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スリランカで落とした一粒の涙〜終わりは始まり〜

スリランカの話は最初から読んだ方が分かりやすいかも🦆 読まなくても読めます
https://note.com/sino_no_me/m/mabb0ff1ff657

私の行動は早かった。

ロベルタとルーカスがコロンボから南へ約120km離れた『ゴール』という街へ行ってしまい、その翌日には、私もゴールへと向かっていた。

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私にとって2人がいないコロンボにこれ以上滞在する理由が見つけられなかったし、ひとりで過ごす時間には虚無感が募っていく一方だった。

“ゴールで別の友達と合流する”と言っていた彼らのジャマはもちろんしないものの、同じ街にいるだけでも良かったから。

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ゴールは青い空がとびきり似合う小さな旧市街。南の島らしいビーチ、背の高いヤシの木、リゾート地という感じではなく素朴な街に海が隣接しているという感じで、仰々しさがなく心地よい。

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イギリスやオランダの植民地時代の名残があるコロニアル調の建物は青い空に映えて、その白さが一層際立つ。乙女心に火が付くような色とりどりの建物が並び、テンションが上がる。

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……のは、束の間。

予約していた宿に行ってみると、元気を吸い取られるようなボロさ。ゴールの宿代はこれまでの街と比較してもやや高めの相場。不衛生でなければ古めいたところでも泊まれる私なのに、不衛生感がどこかしらか出ていてどこにも座りたくない。

私の居場所がない。

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部屋にステイする気になれず、早速、街をぶらりとすることにした。欧米人の観光客も多く、それに見合うような可愛らしいお店が連なっているのに、なんだか心が満たされない。ふらりと入ったご飯屋さんの“ミートソースパスタ”が、全然ミートソースパスタじゃなくて寂しくなる。

ひとりでお散歩するのも、ひとりでご飯を食べるのも、義務的にこなしてしまって中身がない。

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あっという間に夕方になったので、夕陽スポット『ポイントユトレヒト砦』へ向かう。

海岸沿いの砦に立つ高さ18mの真っ白い灯台は、その白さに淡いピンク色が反映し、夕陽の柔らかさが優しくて染みる。

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果てしなく広がる海を包み込むような空には幻想的な白いモヤがかかり、たくさんの人たちがその様子を眺めている。

スリランカではこのような夕陽に染まった色を「サマラカラー」と呼ぶらしい。夕陽があまりにも大きく、街にまでその色が広がっているのが分かるほどだ。

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多くの地元の人たちが、それぞれの時間を過ごしながら夕陽を見送っている。私は海岸沿いを歩きながら、遠目に見えるレストランのオープンテラス席などを眺める。ロベルタとルーカスは、きっと今頃お酒を片手にこの夕陽を見ているに違いないと思って。

そんなつもりはないのに、姿を探す。

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あれ?
遠くに見えるあの人、ロベルタじゃない!?

その人の顔を認識したい一心で、めちゃくちゃ目を細める。

あれ、絶対ロベルタだよ!

そんな確信を自分勝手にしたりするが、そんなわけもなく、そう思いたい気持ちが強過ぎて錯覚まで見えてしまった。別れた恋人でも探すかのような気持ちでロベルタとルーカスを探しながら海岸沿いに座り、ひとり緑色のアイスキャンディを食べる。

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あのボロボロな部屋に帰りたくない私は、行くところも帰るところもないし、居場所もないし、会いたい人に会えない。サマラカラーを浴びるアイスキャンディが、一口一口なくなってゆくことにまで寂しさを覚える。

近くで戯れている白い服を着た子どもたちの美しさだけが、心を穏やかにした。

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私はひとり、落ち着かない不衛生そうなベッドに横たわり、眠る。私は結局、コロンボでもゴールでも、ロベルタとルーカスがいなければ意味がないことを身に染みて感じていた。

同じ街にいるのに会えない寂しさは、同じ街にいなくて会えない寂しさよりも勝ってしまった。

「せめて彼らがいる街へ…」というフットワークの軽さはなんのポイントにもならず、有終の美を飾るようなゴールを決めることもできないまま、私の旅は終わった。

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「“ユークレイン”から来たんだ」と、スリランカ初日に言われたとき、そんな国初めて聞いたぞ、そんな国あったっけ、って思いながら調べもせず、途中で『ウクライナ』のことを英語で『ユークレイン』と言うことを知って驚いた記憶がある。

私の初めてのウクライナの友達、ルーカス。

英語を話さないルーカスとは連絡先を交換していない。このスリランカの旅記事を、偶然にも『ロシアとウクライナ』なこのタイミングで書いていなければ、ルーカスがウクライナで生きていることを思い出すこともなかったかもしれない。

ロベルタは元気かな。出会ったときは本当に怪しいヤツで抵抗感しかなかったけど、間違いなく「私のスリランカ=ロベルタ」だよ。いや、この旅の思い出は、スリランカ以上にロベルタだよ。

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私が過ごしたスリランカには、夢とか幻とか、現実があった。

夢のように楽しい時間、幻のように過ぎていった日々、悲しみや寂しさは存在すると言う現実。

スリランカは私にそんなことを教えてくれた。

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〜fin.〜


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