スポーツ観戦がなぜ面白いのかを考えてみる
「スポーツ観戦は面白い。」
この感覚は、ほとんどの人が持っていると思う。
ただ、スポーツ観戦がなぜ面白いのか、という問いに対して明確に答えられる人は少ないように思う。
今回は、心理学的な観点から人がスポーツ観戦を面白いと思うメカニズムを自分なりに解き明かしてみようと思う。
心理学とスポーツ観戦の関係性を解き明かした論文はあまり発見できなかったのだが、戸梶の感動喚起モデルという人間が感動するまでのメカニズムを解き明かしたモデルを発見した。
論文では映画を対象に論じられているのだが、これを1つ1つ見ていくと、スポーツ観戦での楽しさをがっちり説明できそうなので、こちらを引用しながら書いていく。
スポーツ観戦での感動までのステップ①
「高関与状態」
前提として、観戦する対象に対して高関与であればあるほど感動につながるということである。
"高関与"とはつまり、より深い関係性を持っているということで、
当然っちゃ当然だが、どこか知らない国の知らないチーム同士の試合よりも息子や恋人の引退試合の方が感動できるということである。
知らないチームより知っているチームの方が良いし、
選手全員の名前や生い立ちを知っている方が良いし、
そのチームが今までどんな歴史を辿ってきたか知っている方が良いし、
チームや選手と何かしらの接点を持っている方が良い。
なんなら、TOTOや競馬で自分のお金をかけることで関与以上に当事者になってしまうと最高である。
スポーツ観戦での感動までのステップ②
「ストーリー」
高関与な状態の上で、試合の背景にストーリーがある方が良いということである。
ただの練習試合より、W杯でのトーナメントの1試合の方が感動できるということである。
リーグ戦やトーナメント戦は、背景にストーリーを作るし、
プロ野球のクライマックスシリーズやJリーグの入れ替え戦などが、普通より盛り上がるのはこの理由である。
高校野球なんかも、裏側に青春ストーリーを感じられるものである。
スポーツ観戦での感動までのステップ③
「感情移入・共感」
ステップ①、ステップ②が存在する前提で、感情移入・共感できるものほど感動につながるということである。
選手やチームの存在が、どこか自分と共通する部分があったりする方が良い。
大きい枠組みでいえば、まず国籍という共感がある。
同じ日本人であるというだけで感情移入・共感はできるものである。
さらに同じ地域の出身や同じ高校の出身の選手がいたとすれば、さらに感情移入・共感できるものだろう。
スポーツ観戦での感動までのステップ④
「結果に対する期待」
ステップ①~ステップ③があれば、自然と「結果に対する期待」を持つものである。
「勝ってほしい!」「ホームランを打ってほしい!」などの感情である。
ここまでのステップは、観戦する前の準備のようなものである。
ステップ①~ステップ④までをしっかり準備できていれば、スポーツ観戦を楽しめる土台は整ったことになる。
スポーツ観戦での感動までのステップ⑤
「精神的不安・身体的緊張」
ここからがスポーツならではの部分でもあるが、
スポーツ特有の競争性や不確実性は、不安や緊張感を作るのにすごく最適な装置であると考える。
ステップ④での「ホームランを打ってほしい!」という"期待"がある前提で、ピッチャーが球を投げようとするとき、
打てるのか、打てないのか!?いいコースに球は来るのか!?いつも通りのスイングはできるのか!?などドキドキして手に汗握る瞬間をイメージしてもらうのが良いと思う。
まさにそういった不安や緊張感が感動を生み出すということである。
スポーツ観戦での感動までのステップ⑥
「達成・成就」
これはまさに結果であり、「ホームランが打てた!」状態である。
ただし、感動につながるのは”ポジティブ”な結果であり、ネガティブな結果(ホームランを打てなかった)場合は感動につながらない。
ただ、ネガティブな結果を生む可能性をはらんでいることは重要であり、そこの不確実性こそステップ⑤を作り出す要素になっている。
確実に勝てる試合や100%ホームランを打てる状況では感動しないということである。
だから、プロリーグなんかはできるだけ各チームの強さのバランスを保つことで、不確実性を高めようとしていると考えられる。
スポーツ観戦での感動までのステップ⑦
「緊張の緩和」
これはステップ⑤とステップ⑥があれば自動的に成立するが、
精神的不安・身体的緊張があり、ポジティブな結果が生じた場合に緊張状態から一気に緩和されるということである。
イメージしやすいのは、サッカーのPKや9回裏ツーアウトでの最後の1球だろう。
そして「感動」へ
ここまでくれば、かなりイメージが湧いているかと思うが、
ステップ⑦の緊張からの緩和が感動につながる。
声を上げて喜んだり、みんなで抱き合ったり、1人でホッとしたり泣いたりするような瞬間である。
確かに日常生活でこの感動体験を得ることはなかなか難しく、これを定期的に提供してくれるスポーツというものは偉大だなと感じる。
よりスポーツを楽しみたい・感動したいときは上記のステップを意識して、
意図的に事前に共感ポイントを探してみるなど工夫してみてはいかがだろうか。
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