが好き!」
と自分の好きな事を隠さず伝えていた。そしてそれぞれが「それいいね!」とお互いの好きな事を認め合い、気の合う友達同士でより楽しそうに話をしていた。
僕はその光景にすごく驚いた。

自分の好きな事は言っていいんだ、そうすれば自然と気の合う友達と出会えるのだと。
その時母の言葉を思い出した。
「自分が変われば人も変わる」
この言葉の意味はきっと「自分に嘘をつかず素直でいれば関わる人も変わる」という意味なのだと今の僕は思っている。
もしかしたら母の伝えたかった意味と異なっているかもしれないが僕はそう理解し、結果社会人になった僕には趣味を理解し合い、お互いに好きな事を語り合える友達がいる。

まるで特撮の主人公が話が進むにつれて成長し、信じ合える仲間が増えていくように感じた。

高校生時代にできた友達には人と関わる事の楽しさを教えてもらい、専門学生時代にできた友達には素直でいる事の気持ち良さを教えてもらった。
そして母には、自分が自分のままでいていい素直に生きていれば、必ず楽しく生きて行ける事を教えてもらった。
僕はこれまで関わった全ての人が大好きだ。

そして今でも、特撮作品には勇気と楽しみをもらっている。
改めて言おう、僕は特撮が好きだ。

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