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こどもの読みもの

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こどもにおすすめの本。 かつて、こどもだった大人におすすめの本。
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2022年7月の記事一覧

耳

『 耳 』

ジャン・コクトー
堀口大学 訳

私の耳は貝のから
海の響をなつかしむ

ジャン・コクトーは二十世紀の初頭から半世紀以上にわたって、
芸術のあらゆる分野で前衛的な活動をした人です。
その活動の根底には、いつも「詩」がありました。

この作品は
『Poesies 1917-1920』
“Cannes”と題して収められた六つの短章の五番目のものです。

富豪の子であったコクトー

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龍の子太郎

龍の子太郎

松谷みよ子 1960

山間の貧しい村にお婆さんと「太郎」と呼ばれる子供が住んでいました。山の動物や笛吹きの上手な女の子「あや」と遊んでばかりいる怠け者でした。ある日、寝込んだお婆さんが太郎に母親の話をします。樵だった父親は太郎の生まれる前に死んでしまったこと、母親の「たつ」は村の当番で山に行ったまま「龍」になり、たつが産んだ子供が太郎であること。そして「強く賢い子になって会いにきてほしい」と言い

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サロメ

サロメ

オスカー・ワイルド
1891年にフランス語で書かれる。1893年にパリで出版。

その夜はユダヤ王「ヘロデ」の宮殿で宴会が催されていた。
この様子を露台にもたれ掛かって見ていた兵士達は、王女「サロメ」の美しさ、「死んだ女」の面影にそっくりの月、宮殿の外の騒がしさなどから、今宵は不吉なことが起こるのでは、と不安を抱いていた。

そこへ、義父「ヘロデ」を避けた「サロメ」が宴席を抜け出してきた。
ユダヤ

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シンデレラ迷宮

シンデレラ迷宮

「シンデレラ迷宮」

1983年6月 集英社文庫 コバルトシリーズ
(続編「シンデレラミステリー」1984年3月)

氷室冴子

今日は、何か重要なことがあるはずだわ。
誰かが起こしに来たら、どうするのよ。
あら、やだ。ほら、誰かが肩を揺すってる。
「ったく、ぐーすかぐーすかと、いつまで寝呆けてるのよ、このガキは!
とっとと起きなってんだ。おら、聞こえてんの⁉︎」
誰かが、起こしに来たんだわ。起き

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ノルウェー民話集

ノルウェー民話集

「ノルウェー民話集」

ベーデル・アスビョルセン(1812〜85)
ヨルゲン・モー(1813〜82)

作者の二人は少年時代からの学友で昔話や伝承に興味を持ち、グリム兄弟という手本に啓発されて、それぞれ、ノルウェーの民衆から民話を採集し始めました。二人は別々に収集していましたが、お互いに興味が重なることを知り、共同研究を始め、これは素晴らしく協調的で実り豊かなものとなりました。デンマークから独立直

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