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心と身体は一体である。 『マインドフル・ボディ』【毎日マインドフルネスで「運が悪い」を変える生き方32】

日常生活のなかの、いつもの「運が悪い」を、マインドフルネス習慣によって変えてみませんか?

前回の記事では、健康になるためには、ストレスの捉え方を変えることが大切だということについて書きました。

予測したところで結果的に思った通りにはならない、確実ではない、すなわち「不確実」であるということが「ストレス」になるということに関して、「マインドフルネスの母」とも呼ばれているハーバード大のエレン・ランガー教授は、『マインドフル・ボディ』という著作のなかで、 

「予測や推測が可能だというのは幻想にすぎない。それを忘れがちなのは、私たちがマインドレスだからだ」


とし、「多くの可能性にマインドフルに向き合えば、推測は実際には難しいということも納得できる」が、「ものの見方が硬直化していると、推測の誤りは見過ごされて、推測が可能だという幻想を持ち続けることになる」と述べています(注1)

そして以下のように述べていることは傾聴に値します。


ものごとの不確実性がしばしばストレス源になるというのは確かである。しかし、変化こそが常態であることを受け入れれば、その不確実性のパワーを有利に使うことができる。誰一人、本当に確かなことを知っている人間はいない。すべては常に移り変わっているのだし、同じことも別の視点から見れば違って見える。それを悟れば、何かが確実でなくても、大してストレスにはならない。(216頁)

 エレン・J・ランガー『マインドフル・ボディ』 高橋由紀子 訳 216頁

確実性などは幻想なのだと気づくと、自信をもって、不確実なままでいられる。
 健康のカギは、おそらくこの不確実性を受け入れることで、そこに有利な点を見出せる。マインドフルに身体の変化に気づくことが、健康的な身体作りの第一歩だ。

同 217頁


エレン・J・ランガー『マインドフル・ボディ』 高橋由紀子 訳
エレン・J・ランガー『マインドフル・ボディ』 高橋由紀子 訳 徳間書店

また「心こそが健康を決める主要な鍵であることと、心の持ちようを変える簡単な介入によって健康を劇的に改善できる、ということを示すために」研究を始めたというエレン・ランガー教授は、「マインドフルネス」を、

「積極的な気づき」という単純なプロセスであり、特に瞑想を必要としない」

とし、

マインドフルである時、人は気づかなかったことに気づき、知っていると思っていたことを実はよく知らなかったのだと悟る。すると、すべてが興味深いものとなり、そこから新たな有用性が見出せる。

とも述べています。

そしてエレン・ランガー教授が「私が「マインドフルネス」という言葉を使う時は、これが重要な点だが、身体の状態にも言及している」とし、

 心と身体が一体だということは、私たちがしたり、経験したり、考えたりすることのすべてが、健康に関係するということだ。

 心と身体が一体であるなら、心を変えることによって身体を変える」だけでなく、「身体を変えることによって心を変える」こともできるだろう。

というような「心と身体の一体性」について言及しています。


「心と身体の一体性」とは、簡単に言えば、「心」と「身体」は「一体」であるため、そもそも別のものとして区別出来るものではなく、お互いが影響し合う、切っても切り離せない関係にあるということなのですが、ランガー教授は『マインドフル・ボディ』のなかで以下のように説明しています。

心と身体は一つのシステムを成していて、人間に起こるすべての変化は基本的に、心理レベル(認識の変化)と、身体的レベル(ホルモン、神経、そして/あるいは行動の変化)で、同時に起きている。この「心と身体の一体性」という考え方を受け入れると、健康をコントロールする新たな可能性が現実のものとなる。マインドフルな身体のパワーを活用することは、決して難しいことではない。

エレン・J・ランガー『マインドフル・ボディ』 高橋由紀子 訳 4頁)


エレン・J・ランガー『マインドフル・ボディ』 高橋由紀子 訳

またランガー教授は「マインドフルネス」を「健康」に活かすカギは、「変動制」に注目することだと言います。

この「変動制」に注目するとは、

 健康状態や症状は、細かく注意を払って見ると、たとえ僅かでも良くなったり悪くなったりすることがわかる。健康コントロールのカギは、そういう僅かな変化に気づくことにある。

