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マーケティング戦略から入るプランニングの予算計画法

組織におけるマーケティング機能を強化することで戦略的に売れる仕組みを実装する、そのための具体的なプランニング方法、そして従来のプランニングとの違いの具体的な内容を前回までの記事で見てきました。今回は、特に予算のプランニングにおいて、進め方をより詳細に見ていきます。尚、前提として富士通のようにマーケッターが数十人以上いる、割と大きめの組織を想定しています。

前回記事:

従来の予算計画

今回前提とする組織も、前回と同様、いくつかの部門から成り立っているマーケティング本部の組織を想定します。予算は管理部が本部長と一緒に本部全体の管理を行い承認を行います。

年度初めに、本部予算を策定するわけですが、従来の手法を取っている大抵の企業では、現場である各部に割り当てられている前年度予算が基準になっているでしょう。そして、各部が前年度予算を元に本部長と管理部に其々予算案を申請して承認を得ます。また、予算計画は年初に一度実施したら、年末までそのままの予算計画で実行する場合が多いでしょう。

各部門は前年度計画を元に個別に計画を提出して承認を得る

従来の予算計画の課題

従来の方法は、それぞれのマーケティングタクティクス (戦術)を今まで通りに実行するには便利な手法です。マーケティング戦術とは、年次の会社イベント、ウェビナー、デジタルキャンペーン等の個別の施策のことです。しかし、この手法には主に3点の問題があります。

  • 変化の激しい市場への戦略的対応が難しい: 売上を伸ばしたり利益を確保する必要がない、または毎年ビジネスをしているだけで右肩上がりに成長していく、という状況でない限り、変化する市場の状況に合わせてマーケティング施策も変わっていく必要があります。従来の手法では今までの踏襲が基本となるため、この変化に対応することが難しくなります。

  • 部同士の横連携の欠如: 各部が本部長とそれぞれ計画の申請、承認を行うため、隣の部では他の部がどういう申請をして承認を得ているのかがわかりません。そのため、お互いに関連する施策を実施していたとしても、横連携が生まれづらくなってしまいます。

  • 予算の使い残し: 各部で決めた予算計画で年末まで実行すると、施策によっては減額、もしくは実施しなくなった、などの計画変更が起こる可能性があります。大抵の場合、計画した予算よりも利用が遅れ、各部で予算の使い残しが発生します。下手をすると全予算の10%以上が無駄になることもあります。

結果として、全体としての戦略がなく縦割りで非効率という状況が生まれてしまいます。

マーケティング戦略のプランニングから実施する場合の予算計画

それでは、マーケティング戦略から実行しているマーケティング組織では、予算計画法がどのように違ってくるのか、見てみましょう。

再度のおさらいになりますが、マーケティング戦略から作る場合は、以下の図の右側で従来行っていた「戦略実行」の部分に加え、左側の「戦略作成」を前もって行います。右側のプランは新年度になってからでもよいですが、左側のプランは新年度になる半年前から準備を開始します。

マーケティング戦略の作成と実行機能の全体像

そして、できれば新年度になる前に「戦略」(ストラテジー) 部分の大まかな内容とリソース配分については戦略チーム (マーケティング戦略部と本部のリーダー) で予め決めて置きます。「戦術」 (タクティクス) 部分は新年度になってから現場で決めるという2段階の手順を踏むことになります。

戦略(ストラテジー)と戦術(タクティクス)の2階層で申請/承認を行う

たとえば、マーケティングで実施しようとしている戦略が「戦略A」「戦略B」と大きく2つあったとします。すると、マーケティング戦略部がこの2つのマーケティング戦略とリソース・予算配分案を予め作成して、本部長と相談して決めておきます。

つまり、リソース・予算は現場部門に渡さずに本部が中央で集中管理を行います。この中で、どの戦術同士が結びつくとか、どこの戦術に力を入れるとか、方針を決めておくことになります。この方針は必ずしも昨年度と同様とは限らず、各部への想定されるリソース・予算配分も昨年度が参考になるとは限りません

その後、年度が明けて現場で予算計画を練る際には、各戦術への大まかな配分案を元に現場調整を行います。また、縦割りにならないように関連する戦術には関連する複数の部を巻き込んで一緒にプランを行います。こうすることで、全体としての大きな戦略が生まれ、各部間での連携も行われるようになります。

この際、マネジメント側として重要なのは、最初に作成した戦略レベルでプランをしたことを元に現場に計画の権限委譲を行い、戦術のレベルでマネジメント側があまり口を出しすぎないことです。戦術レベルで従来どおり細かく口を出してしまうと、現場からすると今までよりもプロセスが複雑になり、二重でレビューされていると感じてしまうことになります。特に金額が大きい、または重要ないくつかの戦術は直接口を出すにしても、その他の多くの戦術については、現場の管理職・戦略リーダーに権限委譲をしてみましょう。

戦略に従ってアジャイルに配分される予算

また、各部門に紐づいていた予算を本部で中央化したことにより、予算もより効率的に使えるようになります。四半期決算を行っている企業も多いと思いますが、内部で利用する予算も四半期ごとの申請にする「アジリティ」のある運用に変更します。申請した四半期で使いきれなかった予算は年度末まで持ち越したり現場で再利用せずに、いったん本部に戻すという運用を取り、追加で出てきたニーズに対応するために本部の指揮の元、再投資を行います。

これにより、年度末の無駄な予算の使い残し、または「年度末の公共事業」的な消費にまわさずに、四半期ごとの急なニーズにも対応し効率的に予算を活用することが可能になります

このように、予算の運用1つとっても、マーケティング戦略のプランニングから入る手法の場合はだいぶやり方が異なります。

最後までお読み頂きありがとうございました。それでは、また!

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