iPhoneで撮るアメリカの古都・ボストン〜⓵ 2020年前半、私たちはパンデミックをどう生きたか?

画像1 2020年3月13日金曜、ドナルド・トランプ大統領は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、国家非常事態を宣言し、長く困難なパンデミック下での生活が始まった。マサチューセッツ州ではこれに先立つ3月10日に初めての市中感染が確認され、チャーリー・ベイカー州知事により非常事態宣言が出されている。ボストン・パブリックガーデンのダック達もマスク着用。
画像2 ケンブリッジ市ターゲット(大型小売店)(2020年3月12日水曜午後7時)2020年3月11日水曜、WHOは、感染拡大の状況、重症度などから新型コロナウイルス感染症をパンデミック(世界的な大流行)の状態と認定した。アメリカ国民は直ちに一斉に反応。衛生用品(ハンドソープやサニタイザー、左の棚)やトイレットペーパー(右の棚)は品切れになる。衛生用品は「1人6個まで」と張り紙がされているが、在庫は0。トイレットペーパー不足が起こり、代用の「紙」で用を足してトイレを詰まらせる事件がアメリカ中で頻発するようになる。
画像3 ケンブリッジ市ターゲット(大型小売店)(2020年3月12日水曜午後7時)この時点でのマサチューセッツ州感染者は108人だが、州知事の説明によると検査で200人以上の陽性が確認されていたという。食料品も棚から消えてくる。パンの棚はほぼ品切れ、ミルクなども品薄となってきていた。この翌日3月13日、ドナルド・トランプ大統領は国家非常事態を宣言することになる。
画像4 ボストン市ホールフーズ(2020年3月19日午後6時)普段なら、並べられたパンを、紙を使い取るが(右は2024年現在)、左の写真のようにビニルに個装されるようになった。これに先立つ3月13日には、州知事の命令で、マサチューセッツ州で250人以上の集会が禁止され、3月15日には25人以上の集会が禁止され、レストランでの会食も禁止となっている。外食産業の長い苦難が始まった。3月16日には、建設工事が停止になり、17日よりは鉄道やバスが減便になった。
画像5 ボストン市ホールフーズ(2020年3月19日午後6時)普段なら、並べられたトレイから料理を選んで好きなだけとるが(右は2024年現在)、これに先立つ3月15日のレストランでの会食の禁止を受けて、サラダバーは閉鎖されている(サラダバー自体が禁止になるのは3月25日)。3月16日から17日にかけて、感染者が4倍に跳ね上がり、病院でマスクなどの医療資源が枯渇し始める。州兵2,000名が動員されたのもこの日である。
画像6 ボストン市のスターマーケット(大型小売店)(2020年3月19日水曜午後6時)中央の但し書きに、卵、ミルク、ハンドソープ、ハンドサニタイザー、掃除用具、水、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、ペーパータオルは1人2つまでとしているが、これらの物品は入荷すれば即品切れで手に入らなくなっている。3月17日より学校は閉鎖、4月に控えていたボストンマラソンが延期されることも決定された。マラソンの延期は史上初だ。
画像7 マサチューセッツ総合病院(2020年3月20日午後7時)3月19日以降、面会者は立ち入り禁止、医療従事者のみ立入許可の状況となった。病院の入り口は1箇所だけに制限され、交通制限が敷かれている。写真では、中央写真の通用口が閉鎖になっている。右の正門のみが交通整理の上病院に入れるようになっている。この日3月20日、マサチューセッツ州では初めての感染による死者が報告されている。この頃、ボストン市の基幹病院はニューイングランド地方の感染患者を一手に引き受けており、医療従事者の長い苦難が始まる。
画像8 ボストン地下鉄グリーンライン(2020年3月24日午前9時)上の写真では、中央右よりに運転席があり、運転手に感染させないように、その付近の座席の使用禁止のサインがある。また、乗車に後部ドアを原則使うように決められた。この頃、州の感染者はのべ1,159となり、死者も新たに2名報告されている。感染者の行動を解析し、濃厚接触者の特定などが電話インタビューで盛んに行われた時期である。濃厚接触者に認定されてしまうと、外出はおろか、家庭内での隔離をすることになった。
画像9 ボストン地下鉄レッドライン(上)グリーンライン(下)(2020年3月24日午前9時)写真では、中央奥に運転席があり、運転手に感染させないように、その付近の座席の使用禁止のサインがある。報道される感染者数に市民は神経質になり、感染者がどこに出た、などの情報もかなり早く回っていた。2月1日の中国を筆頭に、3月12日ヨーロッパ、14日イギリスに渡航規制が出ていたが、ついにこの日24日、カナダ、メキシコ国境に規制がかけられた。
