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はたと気づく

部屋の掃除をしていて、ふと目に止まった文庫本。一度読了した事は覚えていても、その内容を鮮明に思い出せなくて、つい開いてしまって読み耽って、はたと気づくのです。掃除をしていた事を。なんてウッカリとした午後は静かな幸せを感じます。

この半年少しずつ着実に、不用品整理をして身体を動かす毎日。あっちこっちにバラバラにストックされたDIY素材の再整理、各方面からいただいた膨大な着物、衣装の類を再精査、売ったりあげたり、本やCDも大量にブックオフ。

持ち物から、自分の趣味嗜好、価値観が変わっている事に気づく事もしばしば。部屋は箱庭、持ち物はその人のパーソナリティを移す鏡。自己分析に部屋の整理整頓はとても有効だと思っていて、突発的に部屋の掃除をしたい気分の時、自分が大きな変化を受け入れようとしているサインなのだと、私は考えています。

大量にブックオフった本達。文庫本小説がとにかく好きで、一度一人の作家にハマると手に入る作品の全てを読まないと気が済まないタチでして、図書館に行けばいいのにといつも思うのですが、まだ読んでいないタイトルをずらっと並べて、まだこんなに読むものがあるぞ、とホクホクするのも好きだったりして、(ものが増えるのはこういう趣向の所以なんだろうとは、自覚しております。)ついつい、オフったそばから大人買い(100円文庫中心)してしまうのです。本はたとえ中古で値段が安くても、中身が変わるわけではなく、作家の魂は言葉の中に閉じ込められているので、安物買いの銭失いにならないところが、イイです。好きです。本。

ところで、何故私はこんなにも小説を読みたいのか、ふと立ち止まって考えてみました。活字中毒というわけでもなく、読まないといられないほどではないのですが、ちょっと時間があると本の世界に入りたくなります。物語を読む事で現実をひと時忘れて没入、つまり現実逃避したいのか、他人の人生の一コマに自分を重ねたいのか、未体験の感情を仮初に味わってみたいのか。

前回のnote『やり場のない思い』でも書きましたが、言葉にならない微妙な感情を持つ瞬間があって、その感情に名前をつけたくなったり、収まりどころがなくて妙にソワソワした気持ちについて着地点を見つけたい時、人は同じ気持ちを抱えている人との共感に救われたりします。

私が小説を読む時、タイトルやイメージで何となく作品を選んでいるのですが、時々自分でも自覚していなかったやり場のない思いを、作品の中のひとこと、シチュエーションの中に発見する事があります。あの時欲しかった言葉はコレに近かったんだなぁ、とか、まさに今コレ体験してる感情だけど、こんな言い回しをすればナルホド上手く着地するなぁとか、自分の頭の中に無かった語彙で、作家の感性を借りて、その感覚感情に名前をつけて、ひとり反省会だったり、自浄作用の場だったり、本の世界で自己分析と再構築をしているのだ、と改めて考えてみて思いました。

つまり部屋の整理整頓と同じです。

自己分析、客観視、自覚、現状把握、反省と再構築、そしてこれから先について考え続けるために、足元を振り返る作業。単独で、完全オリジナルな言葉で、全てを表現し得る事は難しく、どこかの誰かの行動や、ひとことに直接の助けを得たり、影響を受けたり、その人の鏡に照らして見える世界から自分を見つけたり、そんな自分に抗ったり受け入れたり対話しながら、ソクラテスの産婆法よろしく、己れ自身を知ってゆく事で、バラバラだった意識が整理整頓され、スッキリ片付く心の中。

時間がある今だからこその贅沢なひととき。

小学生の時、読書感想文、感想画などを何故書かなくてはいけないのか、その意義を理解していませんでしたが、その言葉や物語に触れて感情移入した結果、自分の心で感じた事を、自分フィルターを一旦通してから綴る、つまりは感情に名前をつける作業を繰り返す事で、自覚していない自分、不安や怒り恐れ憤り妬み悲しみなどを掘り下げて発見したり、客観視して反省したり、これから先の自分を見つめる為の足場を作る練習のために、それはあったのではないか、と思いました。

小、中、高、色々なカリキュラムの教育を深く考えず受けて、よく理解しないまま通り過ぎて、改めて振り返ってみると、よくよく考えられて練られた結晶を頭から振りかけてもらっていたのだなぁと、思います。叶うなら、もう一度小学生からやり直したいです。

勉強がしたい。知らない事を知りたい。新しい言葉、新しい世界に触れて、新大陸で名前のない感情を発見して、名前を探し、自分の世界を広げて行きたい、切にそう思いました。

部屋の整理整頓と掃除の途中で、文庫本を手に取って、一瞬考え事をして、はたと気づいたことを、noteに綴っていたら、掃除どころではなくなった、今まさに思う事でした。

とりあえず、近所の図書館を探して、利用してみようと思いました。

絶版とか希少本とか、コレクションの類い以外は、家に本を溜めないで、クラウドに保存してあるものを共有。図書館て、本来そんな場所だと、今更気づきました。

部屋も心象風景も、引き続き整理整頓、再構築。このご褒美のような長い休暇を有効活用したいと思います。

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