実際の「セカンドハラスメント」とは ③
ハラスメント問題は直接的なものばかりではなく、「セカンドハラスメント」という、ハラスメント被害を相談した際に受ける、2次的被害も含まれています。このセカンドハラスメントに1番関わるかもしれない立場にいるのが相談担当者です。相談担当者の立場になった際にはこのことを常に心に留めておく必要がありますが、イメージしづらい人もいるでしょう。前回は相談された側が放置し、初動の遅れによって事態が悪化したケースで、被害者にとって対応時間の長さがセカンドハラスメントになる可能性があるということをご紹介しました。今回も、また実際にどんなケースがセカンドハラスメントになってしまうのか、具体的なケースを見ながら考えてみましょう。
ケース3:相談を受ける側の不適切な対応で事態が深刻化
女性社員が同僚らと飲食後、タクシーに乗った際に同僚男性社員にスカートをめくり上げられるというセクハラ行為を受ける。女性社員がこのセクハラ行為を上司に相談したところ、上司は加害男性に事情聴取を行った上で、「加害男性は酩酊していて駅構内でも嘔吐していた。タクシーの座席シートに嘔吐物が付かないようにするため、スカートをめくり上げてしまったと言っている。そういう理由があってのことで、誤解であるためこれ以上問題にしないように」という旨を伝え、その後の女性社員のセクハラ行為の相談にも取り合わなかった。
その後、女性社員は社内の労働組合に相談。労組は会社との団体交渉事項にこの被害深刻を取り上げたため、会社代表者は初めてセクハラの申し立ての件を知る。改めて調査が行われ、被害者の誤解であるという言い分には矛盾点があり、被害が事実であると認定。被害者女性に100万円の慰謝料を支払い、会社代表者が被害者女性と面談して謝罪。加害者男性と相談対応をした上司には懲戒処分として降格等を行った。その後、降格された社員らが処分の無効を求め提訴したが、棄却された。(新聞輸送事件、東京地判平成22年10月29日、牢番1018‐18)
どんなハラスメントにも求められる「迅速かつ的確な対応」
このケースでは、そもそも上司の対応が不適切でした。加害者男性に事情を聞いてはいますが、加害男性の一方的な主張を取り上げて終わらせようとしたことで被害者を追い詰めただけでなく、さらに問題を大きくしてしまいました。被害者に寄り添う適切な対応をしていれば、訴訟問題まで発展しなかったかもしれませんし、問題解決になる道筋があったかもしれません。
セクハラだけではなく、パワハラの相談や解決の際にも同様に適切な対応が求められます。「決して1人で解決しようとしないこと」「被害者の気持ちを十分に理解して、迅速かつ的確に対応すること」このことは常に肝に銘じておきましょう。