と述べられているように(注2)、分かりやすく言えば、血圧や血糖値、体温といった、健康かどうかを判断するための数値は一定ではなく、痛みやかゆみなどの症状も含め、身体の状態は常に変化しているということに気づくということです。

つまり、血液検査などで一部の数値が高すぎたり低すぎたりして落ち込んだとしても、もしくは痛みやかゆみといった症状が体の一部にあって不安を感じたとしても、ずっと同じように続くわけではない……すなわち常に変化しているということに気づくだけで、健康に対するコントロール感覚が増し、ストレスを減らせるということなのです。


 身体に生じる感覚、その強さや持続時間の変化、それに1日のうちの何時頃という外的情報を認識すると、自分の経験や感情に関する気づきが増える。身体のどの部分に症状が最も出やすいか(あるいは出にくいか)、感覚が時間と共にどう変化するか、その変化が行動にどう影響を与えるかなどだ。これらの変化に気づくことにより、私たちは自らの健康に対するコントロール感覚を取り戻す。すると症状はより耐えやすいものになる。

(214頁)

 簡単に言えば、変動制に注目すると、症状は出たり引っ込んだりするものだということがわかってくる。すると、その変動に関与していそうな状況や環境が見出せて、それは何らかの形でコントロールできると気づく。こうして自分の身体に対するコントロール感覚が強まると、今まで考えつかなかったような解決策が現れる。同時に楽観性が増し、ストレスが減るので、健康状態全体も改善されるのである。

(215頁)


「セルフ・コンパッション」の習慣が健康に寄与する。

もうひとつ、「健康」になるためには、「マインドフルネス」に加えて、自分自身を思いやる「セルフ・コンパッション」を実践するのもオススメです。

コンパッション」とは、表面的な共感や同情のことではなく、思いやりや慈悲の心、他者を気遣い幸福を願う気持ちのことなどを指しますが、普段から自分自身や他人に対して、ダメ出ししたり否定的になったりするのではなく、慈しみや思いやりの気持ちを持って接するよう心がけると、日常のストレスにうまく対処出来るようになることにつながります。


先日Kindle出版いたしました電子書籍のほうではより詳しく解説していますが、「運が悪い」を変えていくために、この「セルフ・コンパッション」も実践してみてはいかがでしょうか?


注1 『マインドフル・ボディ』 エレン・J・ランガー 著 高橋由紀子 訳 徳間書店

 予測や推測が可能だというのは幻想にすぎない。それを忘れがちなのは、私たちがマインドレスだからだ。ものごとはもう少し複雑だ。たとえば、誰かがあなたに気がありそうな様子を見せていると思えば、あなたは相手が自分をデートに誘うと推測するだろう。だが、相手は自分をからかっているに過ぎないと考えたら、デートに誘われることはないと推測する。そして、そもそもどちらか確信が持てなかったら、その場合は何の予測もしないだろう。
 どんな状況も行動も、さまざまな解釈が可能である。こういう「不確実性」を理解すればするほど、推測をしないようになる。そして、多くの可能性にマインドフルに向き合えば、推測は実際には難しいということも納得できる。逆に、ものの見方が硬直化していると、推測の誤りは見過ごされて、推測が可能だという幻想を持ち続けることになる。

(46頁)

注2 前掲書

 健康状態や症状は、細かく注意を払って見ると、たとえ僅かでも良くなったり悪くなったりすることがわかる。健康コントロールのカギは、そういう僅かな変化に気づくことにある。変化に気づいて、それがどうして起きたのかと考え、仮説を立てて改良を試みれば、どんな病気にも大きな効力を発揮する。だが、症状は不変や悪化のどちらかだと思い込んでいれば、自分には身体をコントロールする力があるということに気づくチャンスを逸してしまう。

(206頁)


次回へと続きます……😊

お忙しい中ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます(^^♪




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