『桐島、部活やめるってよ』ネタバレ込みで魅力を語る
最近、朝井リョウさんの『桐島、部活やめるってよ』を読みました!
神木隆之介くんや橋本愛さんによる映画化も話題になりましたね!
端的に言って、めちゃくちゃ予想外のストーリーでびっくり!
桐島に振り回されっぱなしの250ページでした!笑
ここからは、ネタバレ込みで、『桐島、部活やめるってよ』の面白さを熱弁しちゃおうと思います!では、れっつご〜!
※以下、ネタバレを含みます!!!
◆最大の衝撃:桐島が1回も出てこない
いきなり最大のネタバレです。
まだ読んでない人は注意して!
・・・ではいきます。
『桐島、部活やめるってよ』に、桐島は1回も出てきません。
ええええええええ!?
まるで『崖の上のポニョ』にポニョが1回も出てこないようなイメージですからね!!!そんなのアリ!?!?
ここが本書の最大の衝撃であり、本書を最大に面白くしているポイントだと思います。
本書のあらすじをざっっくり説明すると、
「バレー部のキャプテン・桐島が部活をやめた」という噂が広がり、周囲の高校生たちの生活に変化が・・・!?
という感じです!
あとでまたお話ししますが、「桐島が部活をやめた」というのは、あくまで「噂」に過ぎません。
桐島の口から「部活やめたんだよね」のように、事実が語られることはありません。
さらに、なぜ桐島が部活をやめたのか、その理由も明かされません。
もしかすると、この小説は桐島を犯人としたミステリーなのかもしれない・・・!
◆リアルに描かれる教室内の格差
ここまで読んだあなたは、きっとこう思っただろう。
「はァ? 桐島が部活やめた? だから何?」
私もそう思いました!!やめたいなら勝手にやめろよ!!笑
・・・ところが、そうは行かないのです。
生徒Aが部活をやめるのと、桐島が部活をやめるのとでは、全く意味が違うんです!!!
本書では、「桐島が部活をやめる」というイベント、まさしく学校中の大事件であるかのように描かれます。
それは、桐島が学校の中の「頂点」に立つ男だからなのです。
本書では、「上」の生徒、「下」の生徒、と、生徒がランクづけされる様子が描かれます。
その特徴的な文章をいくつか引用します。
ピンクが似合う女の子って、きっと、勝っている。すでに、何かに。
(p.64)
なんで高校のクラスって、こんなにもわかりやすく人間が階層化されるんだろう。男子のトップグループ、女子のトップグループ、あとまあそれ以外。ぱっと見て、一瞬でわかってしまう。だってそういう子達って、なんだか制服の着方から持ち物から字の形から歩き方やら喋り方やら、全部が違う気がする。(中略)少し短めの学ランも、少し太めのズボンも、補足鋭い眉毛も、少しだけ出した白いシャツも、手首のミサンガも、なんだか全部、彼らの特権のような気がする。
(p.64)
映画部ってなに? そんなんあったん? 聞こえる、全部聞こえてくる。言ってなくても、言っている。空気が。お前達は目立っちゃいけないって、聞こえる。(中略)なんで同じ学生服なのに、僕らが着るとこうも情けない感じになってしまうんだろう。
(p.89)
高校って、生徒がランク付される。なぜか、それは全員の意見が一致する。英語とか国語ではわけわかんない答えを連発するヤツでも、ランク付けだけは間違わない。大きく分けると目立つ人と目立たない人。運動部と文化部。上か下か。
目立つ人は目立つ人と仲良くなり、目立たない人は目立たない人と仲良くなる。目立つ人は同じ制服でもかっこよく着られるし、髪の毛だって凝っていいし、染めていいし、大きな声で話ていいし笑っていいし行事でも騒いでいい。目立たない人は、全部だめだ。
(p.89-90)
梨沙はクラスで目立つのもわかる。梨沙だけじゃない、いつも私と一緒にいる沙奈、かすみ、みんな人を惹きつける外見を持っている。高校生活を送る上で女子にとって必要なもので、まず最低限は外見だ。その点私はラッキーだったな、なんて自分で思う。
(p.134)
『桐島、部活やめるってよ』では、これでもか、というくらい、生徒のランク付けが描かれる。
ざっくいえば、運動部=上ランク、文化部=下ランク、といった形だ。
この中で、桐島はバレー部のキャプテン。さらに、学校内でも「上」ランクの女子と付き合っている。
桐島は、まさに「上の上」の存在として描かれるのだ。
そんな桐島が、部活をやめる——
それは、学校内のパワーバランスを破壊する、まさしく大事件なのだ。
◆「部活やめるってよ」に隠された恐怖
さらに、個人的な考察を加えたい。
『桐島、部活やめるってよ』というタイトルに隠された恐怖だ。
本書のタイトルは、『桐島、部活やめる』ではない。
『桐島、部活やめるってよ』なのである。
そう。伝聞なのだ。
最初にも言ったように、本書の中で、桐島は1回も登場しない。桐島が自分の口から「部活をやめた」という場面は描かれていない。
つまり、本当に桐島が部活をやめたかどうか、わからないのだ。
さらに、本書のタイトルは『桐島、部活やめたってよ』でもない。
『桐島、部活やめるってよ』である。
つまり、桐島はまだ部活をやめていないのだ。
それなのに、噂話だけが一人歩きし、学校中に「桐島が部活をやめた」という話が広がっていく。それによって、学校内の人間関係が大きく変わっていく——
——この「噂話の怖さ」を、『桐島、部活やめるってよ』というタイトルは表しているのではないか?
◆まとめ:桐島という名のミステリー
『桐島、部活やめるってよ』は青春小説としても読めるが、桐島という存在を取り巻いたミステリーとしても読むことができる。
不在の犯人に振り回される登場人物。彼らがいかに「桐島」という謎に立ち向かっていくのか、その勇姿が見逃せない。
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