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#34『おやすみラフマニノフ』(著:中山七里)を読んだ感想

中山七里さんの『おやすみラフマニノフ』
岬洋介シリーズの第2作で『さよならドビュッシー』の続編です。

『さよならドビュッシー』が印象的な作品だったので、続編もぜひ読みたいと思い手に取った1冊です。


あらすじ

俳優の妻夫木聡さんも絶賛した15万部突破 『さよならドビュッシー』の続編です! 
秋の演奏会を控え、第一ヴァイオリンの主席奏者である音大生の晶は初音とともに、プロへの切符をつかむために練習に励む。しかし完全密室で保管される、時価2億円のチェロ、ストラディバリウスが盗まれた。彼らの身にも不可解な事件が次々と起こり……。ラフマニノフの名曲とともに明かされる驚愕の真実! 美しい音楽描写と緻密なトリックが奇跡的に融合した人気の音楽ミステリー。

Amazon商品紹介ページより

感想

  • 演奏を聴きながら読みたくなる音楽描写は前作同様すごいの一言

  • ミステリというのを忘れるくらい演奏に引き込まれた

  • ミステリ要素に関しては前作に比べて驚きは少ない?


『おやすみラフマニノフ』は岬洋介シリーズの第2作。
主人公の城戸晶は、秋の演奏会に向けて練習に励みますが、不可解な出来事が次々に起こります。
そんな中で、自身の将来など何のためにヴァイオリンを弾いているかを問い続けた晶。
そして、ある真実が……。


演奏を聴きながら読みたくなる音楽描写は前作同様すごいの一言です。
(思わず途中でラフマニノフの『ピアノ協奏曲第2番』をYouTubeで検索して聴きました)
本作は前作『さよならドビュッシー』と同じくミステリですが、それを忘れるくらい演奏に引き込まれます。
音楽描写はイメージしやすく、音楽に詳しくなくても大丈夫でした。
また、ラフマニノフなどの音楽家や作曲の背景も詳しく書かれています。

演奏会での晶たちが今この瞬間に集中した演奏は、実際に聴いたかのように心に響きました。

(中山さんは音楽に精通しているのかと思いきや全く逆なのが驚き!)


岬さんの音楽に対する姿勢、言葉に感銘を受けました。
そして、それは生き方に対する姿勢にも繋がると思いました。

本作の終盤や『さよならドビュッシー』でも明らかにされますが、自身も置かれている立場や環境は決して恵まれたものではない。
そんな中でも不平不満を言わずに、音を奏でることに集中する。
その姿勢に、何事にも立ち向かう勇気をもらいました。

僕は普段の生活の中で「後悔しない」をモットーにしています。
その思いがより強くなり、今この瞬間を大事に生きようと思いました。


ミステリ要素に関してですが、本作は前作に比べて驚きは少なかった印象です。
序盤からある人物との関係に違和感があったりして、それが終盤に繋がるのではと何となく思いながら読んでいました。
そして、最後まで読むとタイトルの意味も分かります。
どこか切なさを感じさせる終わり方でした。

印象的なフレーズ

「目新しい食材はすぐに飽きられる」
「珍しい食材や耳新しい考え方は、しばらくは楽しんで貰える。だけど長い時を経て洗練されたものじゃないから、それなりのエグさや未熟さがあって長くは支持されない。結局は昔ながらの素材や年寄りの繰り言が重宝されたりする」

『おやすみラフマニノフ』

「科学や医学が人間を襲う理不尽と闘うために存在するのと同じように、音楽もまた人の心に巣食う怯懦は非情を滅ぼすためにある。確かにたかが指先一本で全ての人に安らぎを与えようなんて傲慢以外の何物でもない。でも、たった一人でも音楽を必要とする人がいるのなら、そして自分に奏でる才能があるのなら奏でるべきだと僕は思う」

『おやすみラフマニノフ』

「先月、或る老人からこんな言葉を聞きました。災い人を選ばず、とね。確かにその通りだ。でも、その災いにどう対処するかは人が選べる。逃げるか、それとも闘うか」

『おやすみラフマニノフ』

「今から貴方たち一人一人はその大切な人に向けて演奏するんです。その人に聴こえるように。その人の胸に届くように。その人と話すこと、その人を愉しませること、そしてその人を慰めること。それが音楽の原点なのだから」

『おやすみラフマニノフ』

音楽は職業ではない。
音楽は生き方なのだ。
演奏で生計を立てているとか、過去に名声を博したとかの問題じゃない。今この瞬間に音楽を奏でているのか。そして、それが聴衆の胸に届いているのか。それだけが音楽家の証なのだ。

『おやすみラフマニノフ』

音楽の力を感じたい

『おやすみラフマニノフ』を読んで、音楽の力、素晴らしさを実際に感じたい気持ちがより強まりました。
昨年はピアノの演奏会に行きましたが、今度はオーケストラを聴きに行きたいですね。

岬洋介シリーズは、好きなシリーズの1つに加わりました。

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