食の風景・たらこと高菜のスパゲッティ
祖母と母は食器が大層好きな人たちだった。家の台所には、和洋様々の食器が大きな食器棚二つへ所狭しと並んでいる。特別高価な物は無い。けれど屹度全てに想いが詰まっている事と思う。外で一期一会の出会いと見惚れては、少しずつ、買い求めて来たらしいそれらの食器は、古い物も多いけれども品が良く、美しく、大切に使われてきたとよく分かる。その証拠に二人はお皿が一枚割れると、欠片を両の手の平へ拾い集めては一頻り悲しむような人たちであったから。その様子は傍目に、執着と云うより愛着に見えた。これが