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へっぽこシティ・ガールの東京考

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脱出、できなかったけど、この戦場のなかであたふたしたながら考えていくつもり
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わたしの戦場

わたしの戦場

居候している祖母の家は高台にあって夜には驚くほどの夜景。住むまで知らなかった。なんて贅沢で呑気な暮らし、けれどやはり日々の小さな決定に他人の存在が混じることは久しぶりすぎて早くもめげそうだ。自分の決定ばかり迫られる一人暮らしにめげてへこたれてこれを望んだのではなかったか。結局何においても文句を垂れてばかりの、どこまでも狭量で余裕のない自分がいやになる。泣いてばかりいたら頭が痛くて眠くて、それでもホ

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煩くて猥雑で憎たらしくて世界で一番大好きな街

煩くて猥雑で憎たらしくて世界で一番大好きな街

トーキョー!!!わたしにはやっぱりあなたしかいない!!!なんて病んだ女の子みたいな安易なこと言いたくないけど東京から離れてこっち寝ても覚めても東京のことばっかり考えてるよ。不在による存在。トーマの心臓。桐島、部活やめるってよ。ゴドーを待ちながら……今回、部屋の更新に際しどうせなら全部引き払って出稼ぎに行こ!って安直に断行した出トウキョウであったし、いろんな人に引き止められるたびそれなりに理由を紡い

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外は春の雨が降って

外は春の雨が降って

僕は部屋でひとりぼっち
夏を告げる雨が降って
僕は部屋でひとりぼっち……

ガラガラの声でマーシーが唄うこのフレーズを聴くたびにきっとこの小さなかわいい部屋のことを思い出すと思う。はじめての一人暮らしは完全に成功だった。楽しかった。母から離れるために断行した独り立ちだったけれど、こんなにも自分が一人が得意な人間だったとは、と笑ってしまう。楽しくて仕方がない。自分のために美味しいものを拵えるのも、か

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すべての僕のようなロクデナシのために

この星はぐるぐると回る。ヒロトの歌詞はどうしてこうもストレートであたたかいんだろうな。夜の首都高の下を通る大きな道を青く光るホテルの看板を横目に大きく曲がって中原街道に入る。二車線も三車線もある大きな通りをちっぽけな自転車でトラックやタクシーに混じって流れているとこの上なく自分の身体性が風に近づいて溶けていくようで気持ちいい。人がぎょっとするのもかまわず大きな声で歌う。踏み込む足に力が入ってきらき

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ぼくらが旅に出る理由

ぼくらが旅に出る理由

はだいたい100個くらいあって、という歌詞をくるりが書いていたことを最近知って、わたしは先代のシティ・ガールとしての母がオザケンの熱狂的ファンであったせいで物心つく前から彼の楽曲をわけもわからず聴いてきたわけで、とても感謝しているのだけどそれはそれとして(ちなみに、そのほかにサブリミナル的に仕込まれたのは忌野清志郎や、尾崎豊や、ユーミン、それから菊花賞、シーナ・アンド・ロケッツ、そしてスピッツ、洋

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トウキョウ、捨てます

トウキョウ、捨てます

「東京」を歌った歌は日本中に昔から沢山あって今もどんどん作られているしこれからもどんどん歌われていくだろう。わたしの(そしておそらく多くの90年代生まれの)骨髄にまで沁み込んだ青春のバイブルであるところの漫画「NANA」はそもそも典型的な「上京もの」であるし、JUDY AND MARY「POWER OF LOVE」、YUKIちゃんは度々故郷の北海道から東京に出てきた時のことを文章や歌にしているし、

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