立方象牙工

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最近の記事

2023ベストを公開しました

明けましておめでとうございます。 ライターのMedr(X)氏と話した2023ベストが公開されました。お時間があるとき、あるいは正月に何も暇つぶしのコンテンツがないときになどお聞きください。 さてここでは、ランキングには諸事情で入れなかったものについて軽く忘備録しておこうと思います。ランキングとは所詮遊び、すべては順不同です。よく似たものや実際は紹介したいがなくなく削ったものなどありますので、ランキングに入れたものは選ぶときに「今紹介するなら個人的にこちら!」とは思ったりし

    • #1

      タロットカード占いのyoutube配信をたまたま観たのですこし考えた。どうやら、タロットカード占いは偶然選ばれたキーワードによってアドバイスの方向を決定することで、説得力を増しているようにみえる。それ自体は占いが当たる、当たらないという問題はまったく関係ない。 見ず知らずのひと、あるいは友人からアドバイスが欲しいときがある。しかし、ひとはいつも合理的なアドバイスを求めているのだろうか。あるいは理屈だけでは解決できない悩みを持っているひとに対してはどのようにアドバイスすればよ

      • 留学記#7

        大家と一緒にアカデミー賞の授賞式をみたのだった。もはや一年くらい前のことだ。彼女の親類がアカデミー賞ノミネート作の題材になっていたから、という理由だった。あの式は、確かにソダーバーグの思惑からはズレてしまって、お世辞にも良いものとは思えないけれど、わたしにとって、そして今となってはかげがえのないものだ。 大家は式をみたあとで、作品賞を取った「ノマドランド」をみてみたい、と言った。わたしはyoutubeでどのようにしてノマドランドをレンタルし、視聴すればよいのかについて教える

        • 留学記 #6

          知り合いの引っ越しを手伝った。 最初は「午前中で終わるでしょう」と話していたが、今思えば私も引っ越しの経験ぐらいはあったのだ。つまり引っ越しとは、そううまくいかないことの例え、あるいは、自宅にある物の量について、予想と現実の差を再確認するためのフィールド・ワークである。 大学生の頃にたった一人で引っ越しをしたことがあったが、部屋の中に存在する物の数が予測よりもはるかに多いことを知り、その"終わらなさ"に打ちひしがれたことを忘れたか。のちに聞いた話では、自宅にあるすべての物

        2023ベストを公開しました

          2020年 ベスト50

          2020年マイベスト。順位は1位から思いついた順番そのままなので、ほとんど意味がない。なるべく今年のコンテンツだが、とても面白かったものは無関係にランクインしている。 50位. Pet Shop Boys - Wedding in Berlin どういうタイプのふざけ方なのだろうと思ったから。 49位. 十三機兵防衛圏 戦闘パートが面白かった。無数の敵をミサイルレインで殲滅していくのが爽快。ストーリーは迂闊だが、それも可愛げがある。何より大人と子供を行き来するのが思ったよ

          2020年 ベスト50

          最近読んだ本について

          銀河の片隅で科学夜話/全卓樹が素晴らしかった。科学読みものには稀有なことに、読者と対等な目線で科学の物語を聞かせてくれる。科学は事実的な知を探求する学問にもかかわらず、人間の知が及ばない神秘まで連れていってくれる不思議な魅力を持っていたことを思い出す。 私が科学に興味を持ったきっかけは、いまや正確には覚えていない。しかし、それは科学的な事実を単に知ったからではないだろうし、ましてや教養主義的な知識の押し付けをされたからでもない。科学の魅力は分からないことと、分かることの領界

          最近読んだ本について

          留学記 #5

          二ヶ月ほど前、大学が封鎖されるすこし前のケンブリッジはまだ異様とはいえなかった。マスクの着用を義務付ける臨時命令もなかったし、罰金を取られる心配もなかった。だが、減産 (ramp down)と称して勤務形態は変わり始めていた。 Google sheetsで勤務のシフトを調整して、ラボの一部屋あたり一人しかいられないようにする対策がとられた。早い者勝ちになるかと最初は思ったが、同僚はほとんど予約を入れなかった。普段は研究意欲しかない彼らが、早々に自宅勤務へと切り替えていた。

