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日々のエッセイ

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2019年から湖畔暮らし。自然、ヤギ、トリ、仕事、考え事の日々。
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2021年3月の記事一覧

春夜の真犯人

春夜の真犯人

夜中の1時をまわった頃のことだった。

ガタガタガタ……ガタタタタ……。

寝室でいつも通り夫と眠っていると、キッチンの方から急に物音が聞こえ出した。何か重たいものを動かすような、そんな音だった。

わたしたちは直感で泥棒だと悟った。家主が家にいる時に忍び込んでくるタイプの泥棒を「忍び込み」と言うらしいが、たぶんそれに当てはまるやつだと思った。

最近、近所でも寝ている間に現金が奪われる事件があち

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小鳥の巣箱と日常と

小鳥の巣箱と日常と

先週からうちの庭でウグイスが鳴き始めるようになった。ホウホケキョ、ホウホウホウ、ホケキョ、と可愛く澄んだ声。

ということは、今年もまた春がやってきてくれた証。生き物は不思議なもので、きちんと季節を察知し、自らの子孫を残そうと華やかな演出をする。

「ウグイスちゃんがずっと鳴いてるのねえ」

昨春、実家の母と電話したとき、母が言った。電話越しにこちらのウグイスの声がよく聞こえたようで、それだけでと

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井戸端会議の力

井戸端会議の力

これまで誰かとする世間話や噂話が苦手だった。どうもそういったネタの会話に費やす時間が有意義とは思えなくて、単なる無駄話だと感じてしまっていた。面倒くさがりなのかもしれない……。

例えば、「天気の移り変わりが激しいから体調気を付けようね」「そうだね」というやり取りや、「○○さんが最近結婚したらしいよ」「そうみたいだねー」というやり取りだ。

たぶん明確な目的がないままに成される会話や、既知の情報を

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町と食卓

町と食卓

小さな町のなかで新しい出会いがあると、とても嬉しい。

最近行き始めた小規模な農産物直売所がある。自宅から車で15分程度。これまでもその場所に直売所があることは知っていたけれど、別の直売所を利用していたし、わざわざ立寄ろうとは思っていなかった。

「たまにはあの直売所へ行ってみる?」

偶然その周辺をドライブしていた時に、夫が切り出した。

いいよ、と返事をした。この時はまだ、この直売所での出会い

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季節のものさし

季節のものさし

先週(2月23日)、気温がぐんと高くなった日があった。その時を境に、庭のふきのとうが一斉に地面から顔を出し始めた。

「あれ……?昨日はなかったはずなのに」

足元を見ると、透き通ったイエローグリーンの葉っぱがあっちにもこっちにも生えている。ふきのとうはお喋りしないけど、正確にお知らせの鐘を鳴らしてくれているように思える。

「いいですか奥さん、そろそろ今季の冬も終わりですよ」

***

もうす

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