見出し画像

全体戦略の計画が先か、部分戦略が先か、の実際

こんにちは!米田 @ マーケティング変革実行中です。

プランを作るときに全体戦略から作るべきか、部分戦略から作るべきか、自分がプランを作ることを任されたらまずどこから作り始めようか考えるはずです。今回はその理想と現実を踏まえながら実際に使える手法を見ていきたいと思います。

フレームワーク活用の理想と現実

「プランの作り方」を学ぶ際には、まず「フレームワーク」を学ぶのではないかと思います。フレームワークとは、考えるべきポイントをまとめた規則・構造・アイディア・信念・思想などの体系のことです。論理的思考をサポートするためのフレームワークは、漏れなく、ダブりなく全体を網羅できる、つまりMECE (ミーシー)になるような体系が用意されています。

マーケティングのフレームワークであれば、たとえばSTP、4P、3C、SWOTなどです。また、フォーカスするドメイン・エリアを議論する際には、世界の国の一覧、もしくはAPAC、EMEA、AMERICAなどの地域名や、日本の中なら都道府県や首都圏・近畿・東海などの地域名、業種業態や業務課題の分類、年齢なら「…世代」のようなものまでがフレームワークとなります。それから一般的な論理構成や計画内容を確認するときに使うフレームワークとして、5W1H、PDCA、OODAループ等もあります。

そして教科書では、「プランを作るときはフレームワークを活用しながら、まず全体から作っていき、徐々に細部に掘り下げていく」と習うでしょう。まさにこれが「木を見て森を見ず」といった部分最適にならずに全体最適のプランを作る王道のやり方です。じっくり時間をかけてすべてのことを一からひとりで作る場合はこの方法でうまくいきます。

しかし、現実に目を向けてみると、大きな組織の中でプランを作る場合、「他の部門や人が他の部分のプランを作っている」「プランの中のこの部分は昔から決まりがあって簡単には変えられない」「プランを作っている他の部門のほうが力関係が上で、こちらから変えようと切り出せない」等、スタート地点がまっさら、かつ他のプレイヤーが居ない状態ではなく、実際には既に物事が結構進んでいて他のプレイヤーも居る中でのスタートとなることが殆どです。

また、新しいことをやり始めるにしても、自分以外にもプレイヤーが居て、他の部門でも自分と同じことを考えて少し違ったプランを連携がないまま作り始めている、そしてそれをお互いに認知していない、ということも多々あります。

このような場合、王道に従ってフレームワークに従って全体から作り始めた場合、なかなかステークホルダーの承認が得られなかったり、途中でプランの前提がひっくり返ってもとに戻ったり、作ったものが細部に落とし込んだときにうまく整合しなかったり、他の人のプランに統合することになったりと、全体フレームワークを作るだけで一苦労、下手するとこの部分で堂々巡りになって先に進まなくなります。このような事態に陥っているケースを現実には筆者も何度も見てきています。そして、プランを作る経験が長い人やそれなりの役職者の人でさえも陥っているケースが良く見受けられます。

フレームワークから一旦離れて部分戦略を考えることも大事

では、そのような状態に陥ったときにはどうすればいいのか。これはなかなか悩ましい状態で、簡単な答えが常にあるわけでもありません。このようなときに筆者がどのように対処しているかですが、全体像は見据えた上で一旦全体のフレームワークや全体戦略から離れてみることをやっています。

王道を忠実に遂行している人から見ると「あれっ!?」と思うかもしれません。ただ、王道を遂行してみて堂々巡りになる場合は、一旦離れてみるのが良いと思います。これにより、一旦無限ループから抜け出して状況を確認するのです。

大きな組織の中の複数の部門、複数の人でプランを作っていると、自分が思い描いたとおりにプランの作成と進行が行われない場合が殆どです。実際には過去とのシガラミや関係者同士の力関係によって、自分が思い描いたプランの一部分が採用される (もしくは全くされないこともある)のが現実です。

特にプランの最初に来る全体フレームワークの設計は競争率が高く、自分が感知していないところで別のことを前提にフレームワークを作っている、もしくは想定している人が居ることが多いです。また、全体フレームワークはあらゆる部分戦略といきなりうまく整合させるのが難しいために、完全なものを作り込むにはそれなりの時間と労力を要します。

そのため、ある程度全体フレームワークの基礎を作ったら、一旦全体フレームワークの構築から抜けて、部分戦略のプランを作り始めることを始めてみましょう

道標としての "不変なもの" に目をつけよう

とは言っても、全体フレームワークが完成していないのに、部分戦略なんて作り始められるのか、と思うかもしれません。もちろん、部分戦略が「木を見て森を見ない」プランになってはいけません。では、具体的に進めるのかというと、全体フレームワークが変更になったとしても "変わらないもの" を見つけ出して、その単位を部分戦略として進めることをお勧めします。

たとえば、課題ベースの提案を進める際に、そのキャンペーンの分類方法や展開地域のフレームワークが決まっていなくても、主力製品のメッセージングや販売戦略はどのみち進めなければいけないことで、全体フレームワークと並行して進めることが可能です。このように、 "不変なもの" を見極めて、それを取り出すことを行うと、これが道標となります。

ちなみに、 "不変量を見つける" ことは、科学の世界でも法則が分からないところから法則を導き出すときに行われる手段です。たとえばエネルギー保存の法則、質量保存の法則は古典科学の大きな柱となっていますし、光速度不変の法則は特殊相対性理論の柱となっています。社会科学では組織間でやり取りされる通貨の総量が変わらないことを前提とした場合に導ける法則があります※。

※厳密に言うと質量保存の法則も原子力エネルギーが関係する相対性理論の範囲になると成り立たなくなったり、金銭の総量も信用取引や中央銀行による通貨の発行が絡んでくると成り立たなくなります。ただし、保存則が成り立つ範囲で導かれることも多くあります。

フレームワークだけ定義して全体戦略を作った気にならないこと

あと、もう一つ述べて置かなければならないのは、とりあえずフレームワークに従って全体戦略を作ってみたものの、部分戦略とのすり合わせをしないで「絵に描いた餅」で終わってしまうパターンです。これもプランを作る経験が長い人やそれなりの役職者の人でさえもやってしまっているパターンを多く見ます。(多く見るというかこのケースのほうが多いかもしれません。)

このケースは、全体のフレームワークを "完璧に" 作ることに時間をかけすぎてしまい、それを作った時点で満足してしまう、もしくは力尽きてしまうパターンです。上層部への説明についても、ロジックは通っているので、一見そんなにツッコミを受けることもなくレビューが通ってしまう場合があります。しかし「論理的には正しいが実際には実行困難」ということに陥り、戦略の実行が行われることなく終わってしまうのです。

このようなパターンに陥らないためには、やはりフレームワークのドラフトを作った時点で、それ以上完璧さを追求せずに、それぞれの部分戦略を作成して実行可能性を検証しながら、より完全な全体戦略を作っていくというアジャイルなプランニングプロセスを回すことがお勧めです。

このように、全体フレームワークで煮詰まったら、一旦底から離れてフレームワークによらない不変な戦略を進めるといった両輪の進め方をすることで、時間や労力の無駄を最小限に抑えながらプランを進めることもできるようになってくるでしょう。

最後までお読みいただきありがとうございました!それでは、また!

関連記事:


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?