ノベルゲームにおける演出指示の仕方を教えて? 答えはト書き(ノベルゲーム制作講座 36 テキスト編③)
ゲームシナリオでは、演出指示のト書きをテキストに直接書ける
演出指示を出すときみ、一人称視点であることを意識しよう
ト書きに頼りすぎないように。さまざまなメディアから演出論を学ぼう。
前々回の記事で、ノベルゲームの強みは
視覚的情報を立ち絵やイベントCGで、
聴覚的情報をBGMやSEで表現できることだと書きました。
実際のシナリオテキストでは、
表示したい素材や、素材を出すタイミングを
『ト書き』として、テキストファイルに直接書き込んでいきます。
■ト書きとは?
舞台台本に書かれた、
演出上の注意や舞台装置やSEの指示出し用のメモ。
ゲームの『テキスト』は演劇やドラマの台本に近いでしょう。
下記に例を載せました。さっそく読んでみましょう。
純一郎「新聞部には情報入ってないのか?」
レミ「し、知らねぇです。幽霊なんて非科学的なものがいるはずねぇですの!」
純一郎「声が震えてるぞ。もしかして苦手なのか?」
レミ「うるさいですのっ! いいからとっとと行くですのっ!」
純一郎「はいはい。わかりましたよ」
;※SE:教室のドアをノック
純一郎「ん? 誰か来たぞ?」
雪乃「はーい。開いてますよー」
;※SE:がらがらとドアを開ける
;※演出:チャイナ服・蘭の立ち絵が画面内に登場
蘭「やっほー。みんなまだやってるー?」
雪乃「蘭姉ちゃん♪」
ドアを開けて入ってきたのは、チャイナ服に身を包んだ蘭姉ちゃんだった。
手にはいつもの岡持ちを持っている。
純一郎「急にどうした? バイトの途中だろ?」
上記のように、
SEの演出指示を素材名も指定して直接台本に書き込みます。
前々回の記事で
「視覚的聴覚的描写を事細かく描写しなくていい」と書いたのはこのためで、ノベルゲームでは、画像や音素材を使って見聞きしたことを直接表現できるのです。
スクリプト(ゲーム的演出)は、このト書きを目安にして組み込みます。
積極的に『ト書き演出』を活用しましょう。
■ト書きに頼って、描写をおそろかにしてはいけない
ト書きが使えるからといって、
地の文(モノローグ)や描写をおろそかにしていいわけではなく、
特に視覚以外の情報は伝えるべきでしょう。
上記の例だと、蘭の立ち絵には『岡持ち』を持つ差分がなかったので地の文で補足しています。
公園の背景を表示しても、そこに子供が遊んでいるか、はたまた不良が喧嘩しているかは、描写するまでユーザーには伝わりません。
公園の木々の揺らぎ、駆け抜ける爽やかな風、キンモクセイの香りなど
五感に訴える描写を入れることで、ぐっと臨場感が増します。
ノベルゲームは、
主人公=ユーザーであり、想像の余地を残しつつ、
ビジュアルや音で情景を表現できるハイブリッドなメディアです。
ノベルゲームがもつ利点を活かして上手に情報を整理しつつ
テンポのよいシナリオを書くことを心がけましょう。
■ノベルゲームにおけるト書きの作法
演出を指示するのに必要なト書きですが、
フォーマットは開発現場、使用するシステムによって様々です。
執筆作業に入る前にディレクターに問い合わせましょう。
ここでは一例として、テキストをまじえて
イベントCG.BGM,SE、演出、アフレコ指示
のト書きをご紹介。参考にしてください。
ト書きの例)
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内勤ライターとして、美少女ゲーム業界で15年以上働いてきた経験と、そこで得たノウハウを文章にまとめています。ゲーム業界特有の謎規則や技術解説、仕事に取り組む際の心構えなどもご紹介。応援してくださると定期的に記事が更新されます(人間だもの)