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水が好きなASD/ぜんぶ海に流れていく

ASDの当事者本でわたしの好きなもののひとつに、横道誠の『みんな水の中』という本がある

わたしもASDの御多分に洩れず、ゆらゆらとゆれる水や醒めたブルーがだいすきである

わたしが思うASDの特徴のひとつ(HSPとの違い)は、こだわりという点だ

何かがすき、好ましい、という感情と、この不快さにも似た、ある種狂おしいようなこだわりという感覚は、ずいぶん違う

満たさずにはおれない、というような

わたしは水がすき

水に対してこだわりがある

水の中でゆらゆらとたゆたっているのがすき

ゆらゆらとゆれる海をぼんやりと眺めているのがすき

ひんやりとした水の足にまといつくような感触

溶けていく、と思う



いま、わたしは人生ではじめて沖縄に来ている

4月の沖縄は、すでにじっとりと汗ばむほどの陽気で、熱帯のむわっとした湿気に満ちていて、でも暑すぎるわけでもなく、とても過ごしやすい

飛行機に乗る前は、しとしとと雨が降っていて、ひんやりと肌寒く、夫の海外出張とワンオペ育児で心もからだも疲弊していたから、嘘みたいな静けさである

海辺で、海水浴をしている夫と娘を眺めながら、椅子に寝そべっていると、風に溶けていく、と思う

風にはためくパラソル

足にぱらぱらとまといつく乾いた砂

空は曇天で、暑くも寒くもなく、わたしはすべての服の中でいちばん気に入っている、ノースリーブのシンプルなワンピースと、スポーツサンダル、それにくしゃくしゃに折りたたんだ麦わら帽子をかぶっている

特に決まった予定もなく、ただのんびりするためだけの旅で、この間延びするような、なにも強いられない時間の歓びはなんともいえない

いつもがちがちに凝り固まった心とからだが、ゆるゆるとゆるんで、ほどけていく


この旅の直前のわたしのメンタルはボロボロで、次から次へと押し寄せる強迫観念的な不安に呑まれて、ギリギリまで張り詰めた糸のような不安定な精神状態で、ふとした拍子になんでもないことでしくしく泣いたり、不安と苛立ちで怒鳴ったり、とにかく骨まで浸すような深い疲労と緊張だった

それが、ぜんぶ水に流れていく

骨までほどけていくようだ



現代における問題点は、「ちゃんとした大人」になるためには、わたしたちはとにかくやることが多すぎるし、求めなければいけないものが多すぎるということだ

本当はそんなに必要ないのに、次から次へと求めるように急き立てられている

仕事や家庭はもちろん、余暇や休日の過ごし方まで、あらゆるところに「至高」のモデルや最適解が提示されており、わたしたちは常に多くを求めるように求められており、ほとんど自分本来の欲求だと勘違いしてしまうほどた



よく晴れた真っ青な海もすきだけれも、曇天のときのぼんやりと濁った海もすき


ストレスがないから、あの病的な食欲や買い物欲もなく、
お菓子もなんにもいらないという感じで、自分がちょうどよく満たされているのがわかる

海にいると、自分がほんとうは欲しいものをすでに全部持っていて、これ以上なにも必要ないことがよくわかる




そろそろ海風に長くあたって、からだがだるくなってきた

心地よい疲労感と倦怠感

それでは、また今度

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