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ふわり湯気をみつめながら――感謝を込めて【エッセイ】

 きょうは本当にさむいなぁと思って、リビングから寝室に逃げ込んだ。それから、掛け布団やら毛布やらをふかふかに抱き寄せて、からだを預けてみたら、包み込まれたみたいにやさしいソファに早変わりしてくれた。

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 寒さには、出し惜しみはしない。外に出るときも、マフラーに、レッグウォーマー。バッグにはいつも貼るカイロを忍ばせてある。なぜなら、まだ体が「分かりました、冬なんですね!」と思い切れていない、今のような時期を狙いすまして、あの冬将軍の右腕である名軍師マジ・サムスギールが、毎年、巧妙な罠を、そこかしこに張り巡らせているせいなのである。

 さてさて、その罠とは何ぞや。たとえば「あああインナー、長袖にすればよかったああ!」であるとか、「着込んだら電車の中が思ったより暑くって、降りたあと汗が冷えてふるえちゃったよ!」であるとか。これらは、ほんの一例に過ぎないのだけれど「ああもう……さむいんですけど?!」と思うことのすべてがじつは奴の、マジ・サムスギールの仕業なのだ。

 毎年、奴の罠にまんまとハマってしまい、その度に悔しさが込み上げてくる。でも「おのれぇ……!」と奴のことを考えると、結果的に力が入って、不本意ながらも体があたたまってきたりもするのである。もしや、これも織り込み済み? ふ、食えぬ奴よのう。だがしかし! やはり限界はくるのだ。それも近日中に、カミングスーン。だからその前に、ささやかでそれでいて着実に、こちらも策を講じなくってはいけないのだ。んあぁ、さむいさむい! なんか変なこと書いちゃうくらいさむい!

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 ……はぁ。

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 あったまりたい。

 お薬は白湯で飲むようにしてるし、ご飯のときお味噌汁にふうふうと口をつけて、じんわりと沁み入るように「あったかいなぁ」と感じたりもしてるけど、まだまだ足りなくて。

 なんでもない、ふとしたタイミングにも「そうだ、あたたかい飲みもの……」と、そう思うように心がけて、よくコポコポとお湯を沸かすようになった。

 コーヒー、紅茶、緑茶にルイボスティー。どれにしようか迷いながらも、自分が飲みたいなぁと思ったときには、ついでみたいにして「ねぇ。みんなも、何か飲む?」と声をかけるようにしてる。

 声をかけてみると「あっ飲みたい。もらおうかな」って言ってもらえることも結構あって。それに、淹れて「はい。熱いから気をつけてね」と言って手渡した飲みものを、飲んで一息ついているのを見ていると、なんだか、とても嬉しいのだ。

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 そう、嬉しい。それも心から嬉しいと思えることが、このところ数え切れないくらい起きていて、日々つらく塞いでしまいそうなとき、その嬉しさが、ぐうっと支えになってくれているのを感じています。

 作品にあたたかいコメントを寄せていただいたり、おススメ一押しのbutajiさんの音楽をすごくすごく気に入っていただけたことがあったり、ぼくの作るもの書くものの「ファンです」とまで言っていただけたこともあって。

「うわぁ……!」という気持ちになってサポートさせていただいたら、お忙しいなか返信いただいて、しかも思いもしなかったような、とんでもなく嬉しいおことばをいただいたりもして。

「あぁ、いつも読んでいただいてるんだなぁ」と、じんわりと、しみじみしてしまったり。

 そうした嬉しいことのひとつひとつがぼくの芯のほうの、心なのか、未来を作っていく部分なのか、分からない……とにかく大切な場所に、消えないあたたかさになって、ずっと残っているんです。いつか流れてしまうはずだった涙が、流れずに留まって、灯っているのかもしれないなと思います。だから、体感的には「さむいさむい!」なんですけど、踏ん張りたいな、と思えます。本当に、ありがとうございます。

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 ぼくはたぶん、いろんな場所で、いろんな出来事にあうたびに、まず、自分の気持ちに耳を傾けて、それがどんな気持ちであっても、ひとまずは認めてあげなくちゃいけないんだなって、ようやく気づいたんだと思います。

 それが嬉しいことでも、悲しいことでも、やりたいことでもやりたくないことでも、おんなじ。それを一番大切にしなくちゃいけない……というか、やることは、ぼくにできることはたったひとつ、それだったのかもって、やっと、分かったのかもしれないです。

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 なんだか、書いていたらだんだんあったかくなってきました。不思議です。ことばは、やっぱりどこか足りなくて、だからこそ、これからも書いていきたいなと思います。

 お茶を、淹れようと思います。なにがいいかな。ルイボスティーに、しようかな。

 あっ、おしまいにひとつだけ。ヌテラというヘーゼルナッツの風味がなんとも香ばしい、チョコクリームのようなものを最近買ったのですが、それをあたためたミルクにとかして飲むと、とっっってもおいしいんです。「幸せって、飲めるんだ……」と思わずつぶやいてしまいました。スーパー等にあるかと思いますので、よろしければ是非是非。

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 読んでいただき、本当にありがとうございました。かなり、たっぷりめのnoteになってしまいました。寒暖差しんどい時もありますが、あたたかく過ごしていきたいです。

 しんきろう