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知らない業界にコンサルはどう対応するか

社長のごり押しで飲料メーカーのコンペ資料を修正することになったヒルズ氏たち。成功させ、次の仕事につなげることはできるのか。(前回


晴れた土曜の朝は、気持ちがいいもの。このまま川沿いを歩き、親子丼でも食べて帰りたいところだが、到着してしまったは某飲料メーカーオフィス。さてと、始めますか。

◆無知の知

「本日はよろしくお願いいたします」

いえいえ、こちらこそ。

ここは都内にある某飲料メーカーのオフィス。丁重に会議室に通される新人Boy氏と私だが、そもそも二人とも飲料についての知識など全くない。来社までのわずかな時間に企業情報だけはチェックしたが、採用面接にくる大学生の方が詳しいくらいだろう。

こんな時の切り抜け方はただ一つ。

開き直りだ。


着席するなり、切り出す。

「我々は飲料業界については素人です」

無駄に、そう無駄にキリッと言い切る。

「しかし、資料作成についてはプロフェッショナルであることを自負しております。知らないが故に、フラットな視点で見直しさせていただければと」

謎の圧を強め言い切る。
新人Boy氏も隣で自信オーラを発しだす。あぁ、お前はこんなことばかり学んでしまったのか。妙な罪悪感を感じるが仕方ない。

もちろん!
それこそが望んでいたことなのです!

予想通りの大歓迎が巻き起こる。

いや、実際のところ業界知識があった方が良いに決まっている。行き詰まると「まっさらな視点が必要だ」などと言う方がいるが、必要なのは更なる知識、人脈、資金の場合がほとんどだ。

苦々しい思いをこらえ、出席者を見据える。


◆企業トップの習性

やはり来ていないかーー。

言い出しっぺの飲料メーカーCEOはお休み。彼がコンペのプレゼンテーターと聞いているが、実際に話す人が来なくてどうやって資料修正するのか。さすがに社員の方々が不憫だ。

と、その時、我が携帯に着信が。

((しゃ、社長!?))

「あ、ヒルズ君?もうついてるかな?」

えぇ、会議室に入ったところです、皆様お揃いで、えぇ、、、え?スピーカー?スピーカーですか?い、今??え、えぇ、、、?


「皆さん、おはようございます!」

もう11時だぞ。という突っ込みをこらえ、携帯から流れる社長の声を聞く。ポカンとする疲れ切った飲料メーカー社員たち。

「今日は別件で出社しており、そちらに伺えなくて申し訳ない!しかし、弊社のエースを2人送りましたので、何卒こきつかってやってください!」

(( てめー出社してねーだろ? ))

苛立ちが募るが、仕方あるまい。
俺が手配したんだぞアピールがしたかったんだろう。なんという分かりやすく、そして浅はかなことか。

「「「誠にありがとうございます!」」」

純朴な飲料メーカー社員たちは信じてしまったではないか。コンサル商売とは一体なんなのか、こんな日は自らの生業に疑問を感じざるを得ない。


突然の社長挨拶で、我々2人のストレスレベルは爆上げ。

しかし気を取り直そうではないか。

もう、やるしかないんだからな。


◆資料を見ずとも

「一度、ざっと説明してもらえますか?」

責任者と思われる方がうなずき、プレゼン資料を説明しだす。200ページにわたるパワポ資料。だが、聞くまでもなく問題点は予想できていた。

会議室内人数、ざっと20人。

これだけの大人数が関わった資料だ、整合性が取れているわけがない。

案の定、
・言葉の定義があやふや
・説明が重複、破綻
・絵柄が
急に変わる

最後の絵柄問題だが、ちょっと変わるとかそういうレベルではない。途中までは「社員が作ったであろうパワポの図解」だったのが、急に「デザイン会社に頼んだ図」に変わる。これなら全部デザイン会社に頼めばよかったではないか?と思うが予算の関係なのだろう。

ため息をつき、ホワイトボードの前に立つ。

さあ、腕の見せ所だ。

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