          2019年 ベスト50

          2019年ベスト。コンテンツに関してのみ、なるべく2019年のものから選んだつもり。 50位. 中学の同窓会的なバーベキュー   いつの間にか、みんな歳を重ねていたから。 49位. Flour Bakery  職場近くにあるファストフードの中では一番美味しいお店。サンドイッチだけで1200円ぐらいする。高めの価格設定だけど、他にロクな店がないから。 48位. Factorio  いきなり今年発売のコンテンツではないが、やはり、どう考えても世の中で一番面白いゲームになって

          2019年 ベスト50

          留学記 #4

          アメリカに来てから半年が経ち、なお書くことはありません。日常の生活に変化がなくなり、緊張感も何もかもが消失したからです。かつて留学記を書いたのはいつだったか、過去のアーカイブを辿って確認すれば数分で分かることですが、その気力すらありません。 上記の文章を読んだ誰かが、半年でアメリカの生活に慣れ、英語を使ったスムースなやり取りも余裕になったのか、と思うなら、そのまま勘違いしておいて欲しいのですが、本質は違っていて、スムースなやり取りが出来ないことに慣れてしまった、という回りく

          HBO製作ドラマ"チェルノブイリ"で描かれる青い光は事実なのか

          HBO製作のミニドラマ、"チェルノブイリ"がIMDbでテレビ番組史上最高評価の9.6点を記録し、ランキングの第1位になった。このドラマの完成度はまさに究極、全5話のうちどれもが圧倒的である。近いうちに日本でも公開されるはずなので言えることはただひとつ、必ず鑑賞されたし。 この宣言によって全国民の鑑賞が確約されたので、チェルノブイリが持つ圧倒的な魅力についてこれ以上説明する必要はなくなった。ではこれ以降、私はこのドラマの"欠点"について指摘する。それは、チェルノブイリ第一話に

          HBO製作ドラマ"チェルノブイリ"で描かれる青い光は事実なのか

          留学記 #3

          「“bloodborne”は終わりましたか?」 数年前にプレイしましたがまだラスボスは倒していません、と答えようとした。一瞬のあいだ逡巡する。おそらくここでの”bloodborne“は、私の考えている”bloodborne“ではないはずだ。まず第一に、この質問は出勤初日に上司から飛んできたものである。”bloodborne“がフロムソフトウェアのアクションRPGのことを言っているのだとしたら、どう考えても場にそぐわない。いきなり私にゲーム遍歴のことは聞かないだろう。ちなみに

          留学記 #3

          山田尚子監督の次回作に期待する

          "女の子が好きな相手に告白する" 彼女の人生で最も劇的な瞬間に映画が終わり、私は飛び跳ねるように興奮した。これほど鋭利な切れ味で終わる映画がこの世にいくつある、何度も独り言でそう言った気がする。 次の作品では、聞きたくないことを言われたときに傘を使って相手を遮る、という一つの動作によって映画全体のテーマを描写してしまった。言葉のない映像表現に痺れ、ここまで圧巻の演出をやってのける監督は何者なのか、そのときから私は京都アニメーションの山田尚子監督を"今必ず追うべき映画監督"

          山田尚子監督の次回作に期待する

          留学記 #2

          アメリカの牛乳はでかい。近所のスーパーでは2リットル以上のものだけしか売ってない。大きなものはガロン瓶くらいある。ガロンといえば4リットルくらいだ。大きすぎる牛乳に辟易していたときに、ふと日本と同じ1.5リットルのパックのサイズをみつける。でもそれくらいの"小さなサイズ"のものは大抵がホイップ・クリームだ。1.5リットルのホイップ・クリームをたくさん並べて真顔で売っている国、本当に怖いよ。 私はたった一人だけ、アメリカ人の友人がいる。彼は軍事関連の研究所で衛生管理についての

          留学記 #1

          まずアメリカに来て驚いたこと。 アメリカの映画館には、飛行機のちゃちなクラスよりも明らかに質の良い椅子が備えられている。まるでマッサージ椅子やソファにあるような足置きがついていて、椅子の横についたボタンを押せば自動でせり上がってくれる。この足置きが180度になれば、家のソファーで映画を観るかのごとくリラックスできるという仕組みだ。土地が広いアメリカだから出来るんだな、と思った。ちなみに大学勤務者の特典割引を利用すれば価格は$9前後なので映画好きには本当に素晴らしいことだ。一