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#20 バカみたいに笑える痛快コメディ『店長がバカすぎて』(著:早見和真)を読んだ感想

早見和真さんの『店長がバカすぎて』

書店が舞台であることや目に付いてしまうタイトルで、以前から気になっていた作品です。

2020年の本屋大賞ノミネート作にも選ばれました。


あらすじ

谷原京子、二十八歳。吉祥寺の書店の契約社員。超多忙なのに薄給。お客様からのクレームは日常茶飯事。店長は山本猛という名前ばかり勇ましい「非」敏腕。人を苛立たせる天才だ。ああ、店長がバカすぎる! 毎日「マジで辞めてやる!」と思いながら、しかし仕事を、本を、小説を愛する京子は──。
全国の読者、書店員から、感動、共感、応援を沢山いただいた、二〇二〇年本屋大賞ノミネート作にして大ヒット作。巻末にボーナストラック&早見和真×角川春樹のオリジナル対談を収録!

角川春樹事務所より

感想

  • バカみたいに笑えて、いつの間にか悩みも吹き飛ぶ1冊

  • でも、それだけではない?


小説でこんなにバカみたいに笑うとは思いませんでした。

笑いを我慢するのが大変かもしれないので、人がいる所で読むのには注意が必要?です(笑)

山本店長の空気の読めなさ、図々しさ、意味のわからなさ。

つまりは「バカ」

そんなバカすぎる店長に、京子や他の店員が気の毒に思えるくらいでした。

そして、あまりにバカだから何か裏があるんじゃ?とも疑ってしまいます。

でも不思議なことに、読んでいるといつの間にか悩みも吹き飛んでいました。
笑えるからというのもありますが、京子が悩みがありながらも前向きになっていく姿に影響されたところが大きいです。

本作は六話構成。
その中でも、第二話と第四話は思い出すと笑ってしまうくらいインパクトがありました。


書店員さんの仕事ってどんな感じなんだろう?

書店によく行く僕は以前から気になっていました。

本作では主人公の京子による、書店員の日常についても描かれています。

読んで思ったのは、

(バカ店長を抜きにしても)大変だなということ。

力仕事や接客以外にも、

・売りたい本が入ってくるとは限らない
・出版社による報奨金
・給料、給料、給料…

現代はネットショッピングもあるため、将来性も不透明。

それでも、京子のような物語に対する愛を持っている方は、現実でもきっといると思っています。

本が読みたくなる、書店に行きたくなる気持ちがさらにわいてきました。

(ただ、書評を見る時は色々と勘ぐってしまいそうです(笑))


バカみたいに笑える痛快コメディ。
……と思ったら、まさかのミステリー要素も?

ただ笑えるだけの物語ではありません。
なぜ、そう思ったかは読んでからのお楽しみ😌

印象的なフレーズ

「一人の小説家にしか生み出せないものがあるように、一人の書店員にしか良さを伝えられない作品があるかもしれないし、そうあるべきなんじゃないかって私は思ってます」

『店長がバカすぎて』

しかし、そこに絶対に介在させてはいけないものがあるとも思っている。「強要」だ。本を読んで、感銘を受けるだけならいい。それを自分の身に活かし、思う存分、明日を生き抜く活力にすればいい。
けれど、他人に強要することだけはしちゃいけない。そこに強要が介在してくるから、無用な誤解と、不寛容が生み出され、世界はこんなにも息苦しいのだ。

『店長がバカすぎて』

そもそも本の感想なんて千差万別あるはずだ。誰かにとって救いになり得る物語が、誰かにとっては強烈な批判の対象だったりする。ネット上のレビューがいい例だ。私が良かったと感動した本で、そこそこの感想を集めている本は、たいてい賛否両論にあふれている。結果、星は大体「3・5」に集約される。

『店長がバカすぎて』

「私はどんな仕事であっても、辞めたきゃ辞めればいいと思う。とくに私たちの年代は、続けることの美徳みたいなのを語りがちだけど、私はまったくそんな風に思わない。誰だって必死に自分で生き方を選び取らなきゃいけないんだよ。そこに誇りを持てないなら、働いていても仕方がない」

『店長がバカすぎて』

「昔より本が売れなくなったとしても、本はおもしろくなり続けていると思うんです」

『店長がバカすぎて』


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