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『絵本×保育』実践者育成講座「10の姿」と絵本


『絵本×保育』実践者育成講座とは

私が講師になって行っている学園内の勉強会です。
絵本を大切にした保育・教育を行っていくために、絵本について学び、保育での効果的な取り入れ方を考えます。
座学とワーク、実践と発表を組み合わせた全6回の連続講座です。

子どもたちに絵本を手渡す保育教諭の役割は重要です。
質の高い絵本を見分ける選書眼を磨き、ねらいを持ち、年齢や発達段階に応じた選書が必要です。なんとなく選んでいた絵本を深く読み込み、じっくりとむきあいながらよく考えてみることから始まります。
「良い絵本とは?」というある意味正解のない問に向き合いながら、自分なりの視点を持てるように、そしてそれを伝えられるように考えて言語化していきます。

毎年希望者を募り、10名程の少人数で開催。毎年第1回目は「教育保育要領」の読み込みからスタート。「幼児期の終わりまでに育って欲しい10の姿」もとりあげています。
絵本の基本的な知識から、良い絵本とはどういう絵本なのか、選書の仕方、読み聞かせの仕方、読みきかせ会のプログラム作り、ブックトークなどなど様々な絵本に触れながらすすめていきます。保育に生かすことを前提とし、保護者のみなさんにもお伝えできるような、絵本のプロになってもらいたいと思いこの講座を続けています。

第5回目の内容

毎年一番盛り上がる「幼児期の終わりまでに育って欲しい10の姿」を育てるヒントになる絵本の選書発表。
これは私が考えたオリジナルのワークです。

【幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿】
①健康な心と体
②自立心
③協同性
④道徳心・規範意識の芽生え
⑤社会生活との関り
⑥思考力の芽生え
⑦自然との関り・生命尊重
⑧数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚
⑨言葉による伝え合い
⑩豊かな感性と表現

幼保連携型認定こども園教育・保育要領 平成29年告示

この10の姿の内容をよく把握したうえで、それを育てるヒントになりそうな絵本を選びます。逆でも良くて、この絵本はこの10の姿のどれかにあてはまるだろうか・・・と考えるのでもよいです。
 もちろん絵本だけで達成できることではないのですが、このワークをすると先生たちの視点が変わり、絵本の選び方が明らかに変わる。
考えていくうえで、深く絵本を読み解くことになりますし、『10の姿』についての理解も深まるので一石二鳥。
含まれているの10の姿の要素はひとつとは限りません。読み解き方によっては同じ絵本でも違う要素を感じる人もいるでしょう。
いかに自分が読み解くかもポイントです。

実際に子どもたちに読んでみたら、思っていた反応と全然違ったりするのもまた面白い。けれどこれは保育教諭が保育をするうえで考慮する事項として選書するだけであり、こちらの思惑に子どもたちを誘導しないようにしています。(誘導すると楽しくなくなるし、絵本の本来の楽しみ方から外れていくと私は考えています)
 小さなことですが、このように、絵本ひとつであってもよく考えて選書して実践していくことが保育の質の向上にもつながるではないでしょうか。

(例)『⑧数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚』を育てることのヒントになる絵本

ひとつの例として⑧数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚 を育てることのヒントになる絵本をご紹介します。

『⑧数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚』
遊びや生活の中で、数量や図形、標識や文字などに親しむ体験を重ねたり、標識や文字の役割に気づいたいりし、自らの必要感に基づきこれらを活用し、興味や関心、感覚を持つようになる。

幼保連携型認定こども園 教育・保育要領(平成29年告示)

『おまたせクッキー』
作:パット・ハッチンス
訳:乾由美子
偕成社 1987年

偕成社の著作権使用の決まりに基づき使用しています。

『おまたせクッキー』のあらすじ


焼きたてのクッキーを食べようとすると、つぎつぎと来客が!『おまたせクッキー』 | Kaisei web | 偕成社のウェブマガジン (kaiseisha.co.jp)
↑こちらで詳しい内容と絵本の中身も見ることができます。

お母さんが焼いてくれたクッキーを、分けようとする二人。クッキーは12枚。「6枚づつだね」と食べようとしたところ、ピンポーン!と友だちが2人やってきます。4人で分けて3枚づつ。さぁ食べようとしたところ「ピンポーン」また誰かがやってきました…。この繰り返しでクッキーをどんどん分けていきます。当然ひとりずつに当たるクッキーはどんどん減っていきます。さて最後はどうなるかな。

この絵本の楽しさと『⑧数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚』

この絵本の楽しさは、まずは美味しそうなクッキー。そして繰り返されるピンポーン!。鳴るたびに、お友だちが来てくれるのは嬉しいけれど、「クッキーが減っちゃう!」という本音もひそかにあってちょっとドキドキ。でも子どもたちがみんな優しいのです。
絵も鮮やかな色合いと素敵なお部屋、たくさん登場する子どもたちは人種も年齢も様々。子どもたちの表情も豊かに描かれています。

そんな楽しい絵本ですが、クッキーをわける時、子どもたちは自然に割り算をしています。目の前にあるクッキーをそこにいる人数でわけることで、割り算を知らなくてもできてしまうのです。この絵本は全くもって割り算を教える目的でつくられたわけではないのですが、自然に数字の感覚を身につけることにつながっていきます。

まとめ

上記のように考えてそれぞれの「姿」のヒントになる絵本を選書をしています。3年前から始めたワークで、蓄積したものをどのようにまとめていくか、これは研究にできるのかなどまだまだ模索中です。
保育教諭のみなさんには、視点が変わる、絵本を深く考えるきっかけになるなど感想をいただいているので、意識を変えていく、保育と結びつけて考えるという効果はあるのではないかと思います。 
これから更に深めていきます。




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