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【architect】クライアントワークからの脱却

画家は自分でキャンバスを調達して、自分の絵筆で創作した作品を商品として売る
買い手がいなければ儲けにはならないが商品はある

料理人は自らの考案した料理でメニューをつくり、客に提供する
客はメニューの中から食べたい料理を選び注文する


設計事務所の仕事はクライアントがいてはじめて生まれる仕事である
ゆえに、クライアントがいなければ基本的には仕事ができないのだ
(コンペなどで自ら仕事を獲りに行く手段はここでは除く)

私としては、建築に対する思想や考え方を文章やビジュアルで伝えることはできるが、実際に出来上がる建築は、そこを利用する人々や敷地が持っている条件で決まるのであらがじめ決まったフォーマットをつくることは出来ない
ハウスメーカーなどは住宅展示場としてモデルハウスを設けているが、建築を使う人と敷地条件をその都度吟味して設計する我々とは根本的に異なる


そして建築家は、クライアントのお金で建てた建築を自らの作品として発表する
なんともわがままな職業に感じるが、クライアントなくしては仕事が一切ないことになる

それゆえに建築業では、お客”様様様様様様”の関係になることが多々ある
これには建築という価格の大きさも影響しているだろう
多くのハウスメーカーや設計事務所は無料でプラン提案をして、無料で見積りを提示した上でお客になってもらえるか”判断をして頂く”のだ

これは大企業で体力のある会社の方が提案する量は増やすことが可能になり、それは優位性につながる

小さな設計事務所にとって無料での業務は仕事につながればよいが頓挫すれば死活問題になりかねない

この点については、リフォームコンサルタントの高橋みちるさんの記事でも取り上げられており非常に共感できる記事であった

かつては、どん底の状況から大きな設計コンペで名をあげて事務所を軌道に乗せるのが美徳とされた
実際に現役の世界的な日本人建築家の中には、ギリギリの経営状態からコンペの勝利で一気にスターダムにのし上がった建築家も多い

しかし、コンペで下剋上のような賭けでしか仕事が成り立たない状況は決して健康的な働き方ではない
しかも競争社会でしか見出せない仕事はブラック化しやすい傾向にあるように感じる

このような危機感を感じている小規模設計事務所は多いのではないだろうか…

クライアントと設計事務所は対等の立場であり、今までもそのような価値観で仕事をしてきた
いや、そのような関係性を築けるクライアントととしか仕事をして来なかったと言えるだろう


どんな業界でも言えることかもしれないが、依頼主が偏りすぎることは健康的な経営とは言い難いだろう
今回のコロナでも一定のお客に依存していた企業は大きなダメージをくらうことになったはずである

設計事務所にとってもこのことは対岸の火事ではない

表題の『クライアントワークスからの脱却』は以前から考えていたことである

同業者のnoteにもクライアントワークスに対する危機感に関する記事を見かけるようになった

いくつかやってみたい試みはある
これからの時代にあった働き方を生み出すためにも考え続けなければならないテーマだと思っている

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