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「オンボロ屋敷の桃色ヤモリくん」 第12話

不思議のお店のアタリちゃん

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 そのお店は、風来町の少し小高い丘の上にある。

店の名前は、店主のパートナーの名前を取とって喫茶アタリと言ったが、みんな親しみを込めて喫茶アタリちゃんと呼んでいた。

店の周りには、広葉樹が何本もあって、夏には外に出されたテーブルに座ってくつろぐ人たちを、その枝葉が日陰を作って夏の暑さから防いでくれていた。

そして冬には、その広葉樹の葉が落ちて日差しが温めてくれるのだった。

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 喫茶アタリちゃんの外観は、不思議な形をしていた。

円筒状の建物には、2階、3階とあって、それぞれに窓がついているので、まるでムーミン一家が住む家の様でもあり、森の妖精たちが住むキノコの家の様でもあった。


 ボクたちの住む、風来町には不思議な芸術家さんたちが大勢住んでいる。

それに、芸術家と言う人たちは変わった人たちが多い。

また、少し変わった人たちだからこそ、個性的な作品が作れるとも言えるのだが。

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 そんな、変わり者の芸術家たちの中でも一風変わった人物が。喫茶アタリちゃんのイラストレーターのアタリちゃんと、そのパートナーのマスターであった。

喫茶アタリちゃんでは、マスターが主に店の仕事をしていた。

そしてアタリちゃんは何をしているかと言うと。

普段から不思議の国のアリスの、アリスが着ているような服装で、2階の作品展示室の一角で自分の作品づくりをしているのだった。


 めずらしい、芸術家たちが住む風来町には、1年を通して芸術家たちの作品を見ようと、観光客や田舎目当てのハイキングがてらのお客さんたちがやってくる。

だから喫茶アタリちゃんにも、アタリちゃんのイラスト以外にも、色々な不思議な芸術家たちの作品が並べられていた。そして、そのものめずらしい作品見たさにやってくる人もいて、店はにぎわっていたのだった・・・。

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 喫茶アタリちゃんでは、ときどき仮装大会も催される事もあった。

お店の常連や、芸術家たちが仮装して喫茶アタリちゃんに集合し、飲めや歌えの大騒ぎをして、それはそれは愉快な光景なのだった。


 ボクとサクラも、たまに参加した事があったが。

ボクらが、サムライと腰元すがたで参加した時には、口さがない芸術家連中たちに浪人とお姫様だな、と言われて恥ずかしかったこともあった。

そして、その時には陶芸家のゴダイさんが、ウサギの着ぐるみで参加したのには、芸術家連中もみんな度胆を抜かれていたのだった。

そして、ゴダイさんがウサギの着ぐるみで、酔った足取りで帰る姿を見ていた芸術家連中は、みな本気でゴダイさんがウサギの穴に落ちないかと心配して追っかけて行ったのだが。

ボクは、やはりこの町の芸術家連中は、不思議の街の芸術家たちだと思ったのだった・・・。


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連載小説(不定期)

「オンボロ屋敷の桃色ヤモリくん」第13話「黒猫コムギちゃんと桃色ヤモリくんの誕生」
へ つづく

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「オンボロ屋敷の桃色ヤモリくん」第12話「不思議のお店のアリタちゃん」

終り

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コメント 2020-07-15 154257

2020.10.3

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