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透明な水底の夢

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詩集 ❘ 十代の透明な悲しみの断片
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#自由詩

気付かれない失語症 

気付かれない失語症 

思考は、言葉になる前に消える
くちもとまで出かかって、わたあめのように消える

伝えたいことがあるのに
言葉に置き換えることができない

伝えたいことがありすぎて
どこから始めていいのかわからない

誰にも届かない
誰にも届けられない

たまった言葉は湖になり、私はそこに沈んでゆく

水の中ではもう、声を出すことも出来ない

私はいつも私を裏切る 

私はいつも私を裏切る 

本当は知っている
知っていて、目をそらしているだけ

頭の中で考えなければ、言葉にならないから、
そしたら認めなくてもいいから、
だから、見ないふりをしているだけ

簡単なこと

いつだって、こうやって、私は自分をごまかして、
見つめたくないことから注意をそらす

そのせいで、心が思考に裏切られたと思うなんて、ちっとも考えもしないで

感情に関する覚書 

感情に関する覚書 

その正体を知らないふりして
金色の小箱に閉じ込めて鍵をかけて水に沈めた

名前もつけず

本当は空に放ってやるべきだったのだ
鳥のように