お仕事開始してから揉めないよう、事前にテキストファイルの「仕様」を確認”しよう”ね(ノベルゲーム制作講座46 豆知識編④)
テキストファイルと一概に言っても、
エディターによって保存形式や容量が異なる。
ト書きは作業容量に含まれているのか。事前に確認しよう。
今回は、ノベルゲーム制作講座豆知識編にふさわしい
ノベルゲーム四方山話。ギャラのお話です。
くどいようですが
ここに書いたのは、あくまで一例なので
「そういう場合もあるよねー」くらいのニュアンスでご覧ください。
■テキストファイルにも種類があるってご存じ?
ノベルゲームの本文(物語や台詞)が書かれたファイルのことを
「テキストファイル」と呼びます。
テキストが書かれているデータファイル。
だから、テキストファイル。わかりやすい。
ですが、実はデータ保存形式によって、
ファイルの中身や容量が変わるんです。
ウィンドウズに標準搭載されているテキストエディター「メモ帳」は、
プレーンテキストのまま保存されます。
ですが、リッチテキストファイル
(マイクロソフトのWord、一太郎など文字装飾を行えるエディター)で
テキストを制作、保存を行うと、データ容量が膨らみます。
ソーシャルゲームなどでは、
本文テキストをエクセルファイルで管理しているところもあり、
たとえ1文字だけ書いたファイルでも、数キロバイトの容量を持ちます。
下記で説明するギャラや容量の問題にも関わるので、
先方(依頼主)が、どのような形式で
「テキストファイル」を欲しがっているのか確認しましょう。
■テキストと容量とお金の話と
ノベルゲームのテキスト(シナリオ)ライティングの報酬は、
KB単価で計算されます。
「あなたに担当してもらうシナリオ容量は400KBだから、
1KB=1000円として、40万円支払うね」という感じです。
(1KB=1000円は計算しやすいように設定した値です。
実際はもっと高め……だといいなぁ)
(グロスで、1キャラのシナリオでいくら、という契約もあります)
このキロ単位計算が厄介でして、依頼側が
「ト書きを省いたプレーンテキスト(台詞と地書きのみ)を
テキストファイルで400KB」
で依頼しているつもりでも、
ライター側は「(マイクロソフトの)ワードファイルで400KB」
「ト書き(注釈)を含めたテキストで400KB」であると勘違いして、
要求より少ない実テキスト容量で、シナリオを納品することがあります。
意思疎通が図れていないと
ライター「ト書き含めて400Kで書いた。抜くと350KBか。
……え? 明日までに50KB増やすの!?」
みたいな感じで、トラブルの元になりやすいので確認しましょう。
■ト書きで容量が膨らみがち
ト書きのテキスト量ですが、
ノベルゲームの場合、演出指示をすべてト書きで行うので
シナリオ容量が膨らみます。
個人的に計算して平均値を出したところ
10KBのテキストファイルにつき、1KB
400KBのテキストファイルなら、40KB
はト書きに容量が割かれています。
このまま提出すると
「ファイル容量は、400KBだけど
台詞と地の文(実際のテキスト量)は、360KBのシナリオ」
になるので注意しましょう。
例えファイルの中身が半分以上、ト書きで締められていても、
「ト書きを含めて200KBって言ったやん。契約書はこれ」と
ゴネられる可能性があります。
(実際には、そんな悪質なライターは見たことありませんが)
お互い不幸な結末を迎えないように
シナリオ容量にト書きを含めるかどうか、事前に確認してください。
■エッチィなシーンの容量計算
18禁美少女ゲームでは、
官能小説のように濡れ場を事細かく描写します。
Hシーンのテキストは書き方が特殊で、
台詞の大半が喘ぎ声に使われています。
喘ぎ声は文字数が多くて、データ的に容量を食いやすく
油断していると、あっという間に予定KBを越えていきます。
Hシーンで頑張りすぎてシナリオ容量が食われ、
日常シーンの描写がおろそかに……なんてことにも。
企画のコンセプトやメーカーの特色によって、
Hシーンに割くシナリオ容量は異なります。
あなたが携わる企画は、Hシーンがメインの作品なのか。
それとも日常シーンがメインなのか、事前に確認しましょう。
また、収録の関係でボイス数の上限が決まっている場合もあります。
1キャラ上限3000ワードまで、という縛りがある場合、
3000ワードに収まるようにシナリオを削除しなくてはなりません。
あえぎ声やキャラの掛け合いなどで調子に乗って
ワード数を増やしすぎると、
メインシナリオの台詞を削るはめになるので、
全体を俯瞰しつつシナリオの容量、ワード数を調整しましょう。
■まとめ
テキストファイルと一概に言っても、
エディターによって保存形式や容量が異なる。
ト書きは作業容量に含まれているのか。
揉めないように事前に確認しよう。
内勤ライターとして、美少女ゲーム業界で15年以上働いてきた経験と、そこで得たノウハウを文章にまとめています。ゲーム業界特有の謎規則や技術解説、仕事に取り組む際の心構えなどもご紹介。応援してくださると定期的に記事が更新されます(人間だもの)