いつでもどこでも駆けつける、それがコンサルタント
コンサル会社への転職から半年が経った。個性があふれ出す同僚たちにも慣れ、随分と環境に適応してきたヒルズ氏。しかし、環境がいつまでも変わらない保証などどこにもない。そう、どこにもないのだ。(前回)
みなさん、久しぶりだな。相変わらず疲れ気味の私だが、今日からヒルズ日記、新章突入だ。楽しんでくれ!
◆豚骨ラーメンで始まる朝
「なんで、こうなったんですかね?」
豚骨ラーメンをすすりながら新人Boy氏がつぶやく。
ここは新橋の外れ。
時刻は朝4時になろうとしている。
あまりの空腹に吸い込まれたものの、徹夜明けに豚骨は重すぎた。平らげる新人Boy氏を見るに、彼の胃もまた新人なのだろう。
「だって今日、日曜ですよ?」
こんな爽やかじゃない日曜の朝、僕、初めてです。
新人Boy氏の愚痴に大きく頷く。私もだよ。土日徹夜ってのは今までもあったが、こんなにすっきりしない日はなかなかない。
それもこれも、売り上げ低下のせいかーー。
ため息をつき、煮卵を口に放り込んだ。
◆崩壊へのループ
稼ぎ頭の戦略策定支援専門チームから4人のコンサルタントが退職ーー。
全ての異変はここから始まった。
突然の退職宣言に怒り心頭の社長が「明日からもう来なくていい!」と叫んだことから、引継ぎゼロのまま主要メンバーは消えた。
コンサル会社では、優秀なコンサルタントほど退職時に客も移動しがちだ。会社との関係が悪ければ悪いほどに、あからさまなメンバー引き抜き&案件移動が発生する。私の日記を楽しんでいる皆様なら、弊社の社内人間関係がとっても"良好"であることはよくご存じだろう。
当然、チームは案件を失い危機的状況に。
つまり、弊社の経営も危機的状況に陥ったってことだ。
売上が落ちると何が起こるかわかるか?
無理な案件獲得、コンサルタント達の疲弊、質の低下、失注、さらなる無理な案件獲得ーー。ネガティブループのスタートだ。
次第に我がメディアチームも「まじ無理案件」に巻き込まれるようになっていった。そう、その案件の一つが、この朝4時豚骨ラーメンを引き起こしたのだ。
箸をおき、朝の出来事を思い出す。
◆押し売りコンサル
「いいですか、恩を売るのです、恩を!」
土曜の朝は、社長からの電話で始まった。なぜ朝からむさ苦しい声を聞かないといけないのだ。私の目覚ましは麗しのテイラー・スウィフトちゃんだというのに。
ぼんやりした頭で社長の声を聞く。
とはいえ、話の予想はついている。私の情報網を舐めるな。運転手の佐藤さんから、迫りくるリスクについての報告は受けているのだ。
佐藤さんからの心配メールによると、金曜夜、社長はいつもの如くクラブMに行き、旧知の仲の某飲料メーカーCEOと出会った。
「来週火曜がコンペなんですが、プレゼン資料の出来が悪くってね」
御社のコンサルタントをお借りしたいくらいですよーはは、と余計なことを言うCEO。社長の目が鈍く光る。
「よろしければお貸ししますよ!」
いやいや、コンサルフィーはまた今度でいいんです。コンペが通ったらその時考えましょうよ、ささ、今はカラオケでも、はっはっはっはっ、、、
「というわけで、昼前には相手先へ集合してくれ」
これは次の案件獲得に向けた営業活動なのです!必ずコンペを通すように!
ため息をつき、電話をきる。気の進まない活動だが、先方に約束してしまった以上は誰かが対応しないといけない。何より会社の収支が悪化していることは誰の目にも明らかだ。これで案件が取れるなら万々歳だろう。
社長がクラブMにいかなきゃ収支が回復するんじゃないか、という愚問が頭をよぎる。
ああ、愚問だ。
女(時々男)とギャンブルーー。ダメ経営者は、地獄に堕ちるまでやめないものと相場が決まっている。
家を出て、土曜の朝日に包まれる。
「今日は少し遅くなるかな」
甘い見通しを立てながら、客先へ向かったのであった。
(次へ)
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