画像10 ボストン地下鉄グリーンラインパークストリート駅(2020年3月24日午前9時)人の接触を減らすためのバリケードが置かれている。3月23日、州知事は3月24日より自宅待機命令を出し、もし出かける場合には「社会的距離」をとるように、との指示を出す。不可欠でない仕事は在宅に移行、レストランやバーはテイクアウトか配達だけということになった。サラダバーなどは完全に禁止になった。右の写真はクーリッジコーナー駅(午前11時)人っこひとりいなくなる。右、距離を取ること、手を洗うことなどが掲示されている。
画像11 ケンブリッジ市のトレーダージョーズ(スーパーマーケット)(2020年3月24日午前10時)いわゆる「ロックダウン」が遂に始まり、食料品などの買い物だけが外出の理由となる。建物内の密度が社会的距離の導入により規制され、入り口で入場制限が敷かれ、レジを待つ時もラインで待つようになった。店舗入り口の係員に注意。この時点では、マスクは強制されていない。アメリカ人は、相当風邪をひいていてもマスクをする習慣はなく、抵抗感が相当なものだった。この頃からマスクをしている人もかなり見られるようにはなってきていた。
画像12 ケンブリッジ市ターゲット(大型小売店)(2020年4月1日水曜午後2時)州知事により、3月25日より社会的距離が強制され、ついに6フィート(180センチほど)の基準が施行された。職場や店舗では、手の消毒、社会的距離のためのレジ待ちの列の床のサインなどが義務化された。また、高齢者が買い物をする時間が設けられ、65歳以上でないと買い物ができない時間帯が設定されたのもこの日だ。写真のように、レジを待つ間、床のサインに立たなければならない。マスクはまだ強制されていない。
画像13 ボストン地下鉄パークストリート駅(2020年4月1日水曜午後2時)いつもは賑わうはずの地下鉄駅に誰もいない。右は2024年現在。この頃、ニューヨークでは感染者や死者の急増に合わせ、大規模な臨時の治療施設が設置されていた。ボストンでもマーティ・ウオルシュ ボストン市長がシーポートのコンベンションセンターを500ベッドの臨時病院とすることが決め、この病院は4月2日、ボストン・ホープ(Boston Hope)と名付けられた。500人の医療従事者がこれまでに感染したことも明らかになっている。
画像14 ボストンサイエンスパーク駅付近(2020年4月1日水曜午前11時)普通日の朝なのに、車が見当たらない。右は、2024年2月水曜、同様の時間帯。通常渋滞するスポットだ。4月5日、ウオルシュ ボストン市長はボストン市民に午後9時から朝6時まで外出を控えるように依頼し、初めて「マスクを奨励」した。未知のウイルスによる感染の初期であったため、情報も交錯しており、不安から自宅待機命令はかなり守られていたようだ。
画像15 ケンブリッジ市の韓国系スーパーマーケット(H-Mart)(2020年4月1日水曜午後2時)ここには日本、韓国系のフードコート(ファーストフードを外食できるスペース)があるが、3月23日のレストランでの食事禁止令のため、フードコートが閉鎖されている。サラダバーなどは完全に禁止になった。右のレジでは、6フィートの社会的距離の注意書き、設置された感染防止のアクリル板などが見られる。それまでは、エコバッグを使って資源節約を促し、ボストンではレジ袋が有料化されていたが、これを受けて買い物袋の使い回しが禁止に。
画像16 H-マート(2020年5月2日)4月12日、大きな感染の波到来。マサチューセッツ州では、ニューヨーク、ニュージャージー州に次ぐ第3位の感染者25,475を計上する。州知事により、4月21日には、学校の今年度終わりまでの閉鎖が決定される。5月6日より社会的距離が6フィート取れない状況でマスクが強制となり、マスク時代が到来する。スーバーでの買い物は、高齢者専用時間が終わった10時以降に開始。長い列ができている。人数制限のため、順番で入れ替わり買い物する。入り口の手の消毒、6フィートの距離はすっかり定着した。
画像17 ボストンパブリックガーデン(2020年5月24日)公園の入り口、6フィート距離を取り、マスク着用を義務付けている。感染はピークアウトしてきていたが、基本的に経済を止める自宅待機は伸び伸びで続いており、この頃よりロックダウン反対の運動が見られ始める。5月8日ボストンウオルシュ市長は9月までパレードや祭典は一切ボストンでは行わないと決定する。
