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【architecture】窓学|バラガン邸|ルイス・バラガン

ルイス・バラガン(1902-1988)という建築家をご存知だろうか
メキシコの建築家で、光と色彩を操る魔術師であると私は勝手に思っている
1980年に建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞を受賞している

バラガン建築の特徴は、『光』『色彩』である
どちらも関係性をもって設計されているので切り離すことはできないが今回は光をテーマに書いてみたい

バラガンの自邸であるバラガン邸は世界遺産にも登録されているほど有名な建築である
一住宅が世界遺産に登録されているのも驚きであるが、かといってドヤ感満載の住宅ではない
非常に丁寧にメキシコの強い日差しや環境を考えながらつくられた建築だ

そんな中でも私が好きなシーンはここ

階段である
ドヤ感はない
至って普通に見えて普通じゃない

写真では分かりにくいが階段の上の左側に窓がある

ここから柔らかい光が階段室全体を照らしている

何故だかわからないが人は“左”からの光に吸い寄せられるらしい
ここぞというときの窓は西洋の教会建築や少ない日の光を大切に取り込む北欧建築でも“左”からが多いそうだ

この光を触りたくなるかのように導かれる階段が出来上がっている

このシーンはバラガン邸でも有名なスポットである
階段脇のスペースは電話機が置かれた場所で、ここで話をされていたのだろう

この空間に惹かれるポイントは窓であるが、その窓から入る光をうまく調節しているのが吹抜の幅である

階段の幅より広い吹抜けが強い光をうまく調節している

また窓際に設けられた金の絵もポイントでこれが光を反射してさらに拡散させた光も作り出している

またバラガン建築の特徴でもある色彩も効いている
写真右側の壁はピンク色に塗られている
バラガン建築でもよく使われるピンクである
このピンクの壁に反射した光が全体をうっすら淡いピンクに染めている

階段は上面だけ黒く塗られている
階段に導く道標のようでもある

この階段にはあるべきものがないことにお気付きだろうか

手摺である
観光客向けに付けられたことがあるようだが、これがあるかないかで印象が全く違う

手摺は私もデザインだけを考えると付けたくないときがある
法律的にも義務付けられているので付けないわけにはいかないのだが、手摺をなくすことで昇ることへの緊張感が生まれるのだ

昇るという『行為』を伴うことでいきる窓であり、昇ることを演出する窓であるが

つまり昇るという行為とセットで意味がある窓なのである


バラガン邸の寝室の窓に設けられたこちらの扉も有名である

窓の前に付けられた扉を開けることで光が飛び出してくるような仕組み

窓を開ける『行為』を光の演出でデザインしたものである

カーテンのように左右に開くのではなく、手前に開くことによって光が向かってくる感覚になる

これも人の『行為』が窓デザインの元になっている


バラガンの建築には人が居るのだ

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