画像18 ボストンコモンのスターバックス(2020年5月24日)5月11日、感染者の減少を受け、州知事は4段階の経済再開の方針を示す。ただ、感染は少なくなったとはいえ、死者もまだ多く、第2波、第3波が予測されており、仕事や娯楽の環境には消毒、マスク、社会的距離について細かく規定され、大きな制約がかけられており、リモートワークを続ける人が7割ぐらいの感覚だ。飲食店の規制は解除されておらず、ここでは店内には入れず、オンラインでオーダーされたものが外の机に置かれ、それをとってゆく形となっている。
画像19 TDガーデン(2020年5月26日)感染はピークアウトしてきたものの、医療従事者の燃え尽きが盛んに報道される。(左)医療従事者の着るスクラブを着せられたボビー・オアの像。円形のブルーインズのロゴが、医療従事者への愛情を示すハート型になっている。(右2020年8月)マサチューセッツ総合病院のハート。
画像20 ボストン地下鉄レッドラインチャールズ駅(2020年6月12日)5月18日には、公共交通機関を使うものにマスクが義務となり、5月28日には、今年のボストンマラソンがキャンセルされることが発表された。
画像21 ケンブリッジ市のサンドイッチ店とスターバックス(2020年6月13日)この時点ではまだインドアの営業が許可されておらず、店の外で「社会的距離をとって並び」オーダーを受け取る形。
画像22 エーコンストリート(2020年6月14日午後2時)左、人が訪れず、草むすエーコンストリート。普段なら、6月のボストンは観光シーズンなので、訪問者でごった返し、草が生えることはまずない。経済活動が制限付きで再開され始め、これを受けて感染防止のための旅行制限が始まる。右は観光客が戻った2022年8月のもの。
画像23 チャールズストリート(2020年6月21日)経済が再開されたとはいえ、平常の客足は当分戻る気配がなく、政府の援助はあったとはいえ、先行きの不透明感から、この頃からビジネスを閉じるケースが多く見られてきた。
画像24 チャールズストリート(2020年6月21日)マサチューセッツ州では2020年6月には国内最高の17.4%の失業率を記録し、不安が高まっていた。経済再開に伴い、店内に入る場合にはマスク着用を義務とした。恐る恐るだと思うが、商売を止めているわけにもいかないので切実だ。マサチューセッツ州の感染率は国内で最低を記録していたが、まだ高い感染数が報告され続けている地域もあり、警戒しながらの再開だ。
画像25 上、サウスボストン(2020年6月23日)下、ノースエンド(2020年7月2日)経済再開フェーズ2ステップ1により、小売店の営業やレストランの外での開業が6月8日より許可され、ステップ2の6月22日からはレストランもインドアの営業も許可されるようになった。ただし、密度や距離の制約があり、狭いボストンのレストランでは店内での営業ができないケースが多く、暖かい季節なので、道に多くのレストランの席の設置が許可され溢れることとなった。
画像26 料理は通常の皿に盛られてきたが、パンが使い捨て紙袋に個装されて出された。また、メニューは使い捨ての紙に印刷されていた。のちに、QRコードで自分の携帯で見る方が主流となるが、紙のメニューも2022年ごろまで頻繁に頻繁に見られた。
画像27 ノースエンド(2020年7月2日)ノースエンドは234エーカー(東京ドーム20個分ぐらい)ほどの小さいエリアであるが、200以上のイタリアンレストランがひしめいており、イタリア人コミュニティも健在。6月22日から制限付きで屋内でもレストラン再開が許可されているが、この辺りの店は狭いことが多く、夏のいい季節も手伝って外の通りで営業するレストランが多かった。
画像28 ニュートン市ぺトコ(ペットショップ)(2020年7月18日)社会的距離を保つため、動物を見せたりすることはできないことから、普段なら動物がいるはずの棚から、ペットは全て撤去されてしまっている。
画像29 ボストン湾フェリー(2020年7月18日)経済再開により、一旦停止されていたボストン湾を巡るフェリーもフェーズ2ステップ2の6月22日より再開されるが、チケットカウンターはアクリル板で囲われ、社会的距離やマスクは強制されている。再開したものの、乗っている人は少数。
画像30 ボストンシティホールスターバックス、ニューベリーストリートアモリノ(イタリアンアイスクリーム店)(2020年7-8月)経済再開により、店内での飲食もフェーズ2ステップ2の6月22日より再開されるが、6フィートの社会的距離、6人まで一緒の会食、25%の密度制限やマスクは強制されている。カウンターはアクリル板で囲われ、人と接する店員のガードも非常に固い。

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